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今夜2話「臨床犯罪学者 火村英生の推理」原作と徹底比較。ドラマ版は犬キャラなんですか

2016年1月24日 10時00分

ライター情報:杉江松恋

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いよいよ今夜に第2回が放送される「臨床犯罪学者 火村英生の推理」、第1回の放送は2001年刊行の『絶叫城殺人事件』(現・新潮文庫)から、表題作が採用されていた。「ナイト・プローラー(夜、うろつく者)」を自称する犯人による連続殺人を扱った内容で、主要な事件についてはほぼ原作通りだったと言っていい。
『絶叫城殺人事件』有栖川有栖 /新潮文庫

ドラマでは冒頭に密室殺人事件を1つ追加し、それを探偵・火村英生の紹介篇として使っていた。「絶叫城殺人事件」が第1回に選ばれた理由の1つは、これではないかと思われる。「被害者同士に共通点がなく、連続殺人犯の動機を探すことが解決の糸口となる」タイプの謎解き小説は「ミッシング・リンク」、すなわち失われた環探しのミステリーと呼ばれていて、事件に至るまでの被害者たちの人生を書き込む必要がないため(言葉は悪いが駒として扱えるので)、その部分を圧縮して冒頭に入れごとをするのが容易だったのではないか。原作にあたる部分の尺は短くなったが、省略によって内容が損なわれたわけではないので、忠実なドラマ化を望むファンもひと安心したことだろう。
では、第1回から判った原作とドラマの差異についてまとめておく。
(原作については、前回の記事をご覧ください)

男の園に女性キャラクターが追加された


いちばん違いがあるのはキャストだ。
火村が教える英都大学の学生・貴島朱美(山本美月)、火村に対抗意識を見せる新任の刑事・小野希(優香)、カルトの教祖・諸星沙奈江(長谷川京子)と、3人のレギュラーが追加されている。原作はほぼ火村とアリスの物語であり、そこに警察官たちが絡むという内容なので、たしかにドラマとしては女性要素を追加したくなるだろう。それぞれ肚に一物ありそうだし、特に諸星沙奈江はストーリーの帰趨を左右しそうなので、今後も注目していきたい。
火村&アリス・チームに対する警察側の窓口になっているのは、原作では船曳警部である。海坊主と仇名されるような風貌の巨漢なのでキャスティングはどうするのかと思っていたら、生瀬勝久演じる鍋島刑事に変更された。その鍋島の部下である坂下刑事(清水一希)は、原作の森下刑事だろう。

もう1人大事な女性キャラクターは、火村が住む下宿の主・篠宮時絵だ(演じるのは夏木マリ)。この人は原作にも登場する。火村が「婆ちゃん」と呼ぶ家族のような間柄だが、残念ながら登場回数はそんなに多くない。たぶん制作側は、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンが共同生活を送っていたベーカー街221Bの家主・ハドスン夫人を時絵に重ねたかったのではないか。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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