『極道めし』などの作品で、B級グルメ漫画を完成させ、日本のB級グルメの素晴らしさを世界に知らしめた、土山しげるの新作が来たぞー!
11月9日号の週刊漫画ゴラク掲載の『ザ・コックマン』は、B級グルメ+プロレスという最強タッグ。
これ以上に、日本の大衆文化を象徴する味のある組み合わせがあろうか。
たぎる!

あ、「世界に知らしめた」は誇張表現ではなく。本当に今注目されているのです。
海外で日本のグルメ漫画、特に『孤独のグルメ』などB級グルメを描いた漫画は、日本文化として関心を集めています。
日本人の等身大は、食に表れているんですよ。
土山しげるはそのトップランナーとも言えるマンガ家。ごく一般的な家庭、あるいは貧しさの中生きている人たちの、ほんのささやかな食の喜びを、本当に美味しそうに描く作家。

例えば『極道めし』では、刑務所で「一番旨かったものについて説明する」というだけの、食事シーンのないグルメ漫画。
ところが、美味しそう食べるシーンが実に見事に描写されており、こっちまで食べたくなってくるんだー。
食べ物なにもないのにね。唾液が出るよ。

さて今回のプロレス+B級グルメ。
ある意味においては日本の大衆文化の象徴の二大巨塔ですが、同時に直接は結びつかないもの。

そこをさらりと土山しげるはやってのけました。

主人公の牛(ぎゅう)ちゃんは、フライパンを凶器に暴れる悪役の覆面プロレスラー。その名もザ・コックマン
ヒーロー役をフライパンでめった打ち。二つ名は「地獄の料理人」。
相手のレスラーを不意打ちなど卑怯な手で襲い、観客の中に飛び込んではフライパンを振り回す。

これにはアナウンスもヒートアップ。
「食材ではなく人間相手に腕をふるっております!! その名の通り地獄の料理人っ!!」
うまいですね。このへんの技術はプロレスの醍醐味です。

さて、今回は鳥取の巡業。鳥取といえば、カニ!
打ち上げにレスラー達は高級カニ料理を食べに行くのですが、ザ・コックマンこと牛ちゃんは行かないんです。
彼は一人で、鳥取の下町B級グルメの決定版とも言えるホルモン焼きそばを食べに行くのです。

小さな店なんですよ。10人も入らないような。
鳥取巡業が決まってから店のチェックを重ね、決めた食堂です。
彼曰く「鳥取へ来たならこれを食え!ってか!」
中華そばを、味噌ダレで焼いたもの。ぷりっぷりのホルモンと鳥取野菜が至高の逸品。

何と言っても、口に入れたあとホルモンを噛むとモッチモチするのが、美味しそうと言ったらならない!

いや、カニも旨そうなんですよ。でも、庶民が本当に普段から食べ慣れていて、それでも食べる美味しいもの、それがB級グルメ。
美味しいものにA級もB級もないんですけどね。単に表立った高級グルメと区分けしているだけなんですが、高級なものを食べに行く「よそ行き」じゃなくて、「住人の普段」を味わえるから、いいんですよ。
なるほど、プロレスと言えば地方巡業。地方と言えばB級グルメ。

これは上手い組み合わせじゃないか?!
 
物語はここで終わりません。
彼がホルそばを食べていたところ、どうもおかしな親子が入ってきます。
お父さんと幼い息子。大好きなプロレスを見て、ホルそばを食べて。明日は砂丘と温泉だ。
いや、おかしい。父親は1円玉ばっかりの小銭でホルそば代を払っていた。そんな家族が砂丘でラクダに乗る余裕があるのか?
ザ・コックマンは、すぐに行動にでます。

プロレスとB級グルメの接点がここなんですよ。
B級グルメは、庶民にとってのヒーローです。
子どもたちは高級な食材よりも、食堂のB級グルメの方が大好きじゃないですか。
プロレスラーも、子供が憧れる大好きなヒーロー達ですよ。
ヒールもベビーフェイスも、そこで生まれるドラマも、全身全霊のぶつかり合いも、心を震わせるもの。入ってきた親子も「あのコックマンって怖かったな」と話をしています。プロレス大好きです。

今回の『ザ・コックマン』では、徹底して日本の庶民のヒーローを描きます。
B級グルメも、プロレスもそうですが、まだまだヒーロー、あるじゃないか。
そして、ヒールだったザ・コックマンも、またヒーローなのだ。

飾らない人間の素朴な幸せと、憧れが詰まった作品です。
読み切りと書いてありますが、第二回があるので不定期掲載の模様。
第二回は11月22日発売号です。毎週ではないので気をつけて。
まずは第一話を読んでみて。唾液が出るよ。
そして鳥取に、ホルモン焼きそばを食べに行こう!
(たまごまご)