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オカンといっしょ #3 Blue(前篇)

2017年8月18日 17時00分 (2017年9月3日 06時41分 更新)

 事件はいつも、ノートの上で起きる。

 嫌いな人間を殺す絵ばかりを描くためのノート。そのノートの表紙は、大量の『卍』で、埋め尽くされている。


 誰かに見られたら、異常者だと思われる。だから、描いた後はいつも、絵の上から大量の『卍』を描いて、黒く塗り潰していく。そんな決まりがあった。


 だから、そのノートはいつも、全てのページが黒く塗りつぶされた状態だった。


 その日もいつものように、母の新作の死体の絵を描いた後、大量の卍で塗り潰していた時に、後ろに気配を感じた。振り返ると、美術の先生が僕の絵を覗き込んでいた。


 僕は、慌ててノートを閉じた。ヤバい! 死体の絵を見られた! 怒られると思って、体を硬くした。


 しかし、先生はこう言って去っていった。「美術部というものがある。一度、見に来たらいい」


 美術の先生の顔は、フランケンシュタインの怪物に似ている。だから、陰で生徒からフランケンと呼ばれていた。


 フランケンは、大人なのによく絵本を読む。楽しそうに絵本を読む大人を、僕はその時、初めて見た。


 校舎の入り口の壁一面には、美術部の奴らの絵が飾られている。どいつもこいつもアニメのキャラクターの絵を、そのまま描いているだけだった。


 美術部は変人の集まりだと聞いた事がある。でも、その絵を見て、どこが変やねん? 何の個性も無い、普通の奴らの集まりやんけと思った。


 オレなら、ここにどんな絵を描く? そう自分に問いかけた。

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