ソシャゲ、俳優、宝塚、ホスト……。生活必需品ではないところでモリモリお金を浪費する女性たちの声を集めた『浪費図鑑 悪友たちのないしょ話』
書籍版は8月8日に発売されてもう5刷。
9月1日からは電子書籍配信される。
推しにお金を注ぐ女たちののろけ話『浪費図鑑』お金を使って好きなものを全力で愛する人生は楽しい(男も)
劇団雌猫『浪費図鑑─悪友たちのないしょ話─』(小学館)。前から、化粧、アイドル、二次元キャラ、宝塚、ホストにハマっている、ということかな?

中に書かれている浪費話は明るいものが多い。借金話はない。
お金めっちゃ使ったよー報告は、推しとの蜜月(一方的だけど)の、のろけ話だ。

形のないものにお金を使う楽しみ


若手俳優に熱を入れる女性。たまたま「プレゼントBOX(イベントとかで設置されている)」に入れたマフラーを、その俳優がつけてブログに写真をアップして以来、彼をコーディネートするかのごとく高いプレゼントをするように。
「美少年を愛する老いたパトロン」のような気持ちとのこと。

乃木坂46に浪費する女性は、握手会にお金をかける。推しが自分のために時間をくれるから、というのもあるが、彼女は推しの子の夢を応援するために握手会にお金を注ぐ。その子の未来に、幸せの補助のために課金する、もっといえば「ほぼ母親」のような気持ち。

「何かが物が欲しい」から浪費しているだけではない。
お金を好きな相手・キャラ・ジャンルのために使うこと自体が楽しいのだ。


「推し」がいるから生きていける


「ホストクラブは現実逃避できる空間であり、私にとっては大好きな人に会える場所。恋愛感情なのかはわからないが、彼のことが好きという事実には変わりない。」「バイトでつらいとき、学校がだるいとき、彼からの連絡や彼と撮った写真、今までの思い出がわたしのお守りとなっている。」
ホストクラブに通う彼女は、担当を支えるためにお金をつぎこむ、というムチャはしていない。
楽しい時間をすごしてくれた感謝の気持ちとして、彼に還元する、という考え方。
恋愛や依存というより、お布施のようだ。

この本ではお金を使って好きなものを全力で愛する人たちは、楽しい人生を送っていると、伝えている。
ほっといても無くなるお金。好きなものを見つけて全力で意識して浪費し、お金をさらに稼ぐほうが人生楽しい。

ぶっちゃけ、使った金額が「正当な代価」と思っている人は、少ないだろう。
けれども「全くの無駄だった」とも、考えていない。

時間が経てば変わるもの


地下声優で浪費していた女性は、一回の朗読劇参加のためにトータル10万円、チェキ撮影のためBD8000円を3ループなど、すごい勢いで追いかけていた。
ところが、ちょっとしたきっかけで虚しさを感じ、現場に通うのをやめる。
「自分はお金を払って何を得たかったのだろう。形のないものにこそお金を払うのが楽しかったのに、その形のなさに、虚しさしか感じなくなった」

浪費は華やかで楽しい。一方、時がすぎると儚いブルース感も漂う。

ここまで極端に折れなくても、浪費生活から静かに足を洗った人は多い。
体力が持たないと気づいたり。結婚や仕事の関係で変えざるをえなくなったり。推しが辞めてしまったり。
もったいなかったと思うのか、今の糧となったと考えるのか。浪費に対しての姿勢で、意見が変わってくる部分だ。


時間をかけて、趣味のためにどうお金を使うか、冷静に模索する人もいる。
「触ってほしい一心で浪費する女」の項目では、優しく触られたいが一心でマッサージ店に月10万つかっていた女性の話が出ている。
お金を注ぐ推しはそこにはいない。生活を維持しながら、安くて最善の「優しく触ってくれる場所」を探す。

にしてもこれは浪費なんだろうか?
日常的に心を満たすための必要経費のように見えるが、ここは本人独自の考え方があるので、是非読んでみてほしい。浪費哲学のようなものが見えてくる。


男性版「浪費図鑑」はどうなるのか?


もしこの形式の「浪費」を、男性版で作ったらどうなるのだろう?
アニメやアイドルファンは、あんまり変わらないかも。
聖地巡礼だと「ユーリ!!!on ICE」にはまってロシア遠征する女性と、「ガルパン」の戦車を見るために世界をまわる男性の心理は、多分同じ。

異なるのは、おそらく3つ。
「コレクション」への執念は、男性の方が強い傾向にある。なんでも鑑定団に出てくる骨董おじさんみたいな感じ。
また、男性は性的要素を含んだサービスに対して、財布がゆるみやすい。
そして、アイドルにしろ俳優にしろ、女性は現地に行く際、自分の服や化粧や髪のセットにお金がかかる。

改めて表紙を見る。
彼女たちは好きなことにお金を使って、とても楽しそうだ。
同時に、洋服、化粧、美容院と、自分の容姿を整えている。本文でも容姿を「平均基準を保つ」話は出て来る。
生活費、身だしなみ、そして推しにお金を注ぐために、浪費女子たちは働き、経済を回す。

(たまごまご)