今日、「あらびき団2017夏祭り」の収録してきました!前回の年末スペシャルは3時間、今回は1時間。好評と不評の間で揺れ動いております!そのもがき苦しんでる姿を御覧あれ!

東野幸治さん(@higashinodesu)がシェアした投稿 – 2017 7月 3 4:59午前 PDT

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「(疲れていても料理を手作りしてくれるのは)優しい」東野幸治
ワイドナショー』(フジテレビ系、7月2日)

 料理の腕と“人格”は絡められて語られがちである。

 例えば、「歌舞伎が好き」という人がいたとする。話の聞き手が、同じく歌舞伎が好きであれば、好きな役者のことで盛り上がるだろうし、興味がない人であれば、歌舞伎の魅力を聞いたり、もしくは「そうなんだ」で話は終わる。しかし、そうはいかないのが、料理である。

 「料理が好き」というと、どんな料理が得意なのかを聞かれることもあるが、い女性であれば、「女子力が高い」とか「婚活対策」というふうに、変な方向に話がズレていくことは多々ある。また、褒め言葉を相手から引き出そうとするために「料理が好き」と言う人もいるだろう。

 考えてみると、料理と“人格”を絡めるのは、ある意味、“日本の風土”なのかもしれない。1976年に大ベストセラーを記録した、桐島洋子の『聡明な女は料理がうまい』(主婦と生活社)や、2000年に発売された名横綱・貴乃花光司の妻、花田景子の『ピンチも料理で救われます』(世界文化社)といったふうに、料理下手は“暗愚である”“人生が開けない”というような“ダメ女”のレッテルを張る空気が日本にはある。夫である木村拓哉が芸能人として最大のピンチを迎えているのに、工藤静香がインスタグラムに手料理をアップし続けるのも、日常のひとコマを披露するというより、「自分は女性として格が高い」ことのアピールなのかもしれない。

 料理の話は、どうも論点がずれる。そう思わされたのは、7月2日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)。女性向け掲示板「発言小町」に投稿されたトピックについて取り上げていた。結婚6年目の妻が残業帰り、夫に「今日何食べたい?」と聞いたところ、「もう遅いから簡単なものでいいよ、食べて帰ってもいいし」という返事が来る。「簡単なもの、何がいいかなぁ」と妻が再び質問すると、「とんかつがいい」と夫が言う。油の処理や掃除を考えると、揚げ物は簡単な料理ではない。妻は「簡単ちゃうわ」とツッコみ、「揚げ物が簡単なものだと思われていたことがショックな夜でした」と結んでいる。

 佐々木恭子アナは「ふざけるなですよね」と発言し、国際政治学者・三浦瑠璃は「日本の食事は基準が高い。アメリカではパンとハムだけということがある」と日本の食事に手がかかりすぎなことを示唆しつつ、「(私なら疲れていても)作ってあげるけど」と結んでいた。MCの東野幸治は、そんな三浦を「優しい」と言い、一方の佐々木アナは「『ふざけるな』と言った私が、本当に格好悪いですよね」と笑いに落とした。「とんかつが簡単なものと思われていたことがショック」という話題なのに、「夜遅くにとんかつを揚げてくれる人は、優しい」に話がすり替わっていたのである。



 料理の話が女性の人格にすり替えられることに加え、こういうトピックを見ると、女性側の料理に対する思い込みにも気づく。このトピックの場合、夫が外食を提案しているのに、妻はそれを無視している。また「とんかつが食べたい」と夫は言っているが、デパ地下などで既製品のとんかつを買うという方法もある。何も最初から全部自分で作る必要はないのに、なぜかこのトピ主は、「自分で全部作る」ことにこだわっているのだ。

 それに、なぜ相手にいちいち食べたいものを聞くのかも不思議である。記念日のディナーと違って、この日の夕飯は「早く食べて早く寝る」ためのものだろう。この夫婦の場合、料理は妻が担当しているようだから、冷蔵庫にある食材を把握しているのも妻のはず。夫は簡単なものでいいと言っているわけだから、手作りするにしても、手持ちの食材で簡単なものを作ればいいだけのことではないだろうか。それをしないのは、「既製品を買ったりせず、男性が食べたいものをイチから手作りすれば、喜ぶに違いない」と思い込んでいるからだと思えるのだ。

 この日の『ワイドナショー』に、ヒロミが出演していたが、奇しくも彼は、「手作りを喜ばない人」である。ヒロミが、『笑っていいとも!』(同)に出演していた若手の頃。料理好きで名高いタモリの自宅に招かれたことがあるそうだ。高級食材をふんだんに使った料理がふるまわれたが、好き嫌いの多いヒロミは、ほとんど手をつけない。唯一「これおいしいね」と喜んだのは鯛茶漬けで、タモリに「作り甲斐のない男」と言われていた。ヒロミの妻は料理が苦手として知られる松本伊代だが、そもそも食に興味がなく、おいしいものは外食するかセブンイレブンに行けばいいと思っている男性も存在するのだ。

 男性は料理上手が好き、手作りは手間がかかっていてエラいと、女性は刷り込まれて育つ。「発言小町」には、料理に関する夫婦間の行き違いが定期的にアップされるが、私に言わせれば、これは、「料理の腕イコール人格」と信じ込まされた女性側の「きちんとやらなくちゃ」「きちんとやっているのに」という意気込みが強すぎるからこそ、起きる諍いに思えてならない。

 私の周囲に限っていえば、最初の奥さんがまったく料理をしてくれなかったことがトラウマになり、2度目の結婚では、妻に全部手作りを求める知人がいるが、こういう人はごく少数派で、既製品を食卓に並べても気づかない人もたくさんいる。食は心身に影響を与えるので、粗末にしない方がいいとは思うものの、女性が向き合うべきは、「忙しいのに、髪振り乱して全部手作り」することではなく、「相手は本当に手作りが好きなのか」「相手の“おいしい”の基準とは何か」、つまり、もっと自分のパートナーを知ることではないのだろうか。料理をめぐる男女の溝を『ワイドナショー』は浮かび上がらせたように私には見えた。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
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