人気声優でありながら、作家や作詞家としても活躍している浅野真澄(作家としての名義は、あさのますみ)。
今年の4月、13年にわたる長期連載『ハヤテのごとく!』を完結させた人気漫画家の畑健二郎

二人のプロがコンビを組み、2011年の冬コミ(コミケ81)で第1巻を発表。その後も毎回、新刊を発表してきた声優あるある4コマ漫画『それが声優!』がついに完結!
8月13日(日)のコミケ92最終日に、サークル「はじめまして。」のブース(東地区 "あ"41で、『それが声優!2017 Final 君に届くように』が頒布される。
第1巻から『それが声優!』に注目してきたエキレビ!は、あさの&畑に3度目の直撃。本編12冊目となる最終巻にかける思いや、コミケ参加者へのメッセージなどを聞いてきた。
また、対談前編の最後には、アニメ『それが声優!』から生まれた声優ユニット「イヤホンズ」高野麻里佳高橋李依長久友紀から届いたメッセージも紹介!
最後の夏コミ『それが声優!』原作者対談「握手だけじゃなくてハグもしています」
あさのますみ=声優の「浅野真澄」としてだけではなく、絵本作家、作家、作詞家など文筆業でも活躍。/畑健二郎(はたけんじろう)=2004年〜2017年まで『週刊少年サンデー』で『ハヤテのごとく!』を連載

最終巻は14ページ増えて、すべてストーリー漫画


あさの この最終巻は、全部がストーリー漫画になっているんですよ。これまでは、4コマ漫画がメインで、その他に私の声優コラムや1コマ漫画、(4コマではない)ストーリー漫画もあるという構成だったんです。その場合、4コマ漫画のネームは私が描くのですが、ストーリー漫画のコマ割は難しくて、私には無理で。
内容について書いた文章を畑先生に渡して、ネームから畑先生に描いてもらっていました。だから、今回、私はすごく楽をさせてもらっているというか……。声優コラムも無いし、大変な部分のほとんどは、畑先生が担って下さったんです。
 あはは。
あさの ページもいつもより多いんですよね。
 普段は40ページなんですけど、今回は54ページあります。
しかも、これまでは1コマ漫画やコラムで埋まってたページも全部ストーリー漫画ですから……大変でした。
あさの 大変だったと思います!
 最初のネームでは、もらった内容を無理矢理40ページに収めていたのですが、どう考えてもページが足りなくて。展開が早すぎる感じだったんです。
あさの 私もそのネームを見せていただいたのですが、展開が早すぎて気持ちがついていかないというか。今回は特に共感しながら読み進めてみて欲しい内容だったから、どうしても間みたいなものが欲しくなって。「ちょっと、これだと早いですよね」と言ったら、畑先生が「じゃあ、長くしますよ……」みたいな感じに(笑)。

 長くしたというか、何ページになるかは分からないけど、僕の間の取り方で描きますってネームを描いてみたら、54ページになったんです。まあ仕方ないな、って54ページ描きました。『ハヤテのごとく!』の連載が終わってからしばらく経っていたので、ちょっと腕がなまってて。作画もなかなか進まなかったですね。
最後の夏コミ『それが声優!』原作者対談「握手だけじゃなくてハグもしています」
コミケ92最終日には、『それが声優!』の第1巻から最終巻までをすべてまとめた670Pにも及ぶ総集編『それが声優!大全集』(5000円)も会場限定で頒布予定。

同人活動を通して漫画家としての意識に変化も


 今のところ、これが僕たちのサークルの最後の同人誌になる予定ですが、6年半、同人活動もしてきたことで、僕の漫画家としての意識が少し変わりました。印刷所や販売店の人、グッズを作ってくれる人たちと直接、メールや電話でやりとりするようになって。週刊連載だけでやっている時は、漫画家って漫画を描くことだけが仕事という感覚だったんですけど。
こんなにたくさんの人が関わってビジネスが成り立ってると実感できて。仕組みなどを知れたのも勉強になりました。今回で、同人誌を出すのは終わりにするつもりですけど、そういう人たちとの繋がりが切れてしまうのは寂しいですね。
あさの 私は、今まで自分で文章を書いて本を出すことはあっても、読者の人とすごく身近に接する機会はなかったので、それが嬉しかったですね。当日はブースのバックヤードで作業をしているんですけど、「ますみん、買ったよー」とか声をかけてくれたりする人もいるし。直接、読者の顔が見えたのはすごくありがたかったです。

