1991年に名鉄で特急「北アルプス」用に導入され、のち、会津鉄道に譲渡されたキハ8500系ディーゼルカーが現在、マレーシアに渡り「第3の人生」の支度をしていることがわかりました。

特急「北アルプス」用に造られた名鉄キハ8500系

 1991(平成3)年に導入された名鉄のキハ8500系ディーゼルカーが、現在、マレーシアのボルネオ島(カリマンタン島)に渡り、新車同様の塗装をされ「第3の人生」を歩み出そうとしています。


マレーシアに渡った元名鉄、元会津鉄道のキハ8500系ディーゼルカー(写真出典:杉林佳介)。

 キハ8500系は、もともとはJR高山本線直通の特急「北アルプス」用に導入された車両です。JR線内では特急「ひだ」に併結するため、車両の性能や仕様はJRのキハ85系ディーゼルカーにそろえられ、また、名鉄犬山線内でのダイヤにも対応できるよう最高速度120km/hなど電車並みの性能が確保されました。

 しかし特急「北アルプス」は、利用者の減少などから2001(平成13)年に廃止されてしまいます。廃止に伴い、キハ8500系は会津鉄道に譲渡。福島県で「第2の人生」をスタートさせました。


会津鉄道時代のキハ8500系ディーゼルカー(2008年1月、恵 知仁撮影)。

 ところが、もともと高速運転用に造られた車両を低速かつ停車駅の多い列車として使用したことが走行機器の寿命を縮めることにつながり、車両は2010(平成22)年5月をもって引退。オークションにより、最後まで残った4両のうち「キハ8501」「キハ8504」は那珂川清流鉄道保存会が、「キハ8502」と「キハ8503」は個人が落札し、後者2両は福島県会津若松市内の観光施設に静態保存されていました。


マレーシアのサバ州は、ボルネオ島(カリマンタン島)の北部に位置する(画像出典:CraftMAP/編集部で一部加工)。

 その静態保存されていた「キハ8502」と「キハ8503」が現在、マレーシアに渡っているといいます。アジアの鉄道事情に詳しい杉林佳介さんによると、譲渡先はマレーシアのボルネオ島を走るサバ州立鉄道といいます。

メーターが10個増えた運転台

 キハ8500系は、現地では再塗装され新車同様の姿に。杉林さんによると、軌間(線路の幅)は名鉄や会津鉄道が1067mmだったのに対し、サバ州立鉄道は1000mmであるため、それにあわせて車軸が改造されたほか、数か月かけてエンジンをはじめとする走行機器のオーバーホールも行われました。しかし現地を見学した今年7月下旬の時点では、車両の整備は完了しているものの、州知事から営業許可が下りていなかったため、運行開始日は未定だったといいます。


シート以外は会津鉄道時代と大きく変わらない車内(写真出典:杉林佳介)。

 車内は、座席が汚損と劣化防止のため黒色のレザー張りとされましたが、そのほかは基本的に会津鉄道時代のまま。日本語表記もところどころに残っているそうです。

ただし運転台には、10個のメーターが追加されていました。


メーターが10個追加された運転台(写真出典:杉林佳介)。

 見学の時点で整備が終わっていたのはこの「キハ8502」のみで、「キハ8503」は整備の真っ只中。そのときはちょうど再塗装が行われており、竣工は2017年の予定といいます。


再塗装中の「キハ8503」。走行機器のオーバーホールはこれからだという(写真出典:杉林佳介)。

 杉林さんは「ボルネオ島の方々は皆親切で、初めての方でも安心して旅行できるすばらしいところだと思います。ぜひキハ8500系に乗って、ボルネオ島を旅してみてはいかがでしょうか」としています。