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10月5日、新宿FACEにて開催された長州力‐高田延彦トークショー。話題はようやく、「噛ませ犬発言」~「ユニバーサルプロレス旗揚げ」辺りの時代にまで辿り着きます。
どうぞです。


【長州力の大名言・「俺はオマエの噛ませ犬じゃない」について】
――これは革命の最初の言葉って言われてるんですけど、調べてもこのフレーズを言った事実が残ってないんですよね。紙面には残っているんですけど。これは、試合後に残したコメントなんですか?
長州 いや、これはマスコミが(勝手に)書いたことです。
――マスコミが書いた! それ、歴史教科書が書き変わりますよ(笑)。
長州 感情はね、それ以上の感情で喋ってたから。
たぶんマスコミがそういう具合に、パッと書いたんじゃないかな?
――じゃあ「噛ませ犬じゃない」っていうマスコミが表現した言葉そのものは、俺の今の思いと合致してるぞっていう気持ちはあったんですね?
長州 ……ああ、やっぱり言ったかもわかんない。
(場内爆笑)
――やっぱり、言ってんだ!
長州 いや、でもそんな名言でも何でもない。
――名言でしょう! これにどれだけ奮い立った人がいるか。しかもそれを、試合中に押し通すっていうことは。僕もたけし軍団の徒弟制度の中で、兄弟子に吠えられる場所は舞台の上しかなかったんですよ。24時間奉仕してる虫ケラのような人間でも、面白いことさえ言えば誰にも邪魔はできないんだっていうのがわかってて。
だから舞台の上の漫才だけは、本当に尖ってるんですよね。初期は。それとプロレスラーも同じで。

【「名勝負数え歌」とアントニオ猪木】
――上司(藤波)に対して「おまえのタッチは受けない」という思いをぶつけ、張り倒していくわけじゃないですか。その同調圧力を振り切る勇気って、すごい要りますよね。「どうなってもいいよ!」、「明日クビになってもいいよ、俺は!」っていう気持ちで行くんですよね。

長州 たぶん、藤波さんもどこかで(長州を)意識してたと思うんですよ。だから“やりきれない気持ち”がスパークしたその時に、もう周りは見えないというか、うん。猪木さんは「よくやった」と思ってるんじゃないですか?
――試合中に、その異変を見てるわけですからね。じゃあ弟子たちが急に反乱というか仲違いを始めているのを「うん。いいぞ、いいぞ」と思って見てるわけですか。
長州 まあ選手は競い合って頑張ってるわけですけれど、感情を表に出す表現っていうのかな? 新日本のカラーっていうか「ようやっと、こういうのが出てきたな」って部分では、やらしてやろうというか。


【「噛ませ犬発言」をセコンドで見ていた高田延彦】
――高田さんは、この試合を見ていたんですか?
高田 見てたと思います。で、あそこから尻すぼみになっていく事って、あるわけじゃないですか。
――なるほど、一瞬だけ。
高田 噛ませ犬発言は、確か後楽園ホールでしたよね。で、あそこからドンドンドン、エネルギーが下がっていくっていうね、よくありますよね。ところがあそこがピークじゃなくてね、あそこから上がっていったのが凄いなと。
これはいくら周りが応援したって、本人に惹き付けるとんでもないエネルギーがないと。
――プロレスのアングルって、自然発生的にできるものと、人工的に作るものもありますけど、それを持続するエネルギーがどこまで続くかって、プロレスそのものですよね。
高田 いくらお膳立てしても、それはできないです。本人にその力が無いと。リング下で、長州さんが「ガッ!」と化学反応じゃないけど変化した瞬間を僕は見てるから。
――その当時では、もう(長州は)話しかけられない存在ですか?
高田 いや、だから! だって、トータル5分だから。
「山崎はイイ、おまえ辞めろ」で、あれで3分行ってるから。あと2分しかない。
(場内爆笑)

