「ぷよぷよ? 知ってるよ、昔のゲームでしょ?」
いえいえ、とんでもない。2011年には20周年記念の新作『ぷよぷよ!!』(以下、ぷよ20th)が出て、全国を巡る大会ツアーも開催。
2012年にはぷよぷよまんやぷよぷよグミの食べ物系コラボから、ドラマCDやサウンドトラック、フィギュアなどのグッズまで、モリモリ展開してるんです。
「ドラマCD? ぷよぷよってただのパズルゲームじゃないの?」という人もいるかもしれません。説明しよう! ぷよぷよには「まんざいデモ」がある! 元祖ボクっ娘のアルルや、でっかいぷよ帽子をかぶったアミティ、理数系ドリルヘア全方位ツッコミ担当のりんごなど、個性豊かで多種多様なキャラが「ぷよ勝負」を繰り広げるストーリーがあるのであーる!
ドラマCDやフィギュアのように、ぷよやカーバンクル以外のキャラクターに焦点を当てた展開は、コンパイルからセガに開発が移ってからは初の試み。どうしてこのタイミングでこういうチャレンジをしたんだろう? ぷよぷよシリーズのプロデューサーの細山田水紀さんにお話をうかがいました。

(細山田さん、大きい紙袋を3つ抱えてやってくる)
細山田 いっぱい持ってきちゃいました(どん!)
――それ、全部グッズですか!?
細山田 はい! えーとですね、最新作の『ぷよ20th』(どどん!)
――おおー。
細山田 PSP版、Wii版、DS版、3DS版!(どどどん!)
――おおおー。

細山田 サントラとー、ドラマCDとー、フィギュアと…(机の上に次から次へとぷよグッズが並んでいく)マグカップもあるし、イヤホンも…あっ、Tシャツも……それからグミ!
――机に載りきらない!(笑)
細山田 とにかく、いろいろ出ています!……すいません、すっごい散らかってる部屋みたいですよね、こう見ると。僕の席、いつもこんな感じです……。

■ぷよぷよは古いゲームじゃない
細山田 シリーズはもう21年目になるので、「古いゲーム」って認識の方が結構いらっしゃるんですよ。でも、そんなことはないんです。
――机に載りきらないくらい(笑)すごくいろんな展開をしてますよね。ゲーム製品以外の展開って、どういうねらいでやってるんでしょうか。

細山田 ぷよを「古くない」って思ってもらうためには、新作をできるだけ多くの人にたくさん遊んでいただいて、次の展開を応援してもらうのがいちばんなんです。だけど、ゲームは制作に時間がかかるので、たくさん作ることができません。そのかわり、いろいろなところに露出して、新作を認識してもらうとともに、ファンの「こういうものが欲しい!」っていう提案にできるだけ応えたい。その一環のグッズ展開です。
――提案というと、アンケートからのものですか?
細山田 購入者アンケートはもちろんですけど、ネットの評判とか、Twitterのリプライなども。さまざまな要望を見て、制作に協力してくれる企業様を探したり、自分たちで作ることができないかどうかを検討したりしながら、実際にこれまで作ってきました。
ぷよぷよって、ゲーム自体が好きっていうニーズと、キャラクターが好きっていうニーズがあるんですよね。その中で後者の声はやっぱり多いんです。

■ドラマCDはチャレンジだった
――9/13のドラマCD発売経緯を教えてください。
細山田 もともとWEBラジオなどで「ドラマCDやりましょうよ!」ってノリで話してて、まずはお試しとしてイベント(ぷよぷよフェスタ・2012年2月5日に開催)でやっちゃおうと。声優さんたちに舞台の上で、10分ほどのオリジナルストーリーのアフレコを演じてもらったんです。そしたら、「こういうものが欲しい!」ってファンの声がたくさん届いたんです。
「これは商品にしないとダメでしょ!」「じゃあ作りましょう!」「誰が?」「…僕たちが?」みたいな(笑)
――Twitterで、「売れたら第2弾もあるかも…」って言ってましたよね。
細山田 ほんとチャレンジだったんですよ。ゲームもグッズも、「売れなかったら次は無い」って営業や担当に言われるんです。「じゃあ売れたら、次もやりましょう」と決めて制作に着手したものの、こういうファンの期待にこたえる展開の大事さを理解してくれる人も多くはなく、一方で他の仕事と同時進行で進めなければいけないので、ものすごいプレッシャーで…。でも「こういうのをやれば楽しい」ってのはある程度自分の中にあったんです。お話を企画の芳野(芳野詩子さん・『ぷよ20th』のシナリオも担当)に頑張って書いてもらって、がーんって直して…収録して聞いてみたら、自分でも超楽しくて(笑)
――超楽しかったです!
細山田 ありがとうございます。
受注の時点でもリリース後も、叱咤激励たくさんの反応をもらったんです。おかげさまで次を作るための本数ノルマをあっさり超えて、第2弾を作るという運びになりました(12月13日発売・現在予約受付中)。第1弾は初代ぷよぷよのキャラ(アルル・ルルー・シェゾ・サタンなど)が登場したんですけど、第2弾はぷよぷよフィーバーのキャラ(アミティ・ラフィーナ・シグなど)がメイン。第2弾がたくさん売れたら第3弾やりたいなーって、どうなんだろうなーって、ドキドキしてます。