 僕はいつもプラカードを持って列整理をしているんですけど、6年もやっているので、いつも声をかけてくれたり、先頭とかで並んでくれたりする人の顔はけっこう覚えました。そういう人との接点が無くなってしまうのも寂しいです。
あさの 畑先生は、いつの頃からかフリー素材と化していて(笑)。自由に写真を撮って良いし、触ってもオッケーってことになっているんです。だから、いろんな人と握手とかしてますよね?
 握手だけじゃなくてハグもしていますが、何百人としたかもう分からないです。写真も、ちょっとしたコスプレイヤーよりはたくさん撮られてると思いますよ。

最後の夏コミ『それが声優!』原作者対談「握手だけじゃなくてハグもしています」
『それが声優!』の同人誌やBlu-rayのブックレット、グッズなどで描いたカラーイラストをすべてまとめたフルカラー本『それが声優!コンプリートイラストブック』(2000円)も、会場限定で頒布予定

リアルイヤホンズの3人が漫画と同じように成長


 今のイヤホンズの3人の活躍を見てると、オーディションで3人を選んだ当時の自分たちは見る目があったな〜って(笑)。オーディションにはたくさんの声優さんに来て頂いて。僕も3日間通ったんですよ。そうやって選んだ3人が『それが声優!』の後も活躍していて、すごく良かったなと思います。
あさの みんな頑張ってますよね。イヤホンズのライブには、たぶん毎回行ってるのですが、『それが声優!』の中と同じようにリアルの3人も成長していってくれて、すごく嬉しいです。
 今後も頑張って欲しいですね。
あさの 後輩の声優はたくさんいるけれど、3人に関しては、もう身内のような感じもあります。ただ、私が3人にあまり深く関わり過ぎると、言いづらいことなどもあったりするかもしれないじゃないですか。例えばですけど、もし3人の誰かがイヤホンズの活動に終止符を打ちたいと思ったとして……。
 え!?
あさの 例えばですからね(笑)。もし、そんなことを思っていたとして。私がすごく近くにいてあれこれ言い過ぎてたら、その子が自分の意志を言いづらいんじゃないかなって。だから、3人とは適度に距離をとりつつ、「何か困ったことがあったら言ってね」と伝えています。あとは、「自分たちがやりたいことや、止めたいことがあったら、私に気を使わず、自分たちの意志で決めてね」とも言ってますね。
 逆にイヤホンズの3人が、僕たちのことをどう思ってるかも聞きたいですよね。それは聞いたことがないので。
あさの 普通に聞いても、「感謝してます!」と言わざるを得ないでしょうしね。
 3人の本当の心が聞きたいです!

中盤くらいから考えていたラストの展開


あさの ラストの展開は、中盤の巻くらいを書いている時から何となく考えていたんです。だから、無理に話を引き延ばすのではなく、この物語にとって一番良いところで終わらせたいなとは思っていて。それが、このタイミングでした。
 あさのさんが終わり方を決めた時から、どこで終わるかという話はしていましたね。僕は、すべての作品には、その作品にふさわしい長さがあると思っていて。この作品も、その終わりが近づいているのかなという予感はしていました。読者の人も(超人気声優の)樹ヒナタが出てきたあたりからそれは感じていたのでは? 僕としても、ヒナタは出てきた時からラスボス感を見せられたら良いなと思いながら描きました。
あさの ラスボス感!?
 戦うわけではないんですけどね。物語の最後に関わる人が出てきたな、という大物感が出れば良いなって。正直、本編の中で一番華のあるキャラクターだと思っています。
あさの イヤホンズの3人、特に主人公の双葉は売れないことが悩みで。いつか売れたいというモチベーションで頑張ってきた子なんです。でも、大人気の声優は順風満帆で悩みも無く、超幸せにやっているかというと、そうとは限らなくて。売れた人には売れた人独特の苦しみや悩みもあるし、楽にやっている声優なんていない。そのことは、私がこの作品で描きたかったことの一つなんです。だから、人気声優のヒナタとの関わりを通して、主人公の双葉がまた一つ成長するという終わりにしたいとは、ずっと考えていました。自分で言うのもおかしいですが、完成したネームを観た時、「良い話だなー」って(笑)。
最後の夏コミ『それが声優!』原作者対談「握手だけじゃなくてハグもしています」
『それが声優!2017 Final 君に届くように』CD付限定版(2000円)。CDに収録されているイヤホンズの新曲「応援歌!」は、タイトルどおり、聴く人の背中を後押ししてくれるような1曲

