2013年度前期の『あまちゃん』(能年玲奈主演)以降、NHK連続テレビ小説(通称、朝ドラ)が元気だ。『あまちゃん』から、14年度後期の『マッサン』(玉山鉄二&シャーロット・ケイト・フォックス主演)まで、平均視聴率は4作連続で20%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)の大台を超えた。
そんな中、ヒロインたちは朝ドラをきっかけに大ブレークした女優もいれば、下降線をたどった女優もおり、まさに悲喜こもごも。そこで、今回は、「ほとんど消えた」といってもいい朝ドラヒロインたちをピックアップしてみた。
つい最近、ある元朝ドラヒロインがBS放送WOWOWの連続ドラマ『きんぴか』(中井貴一主演)に、金髪&露出度の高いドレス姿でキャバクラ嬢役を演じていた。
藤澤は01年、ファッション雑誌「non‐no」(集英社)の「第32回モデルオーディション」でグランプリに輝き、同誌の専属モデルとしてデビュー。03年にセブンス・アヴェニューに移籍し、『天花』のオーディションを受けたところ、応募総数2,367人の中から選ばれた。演技経験ゼロの受験者が朝ドラのオーディションに受かることは異例。セブンス・アヴェニューは、所帯は小さいながらも、“大御所”白川由美、松嶋菜々子、井上真央らを擁する有力事務所で、「事務所の力で勝ち取ったヒロイン」との疑念も。
朝ドラ後、藤澤は05年公開の『奇談』に、阿部寛とのW主演で、映画初出演にして初主演の抜擢を受けた。しかし、その後はこれといった活躍は見られず、二度の米国留学もあって、徐々に忘れ去られた存在に。昨年は7月期の連ドラ『ホテルコンシェルジュ』(TBS系)第7話、同8月に土曜ワイド劇場『私は代行屋!4・事件推理請負人』(テレビ朝日系)、また5月に舞台『朗読劇 私の頭の中の消しゴム 7th letter』に出演した程度で、ほとんど“開店休業”状態。元朝ドラヒロインの行く末としては、残念な結果に終わっている。
同様の元・朝ドラヒロインはほかにも多々いる。
仁科亜季子似の美人女優・原田夏希(31)もまた、ほとんど演技経験がなかったが、04年度後期の『わかば』のオーディションに合格。
アイドル出身の村川絵梨(28)は、上原香代子、田野アサミ、川田由起奈との4人組ユニット「ai☆ai」「なにわキッド」「BOYSTYLE」名義で活動し、歌手デビューも果たしている。04年に女優業に進出し、同年公開の『ロード88 出会い路、四国へ』で、映画初出演で主演。
村川の場合は、アミューズという大手事務所所属とあって、朝ドラ後も、しばらくは連ドラレギュラーなどのオファーが入っていたが、09年あたりから、端役での出演が多くなり、連ドラも単発ばかりと下降線をたどることに。昨年は年間を通じ、映画は1本、ドラマは単発で3本、舞台は1本。仕事はなくはないが、存在感を示すような作品にはめぐり合えなかったようだ。
この4人に共通するのは、演技経験なし、またはほとんどゼロで、オーディションに合格した点だ。
近年のヒロインを見ると、12年度後期『純と愛』の夏菜、『あまちゃん』の能年のように、無名であっても、相応の下積みがあった。『マッサン』のシャーロットも米国では演技経験があり、『まれ』の土屋は『おひさま』(11年度前期)『花子とアン』(14年度前期)と2本の朝ドラに出ている。『あさが来た』の波瑠は売れていたとはいいがたいが、下積み生活が長かった苦労人である。13年度後期『ごちそうさん』の杏や、『花子とアン』の吉高由里子は、すでに実績十分だったし、次期朝ドラ『とと姉ちゃん』の高畑充希も同様だ。
かつては、素人同然の子をオーディションでヒロインに抜擢することも多かったが、結局、後に鳴かず飛ばずになってしまうのは目に見えている。ここ数年、ヒロインの選考基準が変わり、それなりの実績がある女優を選ぶようになったのは必然と言えそうだ。
(森田英雄)
※画像は『NHK連続テレビ小説 天花 完全版 DVD‐BOX 第3集』/NHKエンタープライズより