最近、うちの近所が妙なことになっている。住宅地のふつうの民家が、いきなり店に変身するのだ。
まず、沖縄料理屋ができた。建売っぽい一軒家に派手なノボリが何本も立ち、玄関からはいって飲み食いする。次にその近くの家が同様に焼肉屋になり、マッサージ屋もできた。他人の家で、となりの部屋で子供が泣いているのを耳にしながら、主人に体をもんでもらうのは、かなり稀有な体験だった。

ところで、宣伝で恐縮だが、ワシは最近こんな本を書いた。ドリトル先生の新訳である。
そして、先日催された「電書フリマ」にも出品した。

せまいながらも、こんな2つの事例を体験して、この『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』を紹介したくてたまらなくなった。ので、します。

著者の橘玲は、かなり前から保険や不動産、株式投資に関する本を多数書いている。が、橘の関心の中心はいつも、「生き方」「どう自由でいるか」にあり、投資はあくまでもそのための手段にすぎない。この本は、投資の方法論は一切なく、もろ、「生き方」「働き方」や「どう世界と関わるか」がテーマになっている。


まず、勝間和代は無理だという。あれができるのは、もとからできる人たちであって、できない人が無理すると破綻する。ああいう「やればできる」の思想は、かつてアメリカで流行った社会進化論がその源流で、今は弊害しかない。いいにくい話だが、最新の遺伝学によると、できるできないは生まれたときにほぼ決まっているからあきらめた方が無難なのだという。

じゃあ、できない人は、どうすればいいか。

ここで、経済理論のひとつ、「比較優位」論が出てくるが、説明はめんどうなので、適当にググッてください。
要は、比較的得意なことで、食っていけるという話。

次に橘は、会社をやめることをすすめる。なぜか。これも、詳細は本書を読んでもらうとして、簡単にいうと、会社は基本、大奥みたいな世界になるから。足の引っ張り合いはイヤンという話。それよか、直接、市場に向かった方が風通しいいですよと。
会社が大奥なら、市場はヤフオク。他人の粗探しするより、いい評判を増やしていくほうが健康的ということだ。帯に、「伽藍を捨ててバザールへ行け」とあるが、これは「会社をやめて、市場に向かえ」ということである。

冒頭の、家で店開くのなんか、ほんとそうだと思う。マッサージ屋の親父さん。別のところでやってたけど独立したと言ってた。
まさにバザールへ向かってる。

ワシも、今年は不景気で仕事がなかった。4月から仕事なくて、長い春休みと高くくってたら、夏休みが終わっても仕事ない。こりゃいかん、他人の依頼をあてにしてても始まらんと始めた翻訳作業だが、パブーとかフリマのおかげで、あいだの出版社飛ばして、お客と直に向き合えるようになった。これも、この本にある、バザールじゃないか? と思った次第。

パブーも電書フリマもまだまだ小さいが、いずれアマゾンやコミケなみに巨大になるかもしれない。
そしたら、先行者利益を得て、ウハウハになる予定だ。バザール、バンザイ! さあ、みなさんもご一緒に、バザールへ!

え? 「具体的にどうすればいいか?」って? うーん。基本、「残酷な世界」だからなあ。そこが見つけられない人は、伽藍の中で朽ち果てるしかないのかもしれない。(麻野一哉)