祝「たまゆら 完結編(仮)」製作決定!
TVシリーズ第2弾「たまゆら~もあぐれっしぶ~」の放送終了から約9か月。
8月3日(日)の「たまゆら祭2014」で、「たまゆら 完結編(仮)」の製作決定が発表されました!
高校入学を機に広島の竹原へと引っ越してきた写真大好き少女の沢渡楓と、親友の塙かおる、岡崎のりえ、桜田麻音。
瀬戸内の美しく優しい町で、一緒に成長してきた4人もついに高校3年生。2015年の春から全国の映画館で上映される完結編4部作では、楓たちの卒業までを描いていきます。
同時に、OVAからキャラクターデザインを担当してきた飯塚晴子さんが「たまゆら」シリーズでは初めて、総作画監督として本編の製作にも参加する事が発表されました。
全国の「たまゆら~」(たまゆらファン)と同じく、続編製作決定を心待ちにしていた「たまゆらいた~」の筆者。発表されたばかりの完結編について、原作、シリーズ構成も務める佐藤順一監督と、飯塚晴子さんから、お話を伺ってきました!

楓たち4人の卒業を見届けることができて良かった

―――ついに新作の製作決定が発表されました。今の率直な感想を聞かせて下さい。

佐藤 一言で言えば嬉しいですよね。卒業まで見届けることができて良かった。そういう気持ちです。
飯塚 本当にありがたいなと思いました。最初のOVAを合わせたら4期目。昨今、こんなに長く続くシリーズってなかなか無いじゃないですか。
本当にファンの皆さんの思いのおかげですよね。それに、プロデューサーの田坂(秀将)さんたち、スタッフの皆さんの強い思い入れも感じます。
―――2期「もあぐれっしぶ」の放送終了から、完結編製作が決定するまでの間は、どのような状況だったのでしょうか? 
佐藤 決定するためには、いろいろな事情もかかわってくるので、田坂プロデューサーからは「絶対にやりたいですが、決まるかどうか……」と脅され続けていました(笑)。
―――決まって良かったです! 飯塚さんはどうでしたか?
飯塚 「もあぐれっしぶ」の時もそうだったんですけど。「90%くらい確定しているんですけど、あと10%がまだ……」みたいな状態がすごく長くて。
佐藤 一番、困るやつですね(笑)。

飯塚 でも、完結編ということはこれで「たまゆら」も最後じゃないですか。だったら、絶対に自分でやりたいと思って。すごく頑張って、ずっとスケジュールを空けて待ってました(笑)。
佐藤 一応、僕の方からも飯塚さんにはお願いしていて。「空けておいてね。でも、もし無くなったら、ゴメン」と(笑)。

―――そういった調整もあって、今回、「たまゆら」では初めて総作画監督を務められることになりました。
飯塚 スケジュールの関係で、これまではほとんど視聴者でしたから。最後は参加して終わりたかったし、そうじゃなきゃ駄目だと思っていました。
―――2期でオープニングとエンディングに参加された以外は、基本的に他のスタッフさんが作られた作品を観てきたわけですよね。
飯塚 はい。良い話だな~って(笑)。

佐藤 キャラデザだけで現場にはほとんどタッチしないって、あまり無いことですよね。
飯塚 はい。しかも、オリジナル作品なのに。
―――完結編では、飯塚さんの描いた楓ちゃんたちが動く姿を、本編の中でも観られるわけですね。
飯塚 たまゆら~の皆さんには、「今までと絵が違う」って言われそう。「前の方が良かった」とか……(笑)。

―――いえいえ、絶対にみんな楽しみにしていますよ(笑)。完結編の製作決定発表とともに公開されたキービジュアルも飯塚さんが描かれたものですよね。どのようなイメージで描かれたのでしょうか?
佐藤 ラフは僕の方で描きました。完結編のラストは卒業なので、それをイメージしたビジュアルが欲しいなと。桜の花の下で4人が一緒に並んでいるというイメージは最初からありました。
―――最初のビジュアルで、ゴールを見せてしまおうというわけですね。
佐藤 ええ。卒業をしっかりと見送って終わるぞ、ということです。
飯塚 OVAの一番最初のキービジュアルと並べると感慨深いですよね。横位置で、桜があって。
佐藤 あ~はいはい。
飯塚 え? あの絵とかけていたんじゃないですか?
佐藤 いや、全然(笑)。
飯塚 深読みし過ぎた……。
―――4人の中で、のりえちゃんだけが泣いてるんですよね。
飯塚 そうなんですよ。
佐藤 いつもにぎやかですが、涙もろいところもある子なので。
―――楓ちゃんは、少しキリッとした表情で前を向いていて、主人公らしい雰囲気です。
佐藤 それを隣で見守るかおたんの目線。そして、すでに遠くを見ている麻音(笑)。
―――ホントだ。この麻音ちゃんは、何かを暗示しているのですか?
飯塚 きっと、まだ何も決めてないんですよ(笑)。あれもしたい、これもしたい、どうしようかなって。

