9月14日に、日本語版サービスを開始した中国発のスマホゲーム『アズールレーン』が、急速にユーザーを伸ばしている。

 このゲームは、艦船を擬人化した育成ゲームのひとつである。



 艦船を擬人化したゲームということで、パッと見は『艦これ』という雰囲気があることは、否めない。ただ、ゲームの方向性は大きく異なり、シューティングゲームとなっているのが特徴である。そのあたり、これまで幾つか登場した『艦これ』パクリゲーとはまったく異なる。

 また、中国政府が目を光らせていることもあって、スマホゲーながら、ガチャに頼る課金ゲーであることを拒否しているというのも、特徴である。そうしたこともあってか、サービス開始から1週間あまりにして、すでにユーザーは100万人に達しようとしている。

 そんなゲームに登場するキャラクターは、第2次世界大戦当時の艦船を擬人化したものばかり。
当然、すでに『艦これ』で、おなじみの艦船も、姿を変えて、主にケモミミ姿で登場している。そうした、姿は違えどおなじみのキャラクターを敵として打ち破ることに「反日ゲー」という、ぶっ飛んだ罵りをする人もいる。

 もちろん、そんな罵りには加担する気はない。だいたい、限られた政治的なクラスタを除けば、中国本土の人々と「ゼロ戦カッコイイ」に始まり、マニアックな大戦ネタで盛り上がれる時代である。

 ただ、腑に落ちないのは急激な『艦これ』からのシフトである。Twitterに自作の絵をアップしている絵師のアカウントなどでは、一気に『艦これ』から『アズールレーン』へのシフトが起こっている。
とりわけ「愛宕」で検索すると『艦これ』ではなく『アズールレーン』の愛宕のほうが、多くなっているような気がする。

 けっこうな数の人が、ケモミミロングヘアの愛宕と称するキャラクターの絵を見て。「何これ? アズレンって何?」とゲームを知ったのではなかろうか。

 いや、もちろん流行のもの。描きたい衝動に駆られる題材に創作の時間を割きたいのはわかる。でも、そんなに簡単に乗り換えられるものなのか……。


 確かに、オタクの中には定着していた「今期の嫁」という表現自体、疑問視せざるを得ないものだった。愛するキャラクターを1クールごとに変えることができるのか。キャラクターへの愛は、そんなに浮ついたものだったのか……。

『アズールレーン』の場合は、さらにその想いが強くなる。『艦これ』における、艦娘たちは、共に深海棲艦と戦ってきた戦友(と、書いて<とも>と読む)である。『アズールレーン』に登場する同名で姿が違うキャラクターを見て「こっちもこっちでいいね~」と、愛でることができるものなのか。


『アズールレーン』の流行は、個々人の二次元キャラへの愛が、本物かどうかの踏み絵になっているような気がしてならない。
(文=是枝了以)