今年の大みそかに放送される『第65回NHK白歌合戦』の出演者が、11月26日に発表された。今年は浜崎あゆみやゆず、乃木坂46ら落選者にばかり話題が集まったが、デビュー20周年目のV6が初出場となったことが唯一の明るいニュースではないだろうか。



 紅白の総合司会を務めるNHKの有働由美子アナウンサーが発表会見でも場を仕切ったが、『あさイチ』で共演中の井ノ原快彦を意識したようで、「やりにくいというか、パンスト履かないで出てきたみたい」と独特の表現でV6の紅白出演を祝った。

『あさイチ』では抜群のコンビネーションを見せる2人。しかし、有働アナは自著『ウドウロク』(新潮社)で、番組スタート前の意外な思いを抱えていたことを告白している。

「アイドルと一緒に司会と聞いて、こりゃえらいことになったわと思った」

 司会といってもあくまで"お飾り"と思っていたようで、コメントを用意したり、失言をフォローしたり、機嫌をとったりしなくてはならないだろうと頭を抱えていたというのだ。しかし、それは杞憂に終わる。

「今や、私の方が失言する。
私の方が機嫌を取ってもらっている。私の言葉足らずを、いのっちがフォローしてくれる」

 "セクハラ"をテーマにした放送回では、妙齢独身の有働アナへの『あさイチ』出演者・スタッフの言動に、井ノ原が苦言を呈したことも記憶に新しい。有働アナが井ノ原に全幅の信頼を寄せるのは、セクハラ苦言でも見てとれるように、誠実で他人への思いやりにあふれた井ノ原の人柄ゆえだという。

 それを表すエピソードとして本書に記されているのが、東日本大震災で全村避難となった福島県飯舘村のレポートを放送した日のこと。放送直前に担当ディレクターからVTRの説明を受け、コメントを打診された井ノ原は、珍しく声を荒げて「どうして、こんな大事なことをもっと早く打ち合わせに来ないのか」と咎めたという。それは単にコメントに困るという話ではなく、震災のニュースは出演者にとっても大事なテーマであり、担当したディレクターにとっても大切な取材相手だとわかっていたからこそ出た厳しさ。


 本番の生放送では、きちんと自分の言葉でVTRにコメントした井ノ原。そして、他の仕事のために放送終了後には早々にスタジオをあとにしたが、件のディレクターに1枚のメモを残していった。そこに描かれていたのは、ディレクターの似顔絵。それを有働アナは、「気にするなと、気にしてないよ、などという微妙なフォローの言葉で返って相手に気を遣わせるのではなく、ただただ愛情だけを伝えてたのだ」と分析している。

 出演者発表記者会見では、舞台の下にいた有働アナが「いつもの定位置に来ていただいていいでしょうか」と異例のお願いを井ノ原に呼びかけ、2人が並んで話すという場面があった。かと思えば、昨年も総合司会として紅白に出演し、セクシーなドレスで物議を醸した有働アナに対して、井ノ原が「今年もどんなドレスか楽しみ」とイジる一幕も。
「優等生的な発言しかしないかというと、私の腹黒い発言にもつきあってくれる」という有働アナの井ノ原評を実感した場面だった。年末の国民行事ともいえる紅白で、"腹黒"な2人がどんなやりとりをみせてくれるのか、期待しながら放送を待ちたい。
(江崎理生)