描きながら感情移入していくので、最後の方は魂が抜けそう。

―――完結編のストーリーについて、監督はまだ話せないことだらけだと思うのですが……。
佐藤 そうですねえ。
―――飯塚さんは、こんなシーンを描きたいといった願望などありますか?
飯塚 たぶん、完結編のお話ではガンガン泣かされるんだろうなと思っているので、良い表情が描けたら良いなと思っています。
―――監督のハードルが上がりましたね(笑)。TV放送ではなく、劇場で上映するということで、絵作りの面でも意識は変わっていたりするのでしょうか?
佐藤 綺麗な背景を見せられる作品は劇場映えするので、元々、劇場に向いてる作品ではあるんですよね。さらに、キャラクターの日常描写のところも、どれくらい劇場向けの良い絵にしていけるか。そこはテレビと少し違うアプローチにはなりますね。
―――これは、この取材にも立ち会って頂いている田坂プロデューサーにお伺いしたいのですが。なぜ今回の「完結編」はTVアニメではなく、映画館で上映されるのですか?
田坂 これまでTVアニメでも、映画館でのイベント上映をたくさんやってきたのですが、今回は完結編ということで。もっと広いエリアで、これまで「たまゆら」を応援していただいてきたたまゆら~の皆様が一緒に楽しんでいただけるよう、劇場での上映という形にさせていただきました。
―――来年春からの上映、たまゆら~として非常に楽しみではあるのですが、「完結編」ということで、楓ちゃんたちの物語が終わってしまう寂しさも感じます。佐藤監督と飯塚さんも、そのようなお気持ちはありますか?
佐藤 旅立ちの時に寂しいのは当然のことですけど。それって、それまでの時間が幸せだったからこそ。最後ということに、あまりネガティブな気持ちはなくて。それも含めて良かったなと思えるラストにしたいと思っています。
飯塚 私はむしろ、今から入って行く感じなので……。
佐藤 入学編みたいな?
飯塚 ずっと観てはきたんですけどね。やっぱり、キャラクターのいろいろな表情を描いて関わっていくことで、どんどん感情移入をしていっちゃうので。最後の方とか、たぶん魂が抜けそうです。というか、抜けるくらいに頑張りたいですね。
佐藤 卒業まで作れる場合には、こんな感じのシーンを見せたいという漠然としたイメージは前からあって。そこは、今もあまりずれてはいません。
飯塚 それは、OVAの頃からですか?
佐藤 そうです。細かなキャラクターの目標やエピソードは全然白紙でしたけどね。
飯塚 すごい!
佐藤 そのシーンは、OVAの中で描いても良かったかもしれないし、「hitotose」で描いても良かったかもしれない。でも、あえてやらなかったのは、一番最後に持っていこうと思っていたから。それはちゃんとやる予定です。
―――どんなシーンか楽しみです。
佐藤 泣かせにいくやつです(笑)。それで、ずるいと言ってもらおうかなと。完結編で全部を出し切る予定です。
―――「たまゆら」以外の作品でも、ずっと先のラストをイメージされていることはあるのですか?
佐藤 常にラストのイメージはあるんですよ。漠然とですけどね。そこから大きくずれることって、実はあまりないんです。特に長期シリーズの場合、いろいろなエピソードに寄り道するので、この子は何をする人ですというスタートとゴールは最初に決めておく。短いシリーズだと、意外に全然違う着地点に行ったりする事もあるんですけど。「たまゆら」も、たまに「全然違う着地点へ行くのかな?」と思う事もありましたが、今は、やっぱり思っていたところに行くなと確信している感じですね。
飯塚 楽しみです。ちゃんと物語のラストが決まっていることって、すごく大事というか。見終わった後の開放感が全然違うじゃないですか。
佐藤 たしかに、そうかもしれないですね。
飯塚 なりゆきで、こういうラストになっちゃった、ではなくて、ラストに向かっていく物語は、やっぱり見ていて気持ちが良いので。「たまゆら」でも、それを体験できるのが嬉しいです。それは、たぶんファンの方も一緒だと思いますけど。
佐藤 そういった期待をしてもらえると嬉しいですね。「あのことがここに繋がっていたんだな」とか、そういうことを感じられるはずです。

