400万ダウンロードを突破したiOS、Android用アプリ「三国志パズル大戦 」。3つ以上揃えるとコマが消えて、対応する色の武将が敵を攻撃する……という「パズル&ドラゴン」型のゲーム。


「さんぱず」の魅力は、登場するキャラクターだ。
かわいくデフォルメされた「三国志」の武将達が「パズドラ」で戦う。その武将全てにボイスが搭載。孫尚香だったら「せーの」「行くわよ」みたいな掛け声が、連鎖とともにどんどん続いていき、最終的には 「弓腰姫の、とっておきよ!」といった決め台詞が炸裂する。
これで面白くないはずがない。

「さんぱず」のキャラクター達には元ネタがある。
『蒼天航路』だ。『蒼天航路』といえば大胆な再解釈が持ち味の三国志マンガ。
「さんぱず」は『蒼天航路』の意思を受け継いだ、蒼天航路ゲーなのだ。

■「魔王」董卓
『蒼天航路』といえば董卓、董卓といえば『蒼天航路』というぐらい、『蒼天航路』によって「三国志演義」から評価が変わったのが董卓だ。
「演義」での彼は暴君の代表的存在。時の皇帝を廃位したり、罪もない人々を虐殺したりと悪事のかぎりをつくす。
確かに悪人ではあるが、魅力的な悪人ではない。だが、『蒼天航路』での彼は、悪を極めることでカリスマ性を持つことになった。
作中での彼のあだ名はその名も「魔王」。
初めて「魔王」の名が登場したのはその六十七「戦局を動かせ!!」内での劉備の台詞だ。

場面は虎牢関の戦い。
虎牢関の戦いでは関羽対呂布の一騎打ちが描かれる。
作中でも最強と謳われる武将同士の戦いだ。一騎打ちの真っ最中、いきなり断崖絶壁から牛が無数に落ちて来る。牛の死骸を階段代わりにしていきなり登場する董卓。
最強武将同士の一騎打ちのお株を奪うインパクトである。崖の下に降りた董卓の周りでは敵味方入り乱れての大乱戦。大量の死人が出る中を彼は眉一つ動かさず平然と歩く。
圧倒的な暴力。それを見た劉備は「魔王」と呼んだのだ。
もう、ヒドい!でも、カッコいい!!

『蒼天航路』での董卓は「天下万民!我を尊ぶべし!」と叫びながら全身に槍を突き刺されながら殺される。死にざままでもがカッコよすぎるのだ。
「さんぱず」で董卓が「魔王」と呼ばれていること。それは彼があのカッコいい董卓なのだという事を意味しているのだ。


■全身傷だらけの楽進
楽進といえば曹操軍の古参の武将。
幾多の戦場を駆け回った歴戦の勇者だが、張遼のような圧倒的な見せ場もなければ、夏侯惇のようにビジュアル的にキャラが立っているわけでもない。曹操軍、その他として描かれる事の多い武将である。
「さんぱず」内では全身傷だらけの勇猛果敢なキャラとして登場する楽進。この元ネタも『蒼天航路』である。

楽進が『蒼天航路』で初登場したのが、その百二十「袁紹の檻」だ。

一兵卒であった楽進は曹操に見いだされて、いきなり将軍に取り立てられる。すでにその体は幾多の戦いで傷だらけ。それ以来、どんなに傷を負っても、死にそうになっても、どんな敵にも全く臆することなく、常に「ズンッ」という擬態語と共に一歩前に進む。これが「楽進の武」なのだ。

物語の終盤、合肥の戦いで楽進は呉の凌統にわき腹に重傷を負わされる。それでも「ズンッ」と共に彼は前進を続けた。
結局、彼はその時の傷がもとで死ぬ。死の床で楽進は曹操と次の戦場について語り合う。次の戦場での再会を誓いあい、別れる曹操と楽進。私が一番好きなシーンの一つだ。
楽進の傷は「楽進の武」を象徴するビジュアルであり、「さんぱず」がそれを上手くビジュアル的に利用していることがよくわかる。

