首相官邸にドローンが墜落したことが、大きな問題になっている。ドローンとは主に空撮用に使われる無人飛行型ロボット。

災害現場や人が立ち入れない場所でも空撮が可能であることから、特にメディアにとって大きな技術革新をもたらした撮影機材である。一方、その高度なテクノロジーゆえ、当初から悪用の危険性は指摘されており、それが現実になってしまった。

 どんなテクノロジーでも、それが優れた技術であればあるほど、悪用する者が出てくるもの。当然、それに対する対策は必要だが、だからといって、ドローン自体を悪者にするのはナンセンスだ。悪用の可能性が高いのと同じように、有用な使い方の可能性も広がっている。そして、そのどちらでもない「遊び道具」としても、無限の可能性を秘めているのではないだろうか。


 いち早くドローンをテレビで「遊び道具」として使ったのが、『あの遊びをバージョンアップ!キスマイGAME』(テレビ朝日系)だ。4月から始まったKis-My-Ft2冠番組で、その名の通り、子どもの頃に遊んだ鬼ごっこ、かくれんぼ、缶蹴りなどを、2015年現在の最新テクノロジーを使って“バージョンアップ”するというものだ。

 初回は「だるまさんがころんだ」を、高性能防犯カメラを使ってバージョンアップ。わずかな動きも検知する防犯カメラを相手に「だるまさんがころんだ」をするという、単純明快なゲームだった。しかし、この「わずかな動き」が現在のテクノロジーでは尋常ではない。膝のちょっとした動きはもちろん、表情の変化、まばたきさえも検知されてしまうのだ。
この攻略のため、ひとりが壁になって協力しながら前に進んだり、ほふく前進で動きを最小限にとどめたりと、キスマイたちが知恵を絞って挑戦していき、成功に少しずつ近づいていく。だから、見ている側も手に汗握り、画面に釘付けになり、失敗すると「あー!」と思わず声に出してしまう。

 そしてドローンを「遊び道具」にしたのは、第3回放送(4月14日深夜)だった。その特性を最大限生かし、ドローンが“鬼”となった「かくれんぼ」が行われたのだ。ルールはとてもシンプル。一定時間内に、ドローンから挑戦者が一人も見つからず逃げ切れれば勝利だ。
「見つかった」という判定は、ドローンのカメラに3秒間継続して映ったらアウトという基準。これがゲームバランスとして絶妙だった。

 キスマイは、「助っ人」であるゲストの前園真聖と共に、この「ドローンかくれんぼ」に挑戦していく。前園は、言わずと知れたサッカー元日本代表のアスリート。だからといって、このゲームに向いているか疑問だったが、彼は想像以上に大活躍を見せた。安定した飛行でブレずに相手を捉えることができ、視野も180度と広いドローンに「体幹がしっかりしている、長友(佑都)みたい」「相当視野が広い。
遠藤(保仁)ぐらい」などと真面目な顔でたとえて笑わせる、バラエティ的活躍だけではない。挑戦のリーダーとして自分も走り回りながら、的確に指示を出し、まさに司令塔の役割を担っていた。

 第1ステージの舞台は「教室」。机など、ドローンの視界を妨げるものはあるが、いわゆる「かくれんぼ」のように、同じ場所に隠れているだけではすぐに見つかってしまう。いかにドローンに対し、的確なポジショニングを取れるかがこのゲームの攻略のポイントだ。サッカーもある意味、ポジショニングのスポーツ。
だから、前園はすぐにこのゲーム攻略のコツをつかんでいき、ドローンの死角となる“ウラを取る”ことに成功するのだ。しかし、その後もドローンが驚異的な性能を発揮し、挑戦者たちを苦しめていく。

 最新テクノロジー vs 人間の知能合戦は、とても見応えのあるものだ。特に、技術の穴を見つけ、そこを突き、絶対に無理だと思われていた攻略の糸口をつかむカタルシスは大きい。しかも、その糸口を導き出したとしても、その戦略を正確に実行する運動能力がなければならないから、ハラハラ・ドキドキ感は倍増する。

 まさに、バカとハサミは使いよう。
『キスマイGAME』は、テレビならではの方法でドローンのような最新テクノロジーを「遊び道具」に仕立て上げた。

 子どもの遊びを大人たちが、お金と技術と知性をかけて真剣にやっている。まったく意味のない、最新テクノロジーのムダ使いである。だが、その意味のなさやムダにこそ、テレビの可能性は広がっている。
(文=てれびのスキマ <<a href="http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/" target="_blank">http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)