2018年春、京王相模原線と埼玉高速鉄道で値下げが実施されます。京王は今後、より値下げされる見込みも。

一方の埼玉高速鉄道は事情が異なるようです。

京王は今後もっと値下げ!?

 京王相模原線で運賃の引き下げが実施されます。京王電鉄は2017年10月11日(水)、その日付を2018年3月17日(土)と発表しました。

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京王線の車内で見られる、相模原線の加算運賃引き下げを伝える中吊り広告(2017年10月、中島洋平撮影)。

 相模原線の京王多摩川~橋本間には、基本運賃に加え、乗車キロに応じた加算運賃が設定されています。現在の加算額は、大人普通が10円~80円、通学定期(1か月)が160円~1330円、通勤定期(同)が380円~3020円ですが、これが次のように引き下げられます。

・普通:マイナス20円(現行10円の区間はマイナス10円)
・通学定期:マイナス370円(現行160円の区間はマイナス160円)
・通勤定期:マイナス750円(現行380円の区間はマイナス380円)

 これにより、例えば新宿~京王稲田堤間は250円(ICカード247円)から240円(同237円)に、新宿~橋本間は440円(同440円)から420円(同420円)になります。引き下げの理由について、京王電鉄に聞きました。

――加算運賃はいつから設定されていて、引き下げにはどのような理由があるのでしょうか?

 1970年代の相模原線延伸時から順次設定し、1990(平成2)年3月の全通とともに、現行の加算運賃となっています。加算運賃は建設費の回収を目的に設定したものですが、全額回収のめどが立ったために引き下げを行います。

――建設費が全額回収され、今回で加算運賃ぶんを全額引き下げるのでしょうか?

 いえ、回収率は90.6%です。今回は、数年以内に100%回収するめどが立ったので、早い段階で部分的に引き下げを行い、お客様の利便性を高める狙いがあります。

――ということは今後、さらに引き下げられることもあるのでしょうか?

 はい。残っている加算運賃ぶんを一括して引き下げるか、段階的に行うかも含め、今後検討していきます。

※ ※ ※

 京王相模原線は、京王多摩センター駅(東京都多摩市)で接続する小田急多摩線と、多摩ニュータウン周辺の通勤輸送などで競合関係にあります。京王電鉄によると、今回の相模原線の値下げは「国土交通省の通達に基づいて実施するものですが、結果的に競争に対してプラスになるでしょう」と話します。

埼玉高速鉄道は通学定期運賃を大幅値下げ

 2018年春、京王相模原線と同様に一部運賃の引き下げが実施される路線があります。赤羽岩淵駅(東京都北区)と浦和美園駅(さいたま市緑区)のあいだ14.6kmを結ぶ埼玉高速鉄道です。

京王相模原線と埼玉高速鉄道、値下げのワケは? 2018年春実施の2社、それぞれの事情

直通運転先である東急線内を走る埼玉高速鉄道の2000系電車(2009年10月、恵 知仁撮影)。

 同線では通学定期運賃の引き下げが実施されます。大人の1か月あたり通学定期運賃は現行で普通運賃から48.6~50.5%割引されていますが、この割引率を一律60%にするとのこと。たとえば1~3km区間の大人1か月あたり通学定期運賃は、現行6480円から5040円(引き下げ率22.2%)、14~15km区間では現行1万4190円から1万1280円(引き下げ率20.5%)になります。

 決して小さくない額の引き下げを行う背景を、埼玉高速鉄道に聞きました。

――通学定期運賃をなぜ引き下げるのでしょうか?

 沿線の子育て世代を応援するためです。

ほぼ全線が地下区間の当社線は、昔からあるような鉄道と比べると建設費が非常に高く、加えて2001(平成13)年の開業当初から全駅にホームドアを設置しているなど安全性も高められており、それらコストを運賃に反映せざるを得ません。そのなかで通学定期運賃を引き下げることで、子育て世代を沿線に呼び込み、地域の開発を促進する狙いがあります。

――建設費の償還にある程度のめどがついたのでしょうか?

 いえ、そういうわけではありません。今回の取り組みは、わたしたちだけでできるところから進めていくものです。

※ ※ ※

 埼玉高速鉄道線は、都心部へつながる東京メトロ南北線、また東急目黒線と直通運転を実施。開業は2001(平成13)年3月で、大人普通運賃は初乗り(3kmまで)で210円、15kmまで470円です。

ちなみにJRの場合、初乗り(3kmまで)140円、15kmまで240円です(本州3社内の幹線における大人普通運賃)。