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コンピュータ将棋がプロ棋士の頭脳を越えるとき

2010年8月20日 11時00分 ライター情報:池谷勇人

4月に行われた記者会見では、挑戦者側である情報処理学会の白鳥則郎会長から、日本将棋連盟の米長邦雄会長へ「挑戦状」が手渡されました。

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「最強」の棋士は人間か、それともコンピュータかーー。この秋久々に行われる、プロ棋士とコンピュータ将棋の公開対局に注目が集まっています。

前回対局が行われたのは2007年の3月。このときは東北大学の保木邦仁助教(現電気通信大学特任助教)が作成した将棋ソフト「ボナンザ」と渡辺明竜王が平手で対決し、112手で渡辺竜王が勝利を収めました。今回の対局は、コンピュータ将棋側にとって実に3年半ぶりの雪辱戦というわけです。

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対局の相手は、女流棋界の第一人者として知られる、清水市代女流王将。残念ながら渡辺竜王へのリベンジは先送りとなりましたが、受けて立つ日本将棋連盟側としては「まずは実力を見せてもらおう。話はそれからだ」といったところなのでしょう。いきなり渡辺竜王や羽生名人を出してこないところに、日本将棋連盟側の余裕としたたかさをちょっと感じますよね。

もちろんコンピュータ将棋側にだって策はあります。今回、コンピュータ将棋側が用いるのは、電気通信大学の伊藤毅志助教が中核となって開発した「合議」と呼ばれるシステム。これは「ボナンザ」「激指」「GPS将棋」「YSS」の合計4つのプログラムが多数決により指し手を決めるというもので、前回が「ボナンザ」個人(?)の戦いだとしたら、「合議」は言わば国内トッププログラマーたちによる連合軍。複数のプログラムに検討をさせることで「ひとつのプログラムがたまたま選んでしまう悪手」を未然に防げるのが合議制の強みなのだそうです。

これまでコンピュータ将棋側の欠点として指摘されていたのが「序盤の弱さ」。指し手の選択肢が狭まり、総当たりで回答にたどり着ける「終盤」はコンピュータ将棋がもっとも得意とするところですが、逆に選択肢が多く、複合的な判断が求められる「序盤」はいまだ改善の余地ありとされていました。

合議制の採用は、この「序盤」のミスを減らすのに役立つとされています。伊藤助教も「現時点でトッププロ棋士に匹敵するレベルになっているとは思っていませんが、女流棋士にはかなり高い確率で勝算ありと思っています」と自信満々。コンピュータ将棋に限らず、情報処理分野における合議制の有用性をはかるうえでも、清水女流との対局は大きな注目を集めそうです。

対局は来る10月11日、東京大学の本郷キャンパスにて行われる予定。オセロやチェスの世界においてはコンピュータが人間のトッププレイヤーをすでに下していますが、将棋においてはいまだ、公の場でコンピュータがプロ相手に勝利を収めた実績はありません。
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ライター情報

池谷勇人

ゲーム業界を中心に活動するフリーライター、でしたが、2012年にITmediaへ入社。現在はゆるふわニュースサイト「ねとらぼ」で記者をしております。

URL:Twitter:@tekken8810

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