執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
欧米ではファッションの一部として定着しているイメージがあるタトゥー。
日本でも、ファッション感覚で取り入れられることが増えてきました。

しかしながらこのタトゥー、健康への影響を考えないで気軽に行えるものではありません。
そこで今回は、タトゥーの健康への影響についてご説明したいと思います。
タトゥーは医療行為!?
現在、医師免許のない人のタトゥー施術は医師法違反にあたるのではないか、という議論がなされています。
実際に、タトゥーの彫師が逮捕され話題にもなりました。
厚生労働省は、「針を使ってインクや墨などの色素を皮膚に入れるタトゥーの施術は、医師だけが行える業である」との見解を示しています。
この背景には、タトゥー施術により、偶然の事故として見過ごせない数々の健康被害が起きている、という現状があります。

それでは、具体的にはどのような健康への影響があるでしょうか。
おしゃれの代償:タトゥーによる悪影響
若気の至りやかっこよさを追求した結果のファッションタトゥーとはいえ、身体のことを思うと酷な行為です。
タトゥーの影響については、次のようなことが指摘されています。
傷から感染がおこる
タトゥーは、針を使用して皮膚に傷をつけるという過程を経なければなりません。
施術の環境、手技、道具などが不衛生な場合、傷口からの感染が懸念されます。
アレルギー症状が出る
皮膚に入れられるインクや墨などの色素は、身体にとって異物とみなされます。

そのため、インクに対するアレルギー反応を起こす可能性があります。
アレルギー反応が起こると、身体にとって異物とみなされたアレルゲンを取り除かない限り、症状が出続けたり、悪化したりすることも考えられます。
たとえ、施術直後にアレルギー症状が起こらなかったとしても安心はできません。
遅れて症状が出てくるケースもありますから、注意が必要です。
安全に医療行為を受けられなくなる
タトゥーを入れた後、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)などの検査を受けた人が、インクを入れた部分に沿ってやけどをしてしまった、という事例があります。
この事例から、施術の影響で安全に医療を受けられなくなる可能性がある、ということがわかります。

さらに、インクに使われている化学成分にさらされ続ける影響については、現時点において「絶対に安全」といえる医学的な根拠はありません。
タトゥー施術が子どもにおよぼす影響:C型肝炎ウィルス
タトゥーは、自分の身体だけでなく、将来、自分の子どもにまで影響を及ぼすリスクも含んでいます。
それは、不潔な針を使用したことによる、C型肝炎ウィルスへの感染問題です。
C型肝炎ウィルスは、感染後、無症状で経過することが多く、しばらくしてから肝硬変や肝臓がんになる可能性がとても高い病気です。
肝臓がんの原因の80%は、C型肝炎ウィルスです(※)。
C型肝炎は、C型肝炎ウィルスに感染した人の血液が体内に入ることで感染します。

ですから、C型肝炎ウィルスの付着した針でタトゥーの施術を受けると、感染する可能性があります。
そして、感染していることに気づかずに妊娠した場合、お母さんの血液をもらって成長するお腹の赤ちゃんまで、C型肝炎ウィルスに感染することになるのです。
(※出典:日本成人病予防協会『がん(悪性新生物)とは?』(http://www.japa.org/seikatsusyuukannbyou/gan/gan_kan.html)
安全なタトゥーとは?
「あの頃軽はずみにしたことで、自分の健康や赤ちゃんにまで影響があるなんて」と思っても、あとの祭り。
海外では、タトゥー施術の安全性を確保するために規制を設けている国もあります。
たとえば、衛生面や技術面についてきちんと訓練を行う、タトゥー施術についてガイドラインを作成する、などの対策を講じているようです。
残念ながら、日本では流行や需要に安全面の対策が追いついていない、というのが現状でしょう。

「タトゥーをいれたい」と思ったとき、「自分の身体は大丈夫だから」と過信せず、健康への影響について今一度考えてみましょう。
<執筆者プロフィール>
座波 朝香(ざは・あさか)
助産師・保健師・看護師。大手病院産婦人科勤務を経て、株式会社とらうべ社員。育児相談や妊婦・産婦指導に精通
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供