『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』がついに公開されましたね。見に行かれましたか?
個人的には『Q』は二回見ることをオススメします。

一回目は「??????」と流されるがままに見るのが吉。
映画前にはネタバレは避けまくりましょう。パンフレットは特に、絶対見てはいけない。
この映画は、何も知らずに落下する気分で見たほうがいい。
二回目に見ると、カチカチとわからなかったパズルのピースがはまって、つながっていきます。
この「あっ、そういうことか」感が、快感でならないんだ。

ネットでは既に色々な解釈がされており、「旧版のループなんじゃないか」説や「旧版で選んでない選択肢を選んだらこうなったんじゃないかパラレル」説など、飛び交っています。
楽しいですねえ、この感覚。

『序』や『破』に比べると、明確にヒロイック方向のエンタテイメント性は減っています。
しかし、旧劇場版よりははるかにわかりやすい「謎」と「ヒント」がたくさん隠された作品。
この「謎」そのものが「ヒント」になっていて、そのヒント自体は割とはっきり出ている。つなぎあわせていくと非常に楽しいです。

もちろん「わかんねー! 続きはやく!」という楽しみ方も、あり。
わざと隙を晒している部分もあるので、まずはなにはともあれ劇場へ飛び込め!

あ、絶対に『序』と『破』は事前に見てから行きましょう。じゃないと絶対何もわからないです。
ぼくはもう、アスカが大活躍していたのでそれだけで大満足です。
アスカかわいいよねー。

あと、新キャラのあの子がね! 
すごいかわいくてね! あの子が! 
ああ、名前すらネタバレになるので書けねえよ!


ところで、『Q』の予告映像として、ピアノのトレーラーが流れていたのはご存知でしょうか。

3Dのレイヤーを使ってピアノ演奏時の中の映像をほぼ完全に再現しているという、なんとも謎だらけな上に、技術なんてところに投入しているのと突っ込みたくなるティザームービーでした。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 公式サイト│ムービー
これの一番下の映像です。
わけわかんないですよね。なんだよこれ!
でもエヴァだしなー、と思っていたら、ちゃんとこれ意味のある仕方で使ってきました。
この映像覚えておくとちょっと見ていてニヤっとできます。

この曲のタイトルは『Quatre Mains(bande-annonce)』
公式サイトで発表されています。
フランス語で直訳すると「4本の手」。意味は四手連弾です。
におわせてきますね。映画を見た人なら、既に何を指すかはお分かりかと思います。アレとアレです。


ちょっとだけ連弾について触れておきます。
「連弾」とは、一台のピアノを二人で演奏すること。
ピアノ自体は88鍵なので、並んで4つの手で弾くことが可能なため、生まれた技術です。

一人で弾くんじゃなくて二人で弾いたら、簡単でしょう?なんて一瞬思っちゃいますが、とんでもない。
それぞれ二人が主声部にあたる二つのパートを同時に弾くので、曲によっては腕が交差したり、鍵盤がかなり近くなったりして実は難しい。エヴァ的に言うと二人がシンクロしないといけません。

右に座った人が第一奏者「プリモ」、高音部を演奏します。
左に座った人が第二奏者「セコンド」低音部ですね。
公式サイトの予告映像を見ると、誰がどっちを弾くか確認できますよ。

あの予告映像の曲が、一人ではなく「連弾で演奏された」と思って聞くと、グッといろんな物が見えてくるはずです。
映画を見た方ならなおのこと色々気付かされる曲になっています。
ちなみに、『Q』で使われているピアノは「ヤマハグランドピアノ CFIII#4831800」
お値段ですが、ネット価格で4,980,000円です。
たっけえ! あ、でもグランドピアノならそんなもんか? いや高いですよ。
ニューアイボリー(人工象牙)じゃなくて、ほんとの象牙なのですね。

そうそう、気付かされるといえば、金曜ロードSHOW!で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が公開されたとき、『Q』の最初のシーンが6分38秒ほど公開されましたが、実はあれはそのまま上映されてはいません。
ある曲が追加されています。
その曲が何かは書いてしまうと楽しみが減るのでここには書きませんが、先程の『Quatre Mains』が連弾を意味するとしたら、それとある意味つながっている曲なので、劇場で聞いて確かめてください。

あわせて、『破』で使われていた曲で、オリジナルではないものをいくつか紹介しましょう。
これを知っていると、『Q』がちょっと楽しめます。

水前寺清子『三百六十五歩のマーチ』
『破』の冒頭でマリが仮設の5号機を操縦しながら歌っていた鼻歌。センス毎回渋過ぎますね。
実際に発売されたのは1968年です。

ピンキーとキラーズ『恋の季節』
同じく『破』で、加持さんとミサトさんが沖縄居酒屋で飲んでいるシーンのBGM。
やたら目立つ曲なので、すぐ気づくと思います。
同じく、1968年。

『Fernando Sor:Variaciones sobre un de Mozart, Op.9』
「フェルナンド・ソル『モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲』作品9」。
これは『破』でレイとゲンドウが食事をするシーンで使われた曲です。
えっ上2つと関係ないじゃん、と思われるかもしれませんが、実はこの三曲は『怪奇大作戦』で使われているのが、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 完全補完文書』の中で指摘されています。
旧エヴァ(TV版)は様々なパロディを盛り込んだ作品でしたが、実は新劇場版もちゃっかり盛り込んでいます。
今回の『Q』でもその精神は生かされていて、『ふしぎの海のナディア』のBGMをセルフパロディにいくつか使用したりしていますので、確かめてみてください。

その他に『破』で使われていたのが、森山良子『今日の日はさようなら』(1966)、ザ・ピーナッツ『ふりむかないで』(1962)、赤い鳥『翼を下さい』(1971)など。
とにかく古い。曲が古い。
『Q』冒頭の曲も、相当に古いです。1972年です。……まだネタバレじゃないよね。

『Q』はセリフの中の単語、表情、様々なアイテム、色々なものに情報が詰まりまくっています。
その一つとして、音楽はちょっと注意しておくと面白いです。
サウンドトラックも間もなく発売されますので、そちらもチェックしてみてください。ピアノ演奏フルバージョンがあったら聞きたいなー。
加えて、以前記事にも書いた、S-DATテープが地味に重要なので、こちらの記事も参照しておくと、見た時色々気づくかもしれません。
今夜金曜ロードSHOW「ヱヴァンゲリヲン:序」シンジくんが聴いていたカセットテープの謎(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース
このカセットプレイヤー一つで、随分色々人間関係や感情を表現できるものです。すごいね。
そもそも、DAT(デジタルオーディオテープ)はもちろん、カセットテープ自体も今使ってないですもんね。
60年代、90年代、そして00年代から10年代。
エヴァとヱヴァはいろんな物を、「音」という手法でかき混ぜながら、クライマックスに向かっていくようですよ。


『Shiro SAGISU Music from“EVANGELION 3.0”YOU CAN(NOT)REDO.』サウンドトラック

(たまごまご)