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若者は本当は右傾化していない、メディアが騒いでいるだけだ

2014年5月22日 10時00分

ライター情報:HK(吉岡命・遠藤譲)

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『若者は本当に右傾化しているのか』古谷経衡/アスペクト
社会現象としてのネット右翼(通称ネトウヨ)は今や多くの人が知る言葉となった。だが、彼らの実態は依然として曖昧模糊。2000年代初頭から様々なかたちで喧伝されてきた「若者右傾化論」の裏で、たびたびその影響が指摘されてきたにもかかわらず。差別、ヘイトスピーチ、アンチマスコミ、ネットリテラシーなど、問題は山積みである。ネトウヨ関連本を上梓してきた古谷経衡の新刊は、感情的な論を一旦脇に置き、議論のテープルを用意する一冊だ。

2014年東京都知事選挙。
タカ派候補、田母神俊雄の躍進はマスメディアでも大きく取り上げられた。たとえば「朝日新聞」は「田母神氏60万票の意味」という特集記事を掲載。
「支援者らは、従来の保守層よりも過激な傾向があり、愛国的なネットユーザーたちである『ネット保守』が予想を超える善戦を生んだと沸き立つ。これまで実態が見えなかった新たな保守層が、田母神氏の『基礎票』になって現れた、との見方もある。」(『朝日新聞』2月11日朝刊)

なかでも20代の投票先第2位(約24%)ということがクローズアップされており、一部では「若者の右傾化」と見なす風潮がある。
よく聞かれる以下のような言説が、20代の投票行動により証明されたというわけだ。

〈実感〉ネット上ではネトウヨと呼ばれる人たちによる韓国や中国への排外的な言葉が跋扈している。
〈直感〉若者は新技術と親和性が高く、ネットに触れる機会が中年や老人よりも多い。
〈補足〉しかも、若さゆえに思想的影響を受けやすい。
〈予想〉ゆえに、若者は保守的で右翼的な思想になる。

しかし、古谷経衡『若者は本当に右傾化しているのか』は、こうした「若者右傾化論」を否定する。
1982年生まれの著者は保守を自認し、アニメ評論なども行う若手論者。田母神俊雄公式サイトでも「賛同者」として名を連ねられている。

著者の分析では、田母神票の中心となったのは30代(約14万7千票)と40代(約13万5千票)。したがって、20代(約9万5千票)の顕著な「右傾化」とするには無理があるという。(票数はいずれも著者による推定)

東京都選挙管理委員会によれば、2014年都知事選での20代の投票率は27.92%であった。(参照:「平成26年2月9日執行東京都知事選挙の年代別投票行動調査結果の概要」)
本書のなかで仮定されている25.15%という数字と大きくは異ならない。たしかに、20代の3割未満しか投票していないのに「若者の意志を代表している」とすることはできないだろう。

「投票率を考慮に入れた若者(二十代)の政治意識というのは、『若者の右傾(保守)化』を心配し、警戒する側にとってはまったく大きな事実誤認であり、また『若者の右傾化』を歓迎し、評価する側からしても、多分に『願望』が混ざったゆがんだ現状認識であるということがわかる」

低投票率は必ずしも政治的無関心が理由ではない。若者に無党派層が多いのは、政党や政治家がニーズに応えていないからだと指摘。

ライター情報

HK(吉岡命・遠藤譲)

男子2人組の編集者&ライターユニット。ノンフィクション書評、労働・貧困問題、ネット右翼、炎上検証、突撃ルポなど。お仕事のご依頼はツイッターまで。

URL:Twitter:@HKeditorialroom

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