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宮崎駿は、声優のスキルについてどう考えているのか

2013年6月27日 11時00分 ライター情報:米光一成

『ジブリの教科書3 となりのトトロ』制作者インタビュー、エッセイ、論考がたっぷり。

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糸井さんがいいっていったのは、ぼくです」
声についてこういうことも言っている。
「映画は実際時間のないところで作りますから、声優さんの器用さに頼ってるんです。でもやっぱり、どっかで欲求不満になるときがある。存在感のなさみたいなところにね。特に女の子の声なんかみんな、「わたし、かわいいでしょ」みたいな声を出すでしょ。あれがたまらんのですよ。なんとかしたいといつも思っている」
これに対して、糸井重里は「逆にぼくらはアニメっていうのはああじゃないといけないのかなっていうふうに思ってたんですよね。芝居もそうだけど、過剰ではないと伝わらないわけでしょ」
おそらく、ここで二人が指し示しているのが「声優のスキル」に関わる部分だ。

実際に、父親役の糸井重里の声は、おとうさんっぽくない。教科書的なおとうさんとしては失格っていう感じすらする。ちょっと不安定で、世慣れていない。
「となりのトトロ」演出覚書の父の項には、こう書いてある(『出発点』P405)。
“実生活のバランス感覚に欠けている部分があって、その負担を娘達におしつけているのだが、今はそれに気づかず、仕事に没頭している。”
声優的な巧さよりも、声優ではない不安定さが必要だったのだ。

アニメ「NARUTO」の声優竹内順子は、声優の仕事について、「日経Bizアカデミー」のインタビューでこう答えている。
竹内 例えば、振り返るときに「んっ」って言って後ろを向いたり、そんな人間いないよって初めは思ったんですよ。
── 普通だったら何も言わずに振り返りますからね。
竹内 でもアニメはそれも一つの様式美で、お客さんに対して音として指定する解りやすいサインだと思ってやるようになったんですけど、普段出してない音だったので、最初は意味がわからなかったです。
(…)
竹内 「こ、これは!?」の最初の「こ」はなんだよ! とか、悪者の最初の台詞はなんで「ハハハ」から始まるんだろうとか、いろんなところが引っかかってはいたんですよ。

宮崎駿は、そういった声優独特の「様式美」に不満を持っているのだろう。声優にスキルはいらないとは思っていないだろうが、定型になってしまったところに安住してしまうようなスキルなら不要だと思っているのではないか。
“どこか別のところから人を連れてこなくちゃいけない”と思ったのは、型通りの父親像にはめ込んでしまわないための冒険だったのだ。
宮崎駿作品は、『ジブリの教科書3 となりのトトロ』以降、どんどん主要人物を担当するのがプロ声優ではなくなっていく。

『ジブリの教科書3 となりのトトロ』は、音響監督や宮崎駿監督のインタビューの他にも、プロデューサー・鈴木敏夫、美術・男鹿和雄、原画・二木真希子、仕上・保田道世、音楽・久石譲のインタビューや、エッセイ、宣材コレクションなど、作品を新たな視点で捉え直すヒントが満載、オススメです。(米光一成)

ライター情報

米光一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学客員教授。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「想像と言葉」等。

URL:Twitter:@yonemitsu

コメント 5

  • わかるけども 通報

    でも実際「もののけ姫」とか失敗してるよね。アシタカ以外。

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  • 匿名さん 通報

    演技の問題もあるけど、なかには声と顔が一致しすぎてキャラクターの顔ではなく、本人の顔が浮かんできて、違和感となってしまう事もあると思う。

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  • 匿名さん 通報

    私は素人の棒読みはきらい。それにぼそぼそと聞き苦しい発声の人がほとんど。声優でなくとも、きちんと発声できる人を選んで欲しい。「ラピュタ」の初井言榮と寺田農に「声優じゃない」って文句言う人はいないはず。

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  • なるなる 通報

    「トトロ」の成功を称賛する中で、糸井重里さんの起用を声質のみでマスコミが評価してしまい、演技力に目をつぶってしまった。これで宮崎監督に意見する人がいなくなってしまった。

    1
  • 匿名さん 通報

    アニメから登場人物が飛び出してきたらこんな感じて人をさがして その人にやってもらいたいて感じなんだろね

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