【「舌出し失神事件」と付き人・高田延彦】
高田 あの時、僕、一緒に救急車に乗って病院行きました。付き人だったんで。
――その翌日ですよ、警察に捕まったんですよね?
高田 誰が(笑)?
――高田さんです。
高田 ……捕まっちゃったんですよ。
――猪木さんが絶対優勝すると思ってたのにできなかったので、仲野(信市)と一緒にヤケ酒飲んでたんですよね?
高田 優勝じゃなく、運ばれちゃったんですね、猪木さんが。で、ちょっと心配になっちゃって、終わり方も良くなかったし、溜まってたんです。あれ、最終戦だから。最終戦の後の数日って、みんなで飲みに行くわけですよ。で、たまたま飲みに行った時、前日の試合のガッと濃いストレスが全部出ちゃったんですね。そこで、たまたま知らない人にチョッカイ出されるんです。で、「ダメだよ」って言ったら、相手がケガしちゃったわけです。
(場内爆笑)
高田 一泊一食でした。
――でも、最後まで自分の職業を「プロレスラー」って名乗らなかったわけですよね?
高田 そうです。取調室に入った瞬間、ワンワン泣いて。「昨日、猪木さんがあんな目に遭ってるのに、下っ端の俺たちは何してんだ? 新日本の看板背負って」と。これで、もし会社に傷がついたらどうしよう、って。刑事さんの前で、ずっと泣いてたんです。したら「お前ら、猪木さんの若い衆だろ?」って言われて、またバーって涙出てくるんです。
――それまではプロレスラーって言ってないのに、相手は知りながら調書取ってて。
高田 そう。いつも俺は「ドリルで穴掘ってる」って言ってたんだから!
(場内爆笑)
高田 「ガタイがいいな」って言われてたんだから。
――肉体労働って偽ってたのに、その刑事さんは全部知りながら……。
高田 で、「わかった」と。「示談に何とか持って行くから。お前ら、反省してるし。言わないよ」って言われて、それで済んだんですよ。

【猪木に目をかけられ、一緒に登山した高田】
――猪木さんと、見延山に一緒に行ったんですよね。
高田 それまではほとんど会話無かったのに、僕が目指していたダイナマイト・キッドという選手とタイトルマッチを組んでくれたんです。そして、その試合でいい試合ができるように、勝てるように「一緒にお参りに行こう」って、二人で見延山に行っちゃったんですね……。
――猪木さんが山ごもりに連れて行くっていうのは、お気に入りっていうか将来がある人しか連れて行かないって事を言われるんですよ、周囲の人にね。当時、もう猪木さんとは交流が無く、藤原さんや前田さんとの付き合いの方が多かったのに、猪木さんを惚れ直すっていう……。
高田 そうですねぇ。……長州さん、どうしました?
(場内笑)
――長州さん、“男惚れ”ってあんまり無いから。だってこの前、高田さんとで話したら「今、猪木さんが現れたら、直立不動で」……
高田 靴べら渡しますよ! だって、まず入るスタンスが僕と長州さんとは違ってたから。僕は完全に猪木一辺倒じゃないですか。長州さんは憧れてるレスラー一人もいなかったから……。
長州 (遮って)いや、僕も挨拶するよ!
(場内爆笑)
高田 そんな事、聞いてないですよ。
――そりゃ挨拶はしますよ、誰だって!
今でも高田は、猪木に会うと心臓がバクバクするという。

【藤原が箸を使い、強引にユニバーサルプロレスへ誘う】
――そんな猪木さんにもう一回惚れ直したにもかかわらず、山から降りて道場に戻ったら「お前、ユニバーサルにする? 新日にする?」って藤原さんから。
高田 箸でね。
――箸を立てて、「こっちに倒れたらユニバーサル。こっちに倒れたら新日本」って。
高田 今考えたら、ひどい話でしょう?
(場内爆笑)
高田 こっちがユニバーサル、こっちが新日本。で、わざとユニバーサルの方に何回も倒すんですよ。そして藤原さんが「俺は、じゃあユニバーサル。じゃあ、今度お前(高田)の見てみようか?」ってやると、ユニバーサルなんです。……ハァ。(ため息)
(場内爆笑)
――長州さんは、その頃ってもう新日本を飛び出して全日本に行こうとしていたわけじゃないですか。
長州 あぁ、うん。
――第一次UWFって基本路線は新間さんが画策して、猪木さんが動くっていう大前提があったわけで。それ、高田さんは知らないんですよね?
高田 全っったく、知らないです! ずいぶん後になってから、そういう話を聞きました。
長州 (高田に向かい)しかし、新日は誰が動かすつもりだったの? 坂口さん?
高田 ……いや、知らないです。
(場内笑)
高田 真相は、僕全くわかんないです。
長州 僕も、そこまではわからないですよ。
――だから2グループとも、割と無責任な行動なんですよね。
長州 いや、僕達の方がまだ、辞表出すから。筋は通ってるんですよ。
(場内笑)