イヤホンズのCD付限定版は増刷不可能!


あさの 『それが声優!』の1巻を出した頃の私に、「最終巻の特別版にはリアルイヤホンズのCDが付くよ」って教えてあげたら、びっくりするでしょうね。「リアルイヤホンズって何!?」って言うと思います。それくらい、想像もしてなかった素敵な展開になりました。
 今度、最終巻なんですという話を、キングレコードの(イヤホンズ担当)プロデューサーの平野(宗一郎)さんにしたら、提案してくれたんですよね。
あさの 平野さんはすごくアグレッシブというか、面白いことはフットワーク軽くやってくれるタイプの方で。「最終巻だったら、何かイヤホンズでできること無いですか? 歌とか付けるのはどうですか?」と言ってくださって。「お願いできるなら、ぜひぜひ!」という感じで実現しました。その後、私が書いた最終巻のプロットを送ったら、「ちょっと泥臭いくらいに『頑張れ!』って感じの曲はどうでしょう」という提案があって。良いですねーという感じで生まれた曲です。「応援歌!」というタイトルで、歌詞は私が書いています。
 すごく良い曲なんですよ。ずっと、その新曲を聴きながら、ラストの何ページかを描きました。たぶん100回くらいは聴いてると思います。
あさの 本編の最終巻の他にも、イラスト集とか、グッズとかいろいろと作っていますし、ぜひ会いに来て下さい。これが最後なので。
 僕も、先のことは分かりませんが、今のところ、今後コミケに参加する予定はありません。だから、ぜひブースに来て欲しいですね。今回は二人とも終了時間の16時までブースにいる予定です。
あさの みなさんに直接感謝を伝えられたらと思っているので。「もういないかな?」と思っても、ぜひブースの方に足を運んで欲しいですね。
 あと、これは大事なことなのですが。イヤホンズのCDが付いた限定版は増刷ができないので、絶対に限定版が欲しい方は、できるだけ早めに来てください。どれだけ望んでもらっても、今回作った分しか無いので!
あさの よろしくお願いします!
(丸本大輔)

後編に続く)
最後の夏コミ『それが声優!』原作者対談「握手だけじゃなくてハグもしています」
6月には2周年記念LIVE「月世界旅行楽団」を大成功させたイヤホンズの3人(左から、高橋李依、高野麻里佳、長久友紀)。声優としても、3人それぞれが多方面に活躍している

≪『それが声優!』完結&新曲「応援歌」発表記念、イヤホンズのからのメッセージ!≫


高野麻里佳(小花鈴役)
「祝・それが声優!完結!この作品に、鈴ちゃんに出会って、大変なのは私だけじゃないって勇気づけられました。夢を見て、現実を見て、不器用でも一歩踏み出そうとする皆様の人生が、笑顔で溢れる時間になりますように。聴いて下さい、応援歌!」

高橋李依(一ノ瀬双葉役)
「完結、おめでとうございます! そして、たくさんの出会いをありがとうございました。新曲は、『それが声優!』というバイブルを受け取った私たちからの、感謝を詰め込んだバイブル曲です! 受け取って下さい!」

長久友紀(萌咲いちご役)
「浅野さん、畑先生には感謝の想いでいっぱいです。これからもいちごと一緒に歩んで行きます。そして、この新曲は聴いてる方の応援歌になってくれると嬉しいです」