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年金って払う意味があるの? 「年金制度改革法」成立、この機会にあらためて考えてみよう

2016年12月26日 17時13分 (2016年12月27日 17時02分 更新)

年金って払う意味があるの? 「年金制度改革法」成立、この機会にあらためて考えてみよう(写真=Thinkstock/GettyImages) (ZUU online)

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12月14日、「年金制度改革法」が成立しました。現在、私たちの年金の受取額は「マクロ経済スライド」が適用されていますが、今回成立した年金制度改革法ではさらに「賃金・物価マクロスライド」が適用されることとなります。

え? 賃金・物価マクロスライド? そう言われても分かりにくいですよね。

難しい話はさておき、誤解を恐れずざっくり言うと、新制度は「現役世代の賃金が下がった場合は、年金の受取額も下がる」というものです。この新制度については賛否両論があると思いますが、公的年金制度を維持するために必要である……と私は考えます。

この機会にあらためて、公的年金制度の意義を考えてみましょう。

■年金の未納者が「約60%」もいる?

新制度は、私たちの老後生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

まず、現在年金を受け取っている世代は、受取額が減る恐れがあります。若者を中心とした現役世代も、たとえ年金を払い続けていたとしても、受取額が減る可能性があります。そう考えると、公的年金制度を維持するためとはいえ、少なからず不安な気持ちになります。

これでは、年金の未納者がますます増える可能性も否定できません。

一時期、私たちFP仲間で自民党の河野太郎議員のブログが話題になったことがあります。河野議員の見立てによると、平成25年度の被保険者全体の割合を加味した「実質的な年金の納付率」は約40%、つまり未納が「約60%」というものでした。同じく、20歳から24歳の納付率は21.4%、25歳から29歳は32.1%です。この数字を知ったときの驚きは、いまでも忘れられません。

ちなみに、厚生労働省によると平成26年度の年金の納付率は「68.9%」です。納付率は、未納者への取り立てによって改善傾向にあるとされていますが、この数字は低所得者など保険料を免除・猶予されている人が分母に含まれていません。先の河野議員の見立てにある、被保険者全体の割合を加味した「実質的な納付率」とは前提が異なる点に注意が必要です。

■若い人でも年金は払ったほうが良いのでしょうか?

年金の「世代間格差」も無視できない問題です。

2015年、厚生労働省は公的年金の世代間格差に関する試算を公表しました。それによると、1945年に生まれた70歳夫婦の年金の支払額に対する受取額は「5.2倍」、同じく1985年以降に生まれた世代は「2.3倍」としています。

ところが、この数字も有識者やマスコミから「まやかし」だと指摘されることとなりました。

「まやかし」とされる理由は大きく分けて2つあります。

一つは前提となる数字を「経済成長率プラス0.4%」としていることです。もしマイナス成長だと格差はもっと広がります。もう一つは、試算ベースの保険料を「本人負担分」だけで算出していること。つまり、労使折半を前提に保険料を倍にして計算すると、支払った保険料と受け取る額は「ほぼ同じ」になってしまうのです。

確かに、現在年金を受け取っている人は、支払った年金額よりも「受け取れる年金額のほうが多い」世代です。一方、いまの若者の将来受け取る年金額が、支払った年金額と「ほぼ同じ」になるとすれば、果たして「年金を払う意味があるのだろうか?」との疑問を抱いたとしても不思議ではありません。

こうした年金の「世代間格差」も、若者の未納を助長している側面があるのではないでしょうか。

■「年金を払う意味」で見落としがちなこと

では、若者にとって「年金を払う意味」は本当にあるのでしょうか? 注意しなければならないのは、「年金を払う意味」について考えるとき「将来受け取る年金額」ばかりを重視しがちなことです。

もちろん、「将来受け取る年金額」は重要です。しかし、年金の機能はそれだけではありません。年金には「優れた保険の機能」があります。

具体的には、障害者年金や遺族年金です。もし、鬱状態になって働けなくなったとき、ガンにかかって治療で障害が残った場合……生活に困ってしまいますね。そのような不測の事態に、障害者年金が役に立ちます。

また、子どもがまだ小さくてこれから教育費、生活費がかかるときなどに、突然死亡した場合……家族は生活にも困りますね。年金制度には、そんな「もしものとき」のための遺族年金があります。厚生年金では一生涯、基礎年金でも子どもが18歳に達するまで支給されます。

私は、障害者年金や遺族年金のような「手厚い保障」があるだけでも、年金を払う意味がある、と考えます。ただし、これらの保障を受けるには「年金が未納になっていない」ことが条件となります。

■公的年金を支払ったうえでの「自助努力」を

ところで、巷では「公的年金制度の崩壊」を懸念する声を耳にすることもあります。読者の中にもそう考えている人がいるかも知れません。

あくまで個人的な意見ですが、私は公的年金制度自体は崩壊しないと考えます。それより懸念されるのは「公的年金だけで暮らしている人の生活が『崩壊』する」ことです。

これからの時代、公的年金だけで老後の生活を維持するのは難しいと言わざるを得ません。つまり、「自助努力」が求められます。「個人型確定拠出年金」が注目を集めているのは、そうした時代の変化を象徴しているのではないでしょうか。掛金の全額が控除となる「個人型確定拠出年金」は老後資金の備えに最適といえるでしょう。

ただ、公的年金を未納している人は「個人型確定拠出年金」にも入ることができません。まずは、公的年金をきちん支払ったうえでの「自助努力」が大切なのです。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

コメント 6

  • ゆうか 通報

    ここでの未納率は、1号被保険者のみの話ですよね。2号、3号合わせた年金制度全体では未納率5%くらいになるはずです。あと、年金用語、障害者年金ではなく、障害年金です。

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  • 匿名さん 通報

    公的年金だけで生活できない……これ、目的達成できないんだから崩壊って言うんじゃ?

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  • 匿名さん 通報

    年金+自助努力で生活できない者は、離島に隔離して酒もタバコもギャンブルもない生活させればいいのでは?

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  • qq 通報

    世代間格差無くさない限り無理。

    1
  • 雑種犬 通報

    政府が国民の年金使って株価釣り上げるようなバクチして損失出しているんだから、国民は払う気が失せますよね。

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