■みんな仲良く!
――初代キャラの第1弾、フィーバーキャラの第2弾だと、フィーバーのキャラクターの方が売れないかもしれないとか、そういった不安はあったりしますか?
細山田 いや!そんなことはないです。そう思ってたら、たぶん初代キャラで区切らずに、第1弾に全部のシリーズのキャラを入れちゃってました。
初代キャラに人気があるから初代キャラだけにしたんじゃないんですよ。本当は全キャラ出したいんだけど、一気に出すのは難しい。順次展開して次につなげたい。その辺りを察して応援してくださってるファンの方が多いと感じます。
――ぷよぷよは、制作元がコンパイルからセガに変わってます。制作する上で、難しさを感じることはありますか。
細山田 過去にファンの間で、「ぷよ通がいいよね」「フィーバーがいいよね」みたいなぶつかりあいがあったみたいです。でもそれって、言い方悪いけど、不毛な戦いなんですよ。みんなぷよぷよが好きなのに、ネガティブな方向にシリーズが進んで永遠に終了するのは避けたい。「みんな仲良くしようぜ!」なんです、基本的には。「ぷよぷよフィーバー」が出た時には、「世界が一新された」って印象を与えてしまったみたいなんですけど、全然そんなことなくて。旧作に対するオマージュやリスペクトがあっての世界なんです。
――どのタイトルにも、昔からのファンへのサービスというか、過去作との関わりがありますよね。昔の作品から台詞を持ってきたり。
細山田 ファンの方に喜んでもらえたなら、とてもありがたいです。でも、あんまり引っ張ってもダメかなあとも。新しいのを期待したいって人もいっぱいいますし、そもそも昔の作品を全く知らないファンもたくさんいますから。ぷよぷよを知らない人向けに作ったのが『ぷよぷよ7』なんですけど…りんごっていうキャラクターができた理由って、そこにあるんです。
――???
細山田 ぷよぷよの世界って、みんな基本ボケなんですよ!
――ああー!
細山田 冷静にツッコめるキャラクターがほとんどいなかったので、キャラクターを考える際に、ツッコミ要員としてりんごが出てきました。新しい世界観を入れたことで、かなり批判もあったんですけど、ちゃんと意味があって…。『ぷよ20th』は、これまでのシリーズの世界観が合わさった感じでやってます。シリーズの世界観や展開には、「どうしてそうなってるのか」っていう、すっごく細かい事情があるんですよ。

■設定で縛りを作りたくない
――その「事情」をまとめた設定資料集などは出されないんですか?
細山田 もちろん知りたい人がいるのは知ってます。だけど、あんまり縛りを作りたくないんです。ぷよぷよ制作チームは、同じメンバーで固定せずに毎回結構変わってるんですよ。コンパイルさん制作の作品に関わったスタッフさんも参加していますし、入社してすぐの新人の子が参加していたりもする。「新しいことをやっていきましょう」っていうときに、設定が弊害になっちゃうかなと。
――設定資料集を出してしまったら「公式設定」になっちゃう?
細山田 やりたくても、設定にとらわれて作ってしまうことになる。「だいへんしん」みたいな新しいゲームルールにしても、いろんな設定に超こだわっていくと、たぶん何も出来なくなってしまうんです。「ゆるくやりましょう!」「想像の余地を残しましょう!」っていうノリって、わりとぷよぷよのシリーズの根底にある。そこをガチガチに設定で縛ってしまうと、何も生まれなくなって、シリーズが終わってしまう可能性もあると僕は考えています。
――なるほどー。
細山田 もちろん昔からある設定は大事にしたくて、つじつまの合わないことはしないようにしてます。ただ、過去の作品のスタッフがノリで入れたすごーく細かい設定とか、セガが版権を保有していない部分から派生しているとかだと、ちょっとコメントできません。「セガは昔の設定知らない!」ってけっこう言われるんですけど、あえて踏み込むことができない部分もたくさんあって…。ファンの人の「設定を知りたい、突き詰めたい」という気持ちはよくわかるんです!でも、ゲーム本編では追いきれないし、追ってしまうとゲーム自体が進めなくなってしまう部分がある。そこを、たとえばドラマCDなどの展開で補完したいんです。根本の設定は変えないけど、ゲームで表現するのは難しいちょっとしたお遊びを入れるとか。
――ドラマCD第1弾の4話(「月夜の小さな大事件」アルルが妖精のいたずらで記憶喪失になり、ルルーやシェゾやサタンがアワアワするお話)は、初代キャラの関係性に踏み込んだなーという印象を受けました。
細山田 やりすぎないようにはしてるつもりなんですけど、喜んでもらえたらいいんじゃないかなって。でも、その踏み込みをゲーム本編まで引きずるかっていうと、そういうことはなくて。キャラクターや世界観の設定は、「これで最後。ぷよぷよシリーズは終了です!」っていうときに出せばいいって感じです。でも、ぷよぷよシリーズが終わっちゃうのは…開発に加わる前からのイチぷよぷよファンとして、僕はイヤですね(笑)。
――ううーん、もったいない…いや、もったいないとは言っちゃいけないですね。
細山田 最新作『ぷよ20th』はもちろん、ドラマCD展開などで次の展開につながっていくといいなあと思っています。買っていただいて、コメントなどを返していただいて、一緒にぷよぷよシリーズを盛り上げてもらいたいです。
(青柳美帆子)

後編に続く