定例記者会見や横浜市とのタイアップイベントなど、エキレビ!でもたくさんの記事を上げてきた「映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち」(3月17日公開)。公開を記念して、梅澤淳稔プロデューサーと志水淳児監督へのインタビューを2回に渡ってお届けします。


打ち勝つのは愛しかない

ーー歴代プリキュアが大集合する映画最新作「映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち」。今回、映画初のオリジナルプリキュア、キュアエコーが登場しますね。
梅澤 前作「プリキュアオールスターズDX3」(2011年3月公開)で、「全員集合はこれで最後」という宣伝コピーでした。もう一度「オールスターズ」をやるときは全く新しくしないといけない。
ーー「DX」から「NewStage」にリニューアルしたということをわかってもらうための方法として。
梅澤 はい。
28人のプリキュアたちが、ひとりの女の子の背中を押す。そして、その女の子がプリキュアになるというストーリーにしました。
ーーそれが映画のキャッチコピーの「女の子は、誰でもプリキュアになれる!!」。今回はそれまでの「DX」シリーズとは違い、プリキュアたちではなく、エコーに変身するあゆみを中心にしたストーリー展開になっています。あゆみはどういうキャラクターとして設定していったんですか?
梅澤 「プリキュア」を観ている子どもたちが幼稚園で日々考えていることを、中学生のあゆみに投影しました。「いっしょに遊ぼう」と言えない、「ごめんなさい」とすぐに謝れない、そういう子どもたちを反映しているキャラクターです。
これがうまくいけば、新しい「オールスターズ」の形になるかなと思いました。
ーー「NewStage」には「プリキュアオールスターズDX1」にも登場した敵、フュージョンがもう一度登場していますね。オープニングでプリキュアに倒されたあと散らばっていった。そのかけらがフーちゃんとしてあゆみと行動を共にする。今回、フュージョンを出したのはなぜ?
梅澤 「DX1」のフュージョンは、攻撃をすべて吸い込んでどんどん巨大化していく敵でした。どんなものでも飲み込むような敵にかなうわけがない。
「DX1」では友情や絆の力で打ち破ったんですけど、二度と同じ手は使えないんです。大きな力にはより大きな力で対抗するということになるのはよくない。そういった力に打ち勝つのは愛しかないんです。
ーーフュージョンのかけら、フーちゃんは、あゆみが何気なく言った「全部消えちゃえばいいのに」という発言で、世界を消し去ろうとしてしまいます。
梅澤 そうですね。フーちゃんはほんとうに純粋な存在で、それも幼稚園の子どもたちの一部を反映しているところもあります。
純粋なのでなんでも飲み込んでしまう。あゆみの思いも飲み込んでしまった。それに対して、違う! と止められるのはプリキュアではない。だからキュアエコーが必要なんです。

しゃべることだけが存在感を表すことではない

ーー「DX」シリーズはそれまで「キラキラkawaii! プリキュア大集合♪」をアレンジして毎回使用していました。今回は楽曲もリニューアルして、工藤真由さんが歌う「プリキュア〜永遠のともだち〜」
先日、工藤さんにインタビューしたときに「伝説のプリキュアの曲をつくりたい」と言われた、とおっしゃっていました。
梅澤 はい。「プリキュア」は毎年シリーズが変わり、キャラクターもテーマも変わります。もちろん、主題歌も。そうではなく、「そもそもプリキュアとはこういうものだ」ということをテーマにした一曲をつくりたかったんです。そのあとに各キャラクターや番組のテーマがあるというコンセプトにしたい、というのが最初の発想です。

