テレビ界が悲しみに包まれた。長く行方不明だった事件リポーターの奥山英志さんの遺体が発見された。

 3月の東日本大震災直後、所属事務所が電話で無事を確認したのを最後に連絡が取れなくなり、行方が分からなくなっていたが、4月に東京・調布市の公衆トイレ内で発見された首吊り自殺とみられる遺体と指紋などが一致。今月12日になって奥山さんだと確認された。

 歩きながら事件現場をリポートする奥山さんの姿を思い浮かべた人も多いだろう。現場取材者であっただけに、顔見知りのマスコミ関係者は数知れず。特に同じテレビ界では親交も多く、番組製作スタッフや同業のリポーター、アナウンサーたちから一様に「信じられない」「まさか......」という声が聞かれた。

 警察の調べによると、発見場所は都立神代植物公園の障害者用トイレ、天井の荷物置き場にヒモをかけて首を吊った状態だったという。

同所は独り暮らしをしていた川崎市の奥山さん宅から5kmほどの距離にあった。

 「顔をよく知られた奥山さんと一致しなかったのは、いろいろ悩みを抱えていた晩年の姿が、テレビでのものと似ていなかったからでは」と捜査関係者。

 悩みを抱えていたという話は、奥山さんと親しかったテレビ関係者も証言している。

「リポーター業は10年ぐらい前になくなっていたと思いますが、昨年から所属事務所の吉本興業を通じた他の仕事もまったく来なくなったと嘆いていましたし、家族の介護もあって、去年の暮れに電話したときも"いろいろしんどい"と漏らしてはいました。もうひとつ、実は奥山さんは古い付き合いの40代の女性リポーターと交際していたんですが、2年前くらいに破局したんです。良き相談相手を失って、かなり精神的にも追い詰められたのかもしれません」(情報番組プロデューサー)

 その女性リポーターとは現場取材で顔を合わせ親しくなり、食事や舞台観劇などプライベートでの交際があったというが、互いにライバル局で仕事をすることもある職業柄か、2人の関係を知るのはごく一部だけの極秘交際だったようだ。

「とても気前の良い人だったから、他局の人でも酒をおごったりしていました。飲めば競馬とかゴルフとか趣味の話も楽しくて、独身だったことが不思議だったぐらい」(同)

 一方、奥山さんの自殺を疑う声も少なくない。自宅からは財布や預金通帳、携帯電話がなくなっていたが、本人の遺体からは見つかっておらず、カギのかかった発見現場から盗まれたという可能性も低いからだ。自宅には洗濯物も干したままで、長い不在をにおわせるものもなかった。

 死の経緯も動機もはっきり分からない。ただ、もう奥山さんの"元祖・歩きながらリポート"が二度と見られないということだけは確かだ。

テレビ界の功労者としては、あまりに悲しい終幕だ。
(文=鈴木雅久)


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