【長州による鶴田、天龍の印象】
――第一次UWFの頃、長州さんは全日本の方にいたわけじゃないですか。「全日本とはイデオロギーの闘いをしたい」って仰って。「俺たちはロックで、あいつらはワルツだ」っていう風に全日本を言うんですよね?
長州 それは、マスコミでしょう。
(場内笑)
――でも、どうでした全日本は?
長州 あの、インパクトを取るのは全然楽でしたね。
――最初から、インパクトがありましたからね。
(ここで客席から「ジャンボはどうですか?」という声が)
長州 あぁ、鶴田先輩は本当に凄い。
――フルタイム闘った時ね、長州さんがジャンボの耐久力、スタミナを……。
長州 (遮って)もう、全然! やっぱり、鶴田さんの方が凄かったですよ。
――でもアマレスの時は、シンデレラ・ボーイであるジャンボ鶴田より実績のある自分の方が絶対強かったと思ってたわけじゃないですか。
長州 そうですね。でも、僕はあの人のペースに合わせちゃうと絶対ダメなんですよ。だから僕は常に動くタイプなんだけど、自分のペースには入れさすことができなかったですね。それで、しんどい思いにはなりましたよね。
――「もう一回やりたい」には、ならなかったですか?
長州 あぁ、僕はもう二度とやりたくないですね。要するに、流れが絶対合わないというか。流れの奪い合いはやってるんだけど、やっぱりそれは崩せなかったですね。
――その点、天龍さんは自分の中でビッチリ合う?
長州 源ちゃんは、楽ですね。
――楽!?
長州 本人が聞いたら、傷付くと思いますけどね。俺にとっては、そんなに難しい相手じゃない。
――そういう意味じゃ、鶴田戦で名勝負を作る方が難しいっていう気持ちなんですか?
長州 難しいです。あの人のペースでやっちゃうと、僕はもう完全に自分のキャラは無いです。
――鶴田さんと長時間の闘いをやると、相手が時々隠れて吐いたりしてましたもんね。息が上がって「ウエッ」って。ブルーザー・ブロディがジャンボさんのスタミナに呆れて、ダイエット始めたっていうね。
長州 あるかもしれませんね。
――「あるかもしれません」って、長州さんの本で読んだんですけど。
(場内爆笑)
長州 ……僕がそんなこと言いました(笑)?
――書いてあるんで。しかもそれ、喋ってるんで(笑)。言ってるとしか。

【血タンが出る毎日が嫌で、メキシコに“逃げた”長州】
――全日時代は、長州さんはハンセンに勝つっていうのは感慨深いものがあったじゃないですか?
長州 僕、一回も勝ってないですよ。
――……いや、勝ってますよ。
(場内爆笑)
――ハンセンに勝ってPWFヘビー級を奪ってます。
長州 本当に!?
――そこまで歴史は書き換えられませんから! というのも、(長州が)ハンセンのラリアットを一番喰らった人ではないかっていう。
長州 あっ、それは間違いないですね。宿に帰ると、絡んだタンをバーっと吐くわけです。それが全部血ですからね。これはちょっとしんどいなと思いましたね。だからその後、僕はメキシコに逃げたんです。
――メキシコに“逃げた”って表現は、あまりにもハンセンのラリアットを喰らう役が嫌でっていうね。
長州 毎日ですからね。
(寺西ジャジューカ)

PART3へ続く