『艦隊これくしょん』(以下艦これ)が、登録人数60万人に達したそうな。
……と言われても、数字だとようわからんのですよ。

60万でしょう? すげー多いけど、もっとプレイヤー多いゲームあるでしょう? 100万とか350万とか
いえいえ。『艦これ』を巡る環境は、ちょっと異常なんです。
ゲーム自体の内容についてはこちら。
ファミコン時代の楽しさがいい「艦隊これくしょん -艦これ-」にハマった(エキサイトレビュー)
ブラウザゲームがここまで話題になって、一世を風靡している。
なにが異常なのか。「面白い」「かわいい」というところ以外の現象に注目してみます。


1・供給が需要に全く追い付いていない故の話題性
6月21日に、一日あたりのの登録人数が一気に増えすぎたため、新規受付を停止する、という事態が生じました。
復帰後は落ち着くどころか、プレイヤー人口は爆発。8月に再度新規受付を停止。サーバーを増やしても即日で満員なので抽選状態。
登録済みプレイヤーも夜のゴールデンタイムになると、あまりの負荷に落ちまくり。
猫と女の子がエラー画面に出てくるので、「猫った」と呼ばれました。

現在では大分落ち着き、「横須賀鎮守府」「呉鎮守府」など洒落た感じにサーバーわけされました。現在でも新規受付は殺到中で猫ることもあります。
想像をはるかに超える人気で供給が追いつかない。そうなるとさらにやりたくなる。プレイヤーの飢餓感が煽られます。
バンドワゴン効果もあるでしょう。
偶然の人気爆発の話題要素がかさなって、ネット上で誘爆している感強いです。
今は大分落ち着きましたが、まさかサーバー側が月月火水木金金になるとは、ねえ。
オンラインゲームサービス開始当初はサーバー不安定になるのは恒例なので、慣れたプレイヤーはそれすらも遊んでいますが、それにしても異様。特に艦これから始めた人は驚いても仕方ないところ。

2・不親切な作りで、プレイヤーがゲームを作る
作りがいい意味で、すごい不親切です。そもそも最初なにをすればいいかわからない。

簡単にまとめると。
「艦隊を育てる→任務をこなす→難しいマップに挑む→レア艦を狙う→育てる」
この繰り返し。育てゲーです。
ただ、艦船のパラメーターについて全然説明がない。任務の内容についても解説がない。艦船の種類と性能がわかりづらい、建造・開発の仕様がわからない。

すっげえ不親切なんです。一人でこつこつやっていたら、多分わからなくなってそのうち飽きます。
しかし、この不親切さと、インターネットとの相性が抜群でした。

かなーり昔に、不親切ゲーの代表として『ドルアーガの塔』がありました。なにすれば宝箱がでて次の階に行けるか、さっぱりわかんないゲームでした。プレイの読み解き自体がゲームなんです。

場所によっては覗かれないよう、ダンボールの仕切りがあったりしたほど。逆に解けない人たちが集まって情報共有するために、ノートが置いてあるゲームセンターもありました。どうやったら鍵が出るか、試行錯誤を交流していたんです。
それと同じ状況が今あって、実に面白い。
『艦これ』で最大の論点はこの2つ。
・どういう組み合わせで資材を使うと船・装備ができるかのレシピ
難関マップ(2−4、3−2、イベントマップなど)を抜けるための攻略方法。
これらについて、色んな人が日夜研究し、交流しあっています。
例えば戦艦がほしい。戦艦は「400/30/600/30」がベスト、いやいや「400/100/600/30」で安定でしょ?、などなど。
データ取りのために秘書艦やレベルも記載して検証。みんなで情報を蓄積、その累計データからベストなレシピをみんなで調査する。
この研究がとにかく面白い。
同じように難関マップに関しても、どういう編成がベストかとか、縛りプレイでどこまでいけるかなど、日夜情報交流がされています。
そして、自分の育てたオリジナル艦隊愛娘を見せびらかすのも楽しみの一つ。このゲームの6割は、交流ありきです。

