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プロが育たない理由[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

2017年10月4日 17時00分 (2017年10月6日 12時26分 更新)
そして、我々がプロフェッショナルのテクニックやノウハウを掴めない、もう一つの理由を、やはりプロ野球の世界のエピソードが教えてくれる。

かつて「安打製造機」の異名をとった打撃の名手、張本勲選手のところに、若手選手が相談に来た。
 
張本さん、理想のバッティング・フォームについて、教えて頂きたいのですが。

この質問に対して、張本選手は、こう答えた。

理想のバッティング・フォーム? もし、君がそれを知りたいのならば、一晩中、素振りをしなさい。一晩中、素振りをし続けて、疲れ果てたときに出てくるフォーム、それが、君にとって一番無理のない理想のフォームだよ。

このエピソードも、大切なことを教えてくれる。
 
我々は、いつも、成功するための普遍的な方法があると思い、その理想的な方法を、手軽に身につけたいと考えてしまうのである。いま、書店に溢れる『プロのテクニック』や『成功の法則』などの本。それらは、たしかに、実績も実力もあるプロフェッショナルが書いたものであり、実際に成功を遂げた人物が書いたものであるが、それらを読む前に、自らの心に問うてみるべきであろう。

「自分は、この本を読めば、厳しい修練を積まずに高度なテクニックが掴めるという幻想を、心の深くに抱いているのではないか」

「自分は、この本を読めば、楽をして成功を手に入れられるという安易な考えを、心の奥底に抱いているのではないか」
 
そのことを自らに問うとき、昔から語られる一つの言葉が、胸に迫ってくる。

「敵は、我にあり」

田坂 広志

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