前出の幹部によると、投資額は堺工場と同規模の約4500億円、月産能力はマザーガラス8万枚(40型換算で年間1700万台以上)と見込まれる。まさに一大プロジェクトだ。
そこには「中国では絶対に負けられない」というシャープの事情がある。国内薄型テレビのシェアは業界トップの40%超を誇るが、世界に目を転じればシャープのシェアは6.4%しかなく、ライバルの韓国勢はおろか、ソニー(12.8%)やパナソニック(9.0%)にすら大きく水をあけられている(2010年第2四半期時点、売り上げベース。米ディスプレイサーチ調べ)。
シャープのブランド力が通用し、海外売上高の約3分の1を占める中国市場は、内に強く外に弱い「内弁慶のシャープ」というレッテル返上のため、譲れないマーケットなのだ。
しかも中国は、今年には北米を抜いて世界最大のテレビ市場になる見込みだ(上の図参照)。この成長のタイミングに合わせ、今年から13年にかけて南京で一気にG6、G10の製造ラインを稼働。コスト競争力の高い「アクオス」を売り、他のメーカーにも良質な液晶パネルを供給することで、テレビメーカーとしても液晶パネルの供給メーカーとしても、高い地位を確立するシナリオを描く。
加えて、いわゆる「中国2012年問題」もある。これは、2ページ目の図のように、G8を中心とした計画が多いため、メインで生産される32型の液晶パネルが「ジャブジャブのモノ余り状態」になる危険性を指す。「これらの計画がすべて稼働すれば、8000万~1億台の32型液晶テレビができる」(関係者)とされ、実際の需要に対してオーバーキャパシティとなることは明らかなのだ。
かたやG10は、32型に次いで売れ筋の40型や60型の生産に向く。つまり、ライバルメーカーとの泥沼の価格競争に陥らず、高い競争力を維持できる可能性を秘めている。「結果的に(早い段階で)中国政府の認可が下りなくて幸運だった」(シャープ幹部)というのは、こういう理由からだ。
一方、業界関係者からは先端技術を高める「マザー工場」として、09年10月に稼働した堺工場の行く末を案じる声も上がっている。
「堺工場の稼働率を上げるのに四苦八苦しているのに、中国に最新鋭の工場をもう1ヵ所造って、本当にうまく運営できるのか」と危惧するのは、液晶パネルに詳しいテクノ・システム・リサーチの林秀介マーケティングディレクター。…



