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リアル貴族作家が描いた貴族とメイドと執事がいる世界『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』

2013年8月13日 11時00分 ライター情報:千野帽子

『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』ヴィタ・サックヴィル=ウェスト、村上リコ訳/河出書房新社)

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お手紙拝読いたしました。

「貴族とメイドと執事がいる世界に憧れます。身分社会をあつかったコンテンツが大好きなのです」

たしかに21世紀に入って日本では、ウッドハウスの『ジーヴズ』シリーズが国書刊行会と文藝春秋から同時に刊行されるなど、英国の上流社会や社交界を題材としたコンテンツは、需要が高まりました。メイド喫茶や執事喫茶といったサービスにも根強い人気があります。
小学校の全校集会で「世界にひとつだけの花」を斉唱させられ、徒競走の順位づけ廃止で全員いっしょにゴール!させられたあなたの世代が、強制平等の息苦しさに耐えかねて
「身分社会万歳!」
みたいな感じになっているのでしょうか?
私たちが想像する英国の貴族文化というのは、大雑把に言って第1次世界大戦(1914-1918)以前のものです。その最後の輝きを知るリアル貴族の作家が貴族社会を書いた小説をご紹介します。

ヴィタ・サックヴィル=ウェスト(1892-1962)が1930年に書いた『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』(村上リコ訳、河出書房新社)です。
私がヴィタ・サックヴィル=ウェストの名を知ったのは、18歳のころ地学の授業中にこっそりヴァージニア・ウルフの傑作『オーランドー』(1928、杉山洋子訳、のちちくま文庫)を読んでぶっ飛び、教室を飛び出しそうになった日のことです。自制しましたが、じっさい腰が浮きかけるところまではいきました。イタい子だったのであります。
『オーランドー』の主人公は途中でなんの説明もなく男から女に変わってしまうのですが、ウルフの同性の恋人であるヴィタ・サックヴィル=ウェストはバイセクシャル。男爵家の令嬢(祖母はスペイン人)で、文学に造詣の深い外交官と結婚してふたりの子ども(美術史家と著述家)をもうけるいっぽう、夫婦してそれぞれ同性の恋人たちがいたといいます。
またイングリッシュ・ガーデンの作庭家としても高く評価され、第2次大戦後は週刊新聞に実用度の高い園芸コラムを連載するほどでした(『あなたの愛する庭に』食野雅子訳、婦人生活社)。
『エドワーディアンズ』は彼女が、自分の少女期の記憶や体験をもとに、荒々しい現代化の波をかぶる直前の、古き佳き英国貴族文化の最後の輝きを書き留めた小説です。作中に出てくる公爵家の屋敷シェヴロン館も、作者が育った邸宅を忠実にモデルとしたものだそう。

エドワーディアンとはヴィクトリア女王のあとをついだエドワード7世(在位1901-1910)の治下の人びとという意味です。

ライター情報

千野帽子

文筆家。著書『読まず嫌い。』(角川書店)『文藝ガーリッシュ』(河出書房新社)『俳句いきなり入門』(NHK出版新書)など。公開句会「東京マッハ」司会。

URL:Twitter:@chinoboshka

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