■そのまんまやんけ!
成公英を知っているという人は相当な三国志マニアではないだろうか。
『蒼天航路』での彼は中央政権に反抗を続ける武将・韓遂に忠義を尽くした人物。女性のような美男子という、インパクトのあるビジュアルと、主君との軽妙なやりとりが印象に残る人物である。
「さんぱず」での彼は外見が『蒼天航路』に登場する成公英そのものだ。

一方、主君である韓遂も、グラフィックこそ中年に変更されているが、覚醒後の称号は【乱の華】。
これは『蒼天航路』内で韓遂が度々口にするキーワードだ。韓遂はゲーム内の能力も優秀。軍略「反逆の暴風雨」は敵単体に攻撃力の最大100倍までのランダムダメージを与えるというもので、一発逆転が狙えるキャラクターになっている。こうした韓遂の性能も『蒼天航路』での彼の性格を反映させたものであり、「さんぱず」の「蒼天航路ゲー」としてのこだわりが垣間見える。
[2014/02/24 1:47:55] よねみつかずなり:
■負けてるのに不敗な徐晃
魏の徐晃は曹操に「わしは30年以上も合戦をやってまいったが、これほどの堅陣を突き破った者は見たことがない」と言われるほどの戦上手だ。
「さんぱず」での彼の称号は【不敗将】。いかにも強そうじゃないか。
だが、「演義」の徐晃は額を射抜かれて戦死。普通に負けてるのだ。
それなのに徐晃が不敗という事になっているのはなぜだろうか。
『蒼天航路』での徐晃は「負けずの徐晃」の異名を持つ。初登場はその百六十「負けずの徐晃」。上半身裸で逃げ帰りながら、「死ななければ負けではない」「逃げるには軽さ軽さ」と言い張る徐晃。その姿はトリックスター的な印象が強い。

そんな印象が一変するのは物語の最終盤、樊城の戦いだ。
曹仁率いる魏軍が立てこもる樊城を水攻めで落とそうとする関羽。
魏軍としては、樊城に援軍を送りたい。だが、援軍はことごとく関羽に倒されてしまう。于禁やホウ徳といった猛将も失敗した超A級ミッションを任せられたのが徐晃だ。彼は、自分がおとりになって関羽と一騎打ちで引きつける間に援軍と救援物資を樊城に入れるという作戦を立てる。そして、作中で最強の強さを誇る関羽と徐晃は一騎打ちで互角に戦う。しかも戦いながら関羽と共に武神の領域に立ち入る。
しかもおとり作戦は見事成功。最終的に魏軍を勝利に導く立役者になったのだから、まさに【不敗将】と言えるのではないのだろうか。

■この曹仁、ハゲている
樊城の戦いは『蒼天航路』最終盤の見せ場だ。魏軍対関羽軍の総力戦。
その総大将が曹仁だ。
この曹仁、ハゲている。
『蒼天航路』では、最初、曹仁は曹操軍の主だった武将の中で最弱。ただ一人1軍を任せられずにいる。
その百七十三「北の焦燥、南の焦燥」では、功を焦って命令違反する曹仁は曹操に「もう一度命令に違えば首を刎ねるぞ!」とまで言われている。
結局、一軍を預かって劉辟討伐に向かうが、威張り散らして負けそうになる曹仁。だが、最後の最後で覚醒して見事に劉辟を撃破する。
その後、戦いを重ねて、とうとう樊城の戦いで関羽に勝利するまでになる。
「演義」には彼の髪に関する記述はない。横山光輝版の三国志もKOEIの三国志でも、曹仁はハゲていない。にも関わらず「さんぱず」の曹仁はスキンヘッドだ。
ただ、惜しむらくは、覚醒後の曹仁はかぶとをかぶっているためにハゲなのかわからないのだ。
「さんぱず」の曹仁はハゲなのかハゲじゃないのか。できればハゲててほしいのだが。

その他、夏候淵の得物が弓だったり、孫権が虎をモチーフにしていたり、胡車児が暗殺者のビジュアルだったりと、蒼天航路のファンにとってはニヤリとするネタが満載の「さんぱず」。
デティールの描き込みが、キャラクターにより魅力と深みをあたえている。
こうなれば、是非とも満寵や吾粲、馬玩といった名脇役達にもぜひ「さんぱず」に参戦してほしいところだ。
サイゲームスさん、よろしくお願いいたします!
(古田ラジオ)