「市政エンタテイメント!」をうたう篠原涼子主演の月9『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ系)が23日にスタート。初回平均視聴率は、9.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と1ケタ。

前期の月9『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』の初回が16.3%だったことを思うと、注目度はイマイチといえそう。そして、「月9だから見る」という時代は、完全に終わったんだなあ……と。

 なお、脚本は、フジのドラマでは聞かない黒沢久子氏という方。近年は『ウルトラマンオーブ』(テレビ東京系)などの特撮モノや、上野樹里主演映画『お父さんと伊藤さん』(2016)などを手掛けていらっしゃるようです。Twitterを見ると、共産党の志位和夫委員長の討論動画や、ウーマンラッシュアワー村本大輔の政治的なカミツキ発言などをリツイートされていらっしゃるので、今の日本にいろいろと不満が溜まりまくっている女性なのかもしれませんね。

 というわけで、あらすじを振り返ります。


■とにかく仕事が続かない夫婦

 タイトル画面に、「平成29年度文化庁芸術祭参加作品」の文字が。『民衆の敵』は、「文化庁芸術祭」執行委員会が芸術祭にふさわしいものと判断した作品なんだそうです。ほほう、国も認める良作ということですね。ちなみに、放送中の日曜劇場『陸王』(TBS系)もこれに参加していました。

 それはさておき、主人公は夫と息子と3人暮らしの40歳・佐藤智子(篠原)。ギャンブル狂いの父と、男にだらしないホステスの母に育てられたために、高校を中退。
17歳から働き始めるも、正義感が邪魔してすぐに仕事をクビになってしまうそうです。

 しかも、夫の公平(田中圭)も同じようなフリーターなので、生活はカツカツ。保育園に通う息子の駿平は、智子が作った卵焼きを食べながら、「ステーキだと思って食べてるの! おいしいよ、ステーキ!」と言ったりと、なかなか不憫です。

 そんな智子と公平が、同じ日に仕事をクビに。そんな状況にも慣れっこなのか、口では「早く仕事探さないとヤバイよね」と言いながらも、夫婦でテレビゲームをしています。子ども作ったんだから、仕事続くように変わりなさいよ……と言いたくなるようなダメ夫婦です。


 そんなとき、政務活動費の約400万円を私的に使い込んだ議員の号泣会見がテレビに映ります。どうやらこのドラマ、ネタの新鮮さはあまり気にしちゃいないようです。

 その晩、パソコンから「市議会議員 就職」で検索する智子。すると、智子が住むあおば市は、8割以上の確率で当選できるという記事を発見。これに、「はい! 私、なる! 市議会議員。950万(報酬)!」「電動自転車、毎晩ビール飲み放題。
ヒューヒュー!」と大はしゃぎです。

 すでに選挙戦は始まっていますが、智子はお構いなし。銀行で全貯金額の50万円を供託金として引き出し、立候補の申し込みを行います。

■安倍普三、もとい、磯部真蔵は病気に

 その帰り道、立候補者である磯部真蔵(笹野高史)の演説に遭遇。しかし、これを見ていた智子のママ友で新聞社に勤める和美(石田ゆり子)は、「嘘ばっかり。磯部はね、待機児童を保留児童って言い換えて、マニフェストを実践したって言ってるだけなのよ」「なんにも解決してないの」と溜め息。
昨今、「そのままでいいんだよ」的なセリフで人々を癒やしまくっている石田が、セリフであれ政治家批判するなんて。なんてハラハラさせるドラマなんだ……。

 早速、小池百合子風の女性政治家の写真を参考に、チークを塗りたくる智子。同じ保育園のママである恭子(MEGUMI)らに、「中卒で政治家ってできるのぉ?」とバカにされながらも、街頭演説をスタート。しかし、政治家一家の息子で、立候補者の藤堂誠(高橋一生)に場所を横取りされてしまいます。

 怒った智子は、「私は高校中退です。
父親はギャンブル狂いで、母親は男にだらしないホステス!(略)生まれた時点で、自分の人生決まっちゃうなんておかしくないですか? 自給950円の生活も知らない奴らが、市民の幸せ語るな。自己責任? わけわかんない。卵焼きはどう頑張ったってステーキじゃないんだよ!」と藤堂に宣戦布告。この様子を見ていた和美は、智子に「あなたを応援したくなった」と申し出、戦力になりそうなママ友を集めてきます。

 その後、ママたちの助言により、生鮮卸値市場や幼稚園で演説を行い、支持率を伸ばす智子。これに慌てた磯部が智子のネガキャンを行うなど、すったもんだあった後、いよいよ開票日に。智子は落選してしまいますが、結果が出たものの数分後、磯部が病気でブッ倒れてしまったため、智子の繰上げ当選が決定。公平も「950万!」と大喜びです。

■政治的メッセージが見え隠れ?

 結局、智子とデッドヒートを繰り広げた安倍晋三総理に名前がよく似た磯部真蔵は、苦しそうに心臓を押さえながら、担架に乗って運ばれてしまいました。あえて初回にこれを持ってきたあたりに、同作の政治的な方向性を読み取らずにはいられません……。

 ところで、あおば市って、日本のどの辺の設定なのでしょうか? どうやら、千葉市や川崎市でロケの目撃情報が相次いでいるようなので、だいたいその辺なのかもしれませんね。

 で、ドラマとしては、テンポも展開もわかりやすく、想像以上にキレイにまとまっていて、娯楽作品として幅広い層が楽しめる作品になってるなという印象でした。いや、もしかしたらそこまで面白くなかったのかもしれません。そもそも、主人公夫婦がかなりツッコみどころ満載だし……。ただ、正直、もっとヤバいドラマかと思ってたんですよ。見てもないうちから。

 だって、篠原がスーパーの袋から長ネギ出して、頬に初心者マークつけて、拡声器で何かを吠えてるメインビジュアルとか、ベタすぎて「センスない……」って思っちゃってましたし、他局のドラマでブレークした高橋一生と石田ゆり子をメインに据えているあたり、「寄せ集めりゃ、数字取れんだろ」っていうフジの安直な意図も感じちゃいましたし……とにかく、コメディにも社会派にも振り切れない中途半端さが「ヤバいことになりそうだな」って思ってたんです。すいません。

 そんな低すぎるハードルを設定していたので、とってーも、いいドラマに見えました。ただ、智子が当選した後が描かれる第2話以降が勝負かと。女版『GTO』(フジテレビ系)みたいな感じになるんですかね? とりあえず、最終回までレビューしていきたいと思います。
(文=どらまっ子TAMOちゃん)