いろんなものを整理して、身を軽くして完結編に臨みたい。

―――卒業が近づくと昔のことを思い出したりするものですが、「たまゆら」に関して、特に印象的だったできごとはありますか?
佐藤 「たまゆら」はイベントも多かったので、その記憶が濃いですね。
飯塚 多いですよね(笑)。
田坂 「たまゆらの祭り2014」のコーナーで使うため、資料にまとめたのですが、今のところ全部で73回です。
佐藤 マジですか?
飯塚 とんでもない数ですね。(資料を見ながら)儀武さん(麻音役・儀武ゆう子)のイベント参加率が95%(笑)。
―――竹原や広島でのイベントにもほとんど参加されていますよね。飯塚さんが竹原に初めて行ったのもイベントのときですか?
飯塚 その前に、母と一緒に竹原へ行って、ロケハンぽいことをしました。
佐藤 ももねこ様の素案ができた旅行?
飯塚 それはまた別の時です。後で、広島市や厳島へ行った時ですね。
―――以前、別の取材でももねこ様のデザインは非常に難航したとおっしゃっていましたが。素案は旅行中にできたのですか?
飯塚 市内で写真を撮っていたら、変わった看板があって。その目が邪悪だったので、それをももねこ様に移植しました。
―――竹原でのイベントに参加されたことは?
飯塚 「hitotose」の時のイベント(たまゆらの日2011)に行って、普通に竹原の町を見て回りました。「本当にアニメのままだ~すごい~」と思いながら、二重焼きを食べたりもしましたね。
佐藤 普通にファンの行動ですね。
飯塚 竹原駅の「おかえりなさい」の文字も、その時に初めて見ました。前に行ったときは気がつかなくて、「hitotose」を見てから存在を知ったんですよ。
―――数年ぶりに竹原へ来た楓が駅を出てすぐ、地面に書かれている「おかえりなさい」の文字に気づくシーンは名場面ですよね。
佐藤 でも、あの文字のことは、地元の方もあまり知らなかったですからね。「駅前の『おかえりなさい』を作品の中で使おうと思ってます!」って自信満々で言ったら、「そんなものありましたか?」って(笑)。
飯塚 あはは(笑)。
佐藤 ここまで現地に行って調べて、作品を作る事って無いですよね。
―――そうなのですか。
佐藤 「たまゆら」ほどやったことはないですね。日常話だから、(普通に作ると)どの土地でもできる話になってしまう。でも、せっかくなら、その場所でしか描けない物語にしたい。そうなると、行って調べるしかないんです。
飯塚 今回も竹原には行かれるんですか?
佐藤 それが、まだ行けてないんですよ。
飯塚 じゃあ、(かおるの姉の)さよみさんのエピソードが……。
―――さよみさんの起こすトラブルは、脱輪事件など佐藤監督の実体験を元にしたエピソードが多いですからね。
佐藤 それは大丈夫です。まだ使ってない「死にそう話」のストックがあるので(笑)。
飯塚 まだ、あるんですか(笑)。じゃあ、大丈夫ですね。
―――それも楽しみです。この質問も、まだ答えにくいかもしれないのですが……。完結編で、これは絶対にやりたい、やらなきゃならない、と考えられていることはありますか?
佐藤 言えないことがほとんどですけど……。さっきお話しした、ラストのイメージに関しては間違いなくやろうと思っている事ですね。
―――飯塚さんにとっては、完結編の製作に作画チームのメインスタッフとして参加すること自体がそういうものですか?
飯塚 そうですね。ずっと(スケジュールなどが)なかなか上手くいかなかったので。
佐藤 そういう意味では、僕も「hitotose」「もあぐれっしぶ」と、絵コンテはやっていますけど、中身の絵に関してはなかなか手を出せない状況が続いていたので。今回は絵作りの方にも、自分で手を出していきたいなと思っています。
―――佐藤監督が演出処理にも直接タッチしていくわけですね!
佐藤 いろんなものを整理して、断るものは断って。身を軽くして完結編に臨みたいです(笑)。
―――最後に、新作製作決定をずっと待っていたたまゆら~の皆さんに、一言お願いします。
佐藤 決まるか決まらないかって時は、ファンの皆さんに言いたいことがあっても、なかなか言えない事が多いですからね。こうやって発表できたことは、まず嬉しいです。
田坂 今回は特に長い間、お待たせしてしまったので……。
飯塚 お待たせしただけの感動を一緒に味わえると思うので、みんなで一緒に楓ちゃんたちを送り出しましょう!
(丸本大輔)