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本日発表大宅賞。ネット投票を導入、リニューアルしていたノンフィクションの栄誉のゆくえ

2017年5月17日 11時00分 ライター情報:近藤正高
大宅壮一ノンフィクション賞が、このたび「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞」と改称し、選考方法も大幅に変更された。そのリニューアルされた同賞の最初の授賞作がきょう決定する。
武田徹『日本ノンフィクション史』(中公新書)。本書では折に触れて、評論家・大宅壮一の言動にも言及されている。「おわりに」ではサブタイトルに「大宅壮一の残したもの」と掲げ、彼の蔵書をもとに設立された大宅文庫の独自の検索システムなどが評価されている。ただしその大宅文庫も近年、財政面から苦しい状況が続いている

大宅賞はこれまで、同じく日本文学振興会の主催する芥川賞と直木賞と同様、数名の選考委員が候補作のなかから授賞作を選ぶという方式がとられてきた。しかし、今回のリニューアルにより、候補作について、ネットを通じての読者投票と、日本文学振興会が委嘱した有識者による投票を行ない、その集計結果を参考に選考顧問の後藤正治(ノンフィクション作家)立ち会いのもと授賞作を決めることになった(ネット投票はすでに5月8日0時をもって終了している)。

しかし、ネット投票は、投票ページにコメント欄が設けられていたとはいえ、きちんと読んだうえでの投票であるかどうかまではチェックされなかったようだ。はたしてそうした票を選考基準にしてよいものか、懸念は残る。

もっとも、それ以前に私が心配なのは、大宅賞がこれほど大きくリニューアルしたにもかかわらず、どうも世間にはあまり知られていないらしいということだ。少なくとも、私のツイッターのタイムラインで(出版関係者も多数フォローしている)このことを話題にした投稿は見かけなかった(私自身、大宅賞についてたまたま検索して、リニューアルしたことを初めて知り、驚いたのだった)。これがもし、芥川賞や直木賞が読者投票を導入したことになったのなら、ニュースでは大きく報じられただろうし、ツイッターなどSNSも大騒ぎになったことだろう。

大宅壮一の生前に新設された大宅賞


そもそも今回のリニューアルには、芥川賞や直木賞とくらべて話題になることの少ない大宅賞のテコ入れという意味合いもあるはずだ。大宅賞の試行錯誤はすでに2014年に「書籍部門」と「雑誌部門」の2部門に分け、雑誌記事も選考対象にしたときから始まっていた。しかしそれにもかかわらず、さほど話題になった気配はない。これは大宅賞のというよりも、ノンフィクションという分野自体の停滞の表れなのかもしれない。

折しも大宅賞のリニューアルと前後して、ジャーナリスト・評論家の武田徹による『日本ノンフィクション史』(中公新書)という本が出た。これは、日本におけるノンフィクションというカテゴリーの成立を戦前から歴史をひもときながら、ノンフィクションが社会に果たすべき役割を問うた一冊だ。同書の第6章では「ニュージャーナリズムと私ノンフィクション――大宅壮一ノンフィクション賞と沢木耕太郎」と題して、大宅賞がノンフィクションという分野に与えた影響についてもくわしく言及されている。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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