他のゲームでも検証は行われていますが、艦これはこの文化が顕著です。特に「轟沈」というシビアさ(二度と船が戻らないシステム)があるため、交流は本気です。
2ちゃんやTwitterが盛り上がるのはこれのせいです。
みんなが必死に研究しているのをTwitterとかで見ると、興味もわくというもの。
そこから火薬庫に火が広がるように、艦これ人気に火が付いて、サーバーが飽和。大破して猫連発やむなし。
結果としては、適度な不親切さが「大成功」を呼びました。
ところで誰か、重巡洋艦を有効活用する方法教えてください。那智ちゃんが弱くてツライ。

3・圧倒的なアクティブ率の高さ
「ソーシャルゲーム」は、対人戦があったり協力プレイがあったりと、「ソーシャル」性が売りになっています。
しかし『艦これ』はお世辞にもソーシャルゲームとはいえません。一応対人演習はあるけどそれしかない。これがソーシャルゲームなら格ゲーだってソーシャルゲームだよ!

他のソーシャルゲームと『艦これ』が違う最大の部分は、アクティブ率の高さ。
公式によると、デイリーアクティブユーザー数(DAU)34万人だそうです。これちょっとすごいですよ。
ほとんどのソーシャルアプリは、登録数を増やすために招待キャンペーンを繰り返しています。つまり、招待だけされてプレイしていない人や、複数のアカウントを保持している人が大量にいるため、登録数を見ても実際のプレイヤー数は全く見えません。
しかし『艦これ』は、複数アカウント持つメリット無し。招待機能も停止中。友軍艦隊機能はまだ未実装。
つまり60万登録は、「やりたいと思って自主的に登録した60万」なわけです。ぼくはここが一番すごいと思うなあ。当たり前のことなんだけどすごいよ。

もちろん飽きてやめた人や、忙しくて放置している人は多数いると思いますが、それでもアクティブプレイヤー率の高さはちょっと驚異的。
ぼくの周囲はみんなやってるもんだから、1000万人くらいやってるような錯覚すらあります。まあ錯覚だよなーと思っていたら、この前普通の飲み屋さんで艦これの話していた所、女性店員さんが話に乗ってきて驚きました。そこまでなの!?
会社の同僚や上司で、『艦これ』やっている隠れプレイヤー、多分いるよ。

4・ソーシャルゲーマーの癒やしの場
『艦これ』はやること自体はシンプルです。頭を使って戦略は立てますが、ヘクス移動とか武器選択とか、本格シミュレーション的な操作はありません。
これなぜかというと、毎日遊ぶことを視野に入れているから。
だっておかしくないですか。たしかにドラクエとかメガテンとか好きですけど、毎日一年二年続けてとかやらないですよ。
でもMMORPGやソーシャルゲームって、当たり前のように「毎日やること」が前提なんです。ログインボーナスは毎日入らないと継続しませんし、ある程度イベント楽しむなら毎日プレイしないといけません。
これが、どこまでゲームをシンプルにできるかの挑戦になりました。複雑な操作はしない、演出は楽しく、ロードは軽く、システムも簡易に、かつ深みをもたせて、刺激も必要。
相当な無理難題なんです。でもここを追求しないと未来はありません。面倒なゲームは毎日やりませんし、簡単すぎるゲームはすぐ飽きる。

『艦これ』はソーシャルゲーマーのこの部分を見事に掴みました。
裏で行われている数値計算は謎なんですが、ソーシャルゲーム的に簡単な操作で済ませました。忙しい日は寝る前に30分もあればまあまあ任務はこなせます。
加えて、時間で燃料等の素材が増え続けるのも重要な要素です。ソシャゲは体力が満タンになってから放置するとムダになるのですが、『艦これ』は結構な数まで溜まり続けるのでムダになる感覚がありません。むしろ「数日放置する」ことでアイテムを貯めるのすらもプレイの一つにしてしまいました。なんせ燃料不足になるからね!
ダメージも、インフレして万単位軽く突破するソーシャルゲームに比べて、どんなにでかくても三桁ダメージ。ダメージ15とかの応酬って新鮮ですよ。