ーーなるほど。「キラキラkawaii! 」は、「DX1」「DX2」「DX3」と使われていますけど、毎回同じではなく、詞や曲にアレンジをしていますもんね。コーラスにもそのときの「プリキュア」のタイトルが入っているから、ある意味過去になっていってしまう。
梅澤 そうなんです。それまでの「プリキュア」の曲は「いっしょにがんばろう」という応援ソングなんですけど、「プリキュア〜永遠のともだち〜」を聴けば「プリキュアとはこういうものだ」ということを説いている。いわば上から目線と言っていい。
ーーついて来い、という。
梅澤 というより、「プリキュアはこうだけど、みんなはどう?」という感じです。もし、次の「オールスターズ」があるとしたら、そのときにも使いたいですね。
ーーあるんですか?
梅澤 いやあ、まだわかりませんよ(笑)。
ーー「NewStage」ではシリーズ最新作の「スマイルプリキュア!」と前シリーズ「スイートプリキュア♪」がクローズアップされています。「DX」シリーズから考えると、全シリーズを平等に出さないという決断はすごく大きかったのではないかと。
梅澤 ただ、全シリーズ扱ってはいますからね。「オールスターズ」の目的のひとつとして、現行の「プリキュア」を後押しするということがあります。
ーー「NewStage」では「スマイル」ですね。
梅澤 もうひとつは終わったばかりの「スイート」は子どもたちに馴染みがあるだろうから、このふたつのシリーズをフィーチャーして、ほかはサポートにまわる。「NewStage」ではプリキュアが28人いますから、全員にしゃべる場を用意すると大変なことになってしまう。
ーー「ふたりはプリキュアMaxHeart」「ふたりはプリキュアSplash☆Star」「Yes!プリキュア5GoGo!」の3シリーズが今回、途中から助けにくる。しゃべらない「伝説のプリキュア」というポジション。
梅澤 しゃべることだけが存在感を表すことではないんです。だからアクションを志水監督にがんばってもらいました。
ーー「NewStage2」があるとしたら、順番的にいって次は「フレッシュプリキュア!」が「伝説」扱いになるのかなと。
梅澤 そう思うでしょう? みなさんそう思うだろうから、裏をかきたいですね。たとえば「MaxHeart」だけの話になるかもしれない。もし私がやるとしたらですけどね。
ーーおお。
梅澤 声優のみなさんも「私たちはもう二度と呼ばれないだろう」と思っているでしょうから(笑)。その裏をかいて「いやいや、次はあなたたちですよ」とかね。まだわからないですけどね

新しい「オールスターズ」ということを認知していただければ

ーー「NewStage」は横浜市とタイアップキャンペーン(「横浜でプリキュアに会おう!!キャンペーン」)を実施しています(3月10日〜4月8日)。作中にもリアルな横浜の風景がすごい出てきています。この企画は最初から?
梅澤 横浜を舞台にするということは、企画当初からありました。フュージョンと同じように、「DX1」と同じ舞台にして、もう一度新しくはじめるということをコンセプトにしていました。
ーータイアップありきだったわけではない。
梅澤 あとからなんですよ。「マリンタワーをポキンと折っていいですか?」とか「氷川丸を陸上に上げていいですか?」という問い合わせを個別にしていたんです。
ーーへえ、別々に話をするものなんですね。
梅澤 そうなんです。話を進めていくうちに、「じゃあ街ぐるみでやりませんか?」という話になりました。
ーーそうだったんですね。
梅澤 「NewStage」は昨年秋に公開された「映画 スイートプリキュアプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪」のころに企画しているんです。「映画スイート」では、ポスターではじめてキュアミューズを出して「これは映画オリジナルのプリキュアかな?」と思わせた。そして、映画公開直前にキュアミューズをテレビに登場させて子どもたちを驚かせた。今回はその逆ですね。ポスターにキュアエコーを出して、「『スマイル』に登場するプリキュアかな?」と思わせたけど、出てこない(笑)。
ーー裏をかくというのが梅澤さんのキーワードなんですね。
梅澤 その上で楽しませたいですね。せっかくリニューアルするので、新しい「オールスターズ」ということを認知していただければいいなと思いました。
ーー「NewStage」はどういう風に観てもらいたいですか?
梅澤 子どもたちが、あゆみみたいに一歩踏み出せるようになればいいですね。幼稚園でおはようと言ってみたり、悪いことをした子に「それはよくないんだよ」ってちゃんと言う。それで嫌いになるんじゃなくて、そのあとにまた仲良くなってくれれば、と思います。お父さんとお母さんからも、それを子どもに伝えてくれればな、というのが私の理想ですね。
(加藤レイズナ)

志水淳児監督編はコチラ


●プロフィール
梅澤淳稔(うめざわ・あつとし)
1960年2月21日生。東京都荒川区出身。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)を卒業後、東映アニメーション入社。演出家として数々のアニメを担当し、「ご近所物語」「神風怪盗ジャンヌ」などのシリーズディレクターを務める。2003年プロデューサーに転身。2007年「映画 Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」でプロデューサーとして「プリキュア」初参加。2009年「フレッシュプリキュア!」からテレビシリーズのプロデューサーも担当し、現在「スマイルプリキュア!」を手がけている。