あとはよく言われる「課金しなくていい」ところ。上位狙いの人やイベント全クリア目指す人は課金しないとどうにもならないですが、次元が違うので考えなくてOK。
焦らなければ、ちゃんとそのうち強力な戦艦や空母はそろいます。育てればきちんと戦力になります。強くてかわいい英国生まれの金剛ちゃんも、お金かけずちゃんと手に入ります。
時間かけて育てた分、ちゃんと反応がある。これが、お金というより時間に追われていた多くのソーシャルゲーマーの心を癒やしました。
船の建造は100%ではないので、そこはお金かけてやるもよし、じっくりいつか出るのを待つのもよし。お金かけないといけない、ってことはないです。
お金を注いだもん勝ちから、時間をかけて楽しむ方向へ……当たり前に戻りました。

まあとはいえ、ソシャゲはソシャゲで楽しい。だからぼくもそうですが、兼任している人多いです。
よく表現しているのが「PTA」という単語。
プロデューサー(『アイドルマスターシンデレラガールズ』)、提督(『艦隊これくしょん』)、アイカツおじさん(『アイカツ!』)。
自分にあった楽しい物を選んで、遊べるようになった。その選択肢の一つが『艦これ』。
そんなわけで、艦これ関連のネットスラングは、他のソシャゲ由来のものが多めです。

5・スキがでかい
『艦これ』は物語的にスキがでかいです。
キャラはしっかりしていますが、ストーリーは存在しません。史実を元にした艦娘達が、これまた史実をもとにしたミッションをこなしていっているらしい。それ以外の設定もあるにはあるけど、ぼかされています。
世界観はしっかりしているけど、どのキャラがどのキャラと絡むかとか、そのキャラが実際はどういうキャラなのかについて、受け手が自由に想像できます。
これがネット上での人気を加速させている大きな要因の一つ。『シンデレラガールズ』も同じだと思います。
完全なものって、それを受け取るだけで終わってしまう。しかし艦これは史実を調べたら色々な解釈ができるような、ネタ絵とフレーバーテキストだけを用意して、あとは放置。
そりゃねえ。好きな艦娘できたら、この子どんな子なんだろうと史実調べたり、あるいは勝手に他の船との関係性を考えたりが楽しい。
運営が出すシステムに振り回されず、自分達がキャラをいじることができる。これは今後大きなポイントになるのではないかと思います。
おかげで、同人誌やpixivでの盛り上がりが異常。おそらく提督業よりもソッチのほうが楽しくなった、という人はかなり多いと思います。
今人気なのは「ぜかまし」こと島風ちゃん、ロリっ子電(いなづま)ちゃん、大飯喰らい赤城さん、ファンが次々辞めている(?)那珂ちゃん、ツンヘコ天龍ちゃん、『風立ちぬ』にも出た鳳翔のおかん、田舎ギャル北上と腹黒大井、かしまし金剛4姉妹などだと思いますが、今後それぞれのキャラにさらなる人気がついて盛り上がることを考えるとワクワクします。
ところで那智ちゃんの薄い本はまだなんです?


『艦これ』人気はまだまだ加速するでしょう。やり始めるなら今かもね! 先輩提督達が懇切丁寧に教えてくれるはず。
同時に加速しすぎてしまって、ブームが去るのもはやいのではないか、という不安はあります。
今やることは、艦娘コンプすること、改造すること、マップをクリアすること。あんまりにも急いで遊びすぎるとやることなくなります。
ハードな難易度のイベントもありますが、今後増え続けるプレイヤー層と、現状のプレイヤーが楽しみ続けられるだけのバランスをとるのは難しそうです。
そこで期待したいのが、メディアミックス部分。こちらで資金回収をするようですし、どんな展開があるのか今から楽しみです。
ところで、海外の艦船出るって話も以前でてましたが、アメリカ海軍とかどうするんでしょうね。死ぬほど多い気がするんですが。わぁ楽しみ。


(たまごまご)