今注目のアプリ、書籍をレビュー

「昭和元禄落語心中」4話。運命の女が現れた

2016年2月5日 09時50分

ライター情報:杉江松恋

このエントリーをはてなブックマークに追加
昭和を舞台に落語の魅力を描くアニメ「昭和元禄落語心中」、先週は第4話が放送された。本日最新刊の9巻が発売される雲田はるこ原作コミックでは第2巻の後半からラストまでにあたる内容だ。
『昭和元禄落語心中9』雲田はるこ/講談社

運命の女が登場


物語は回想パートの第2部「八雲と助六編」に入っている。
菊比古(のちの八代目有楽亭八雲)と同時入門した初太郎は有楽亭助六を襲名し、二つ目ながら人気者として地位を確立しつつあった。助六の後塵を拝した菊比古は一向に光明の見えない修業生活と、落語だけでは食えずカフェでアルバイトをするしかない貧しさに打ちのめされ、塞ぎこむ日々を送っていた。そんな中、師匠・七代目有楽亭の提案から、思いがけないことが起きるのだ。
アニメでは第2部のキーパーソン、向島芸者のみよ吉がいよいよストーリーに関わってきた。後に八雲と助六の2人と交わり、その人生に深い爪あとを残すことになる。ファム・ファタール、文字通りの運命の女だ。演じる林原めぐみは「昭和元禄落語心中」の主題歌、「薄ら氷心中」も歌っている。この曲のプロデュースを手がけたのは椎名林檎だ。椎名は落語界とも縁がある人で、立川談志の晩年を追ったドキュメント「遺芸 立川談志」のナレーションも担当した。

ライバルたちのモデルは?


途中で日本橋が出てくる。現在の橋は高架下になってしまっているが、劇中では振り仰ぐと空が見えるので、高速道路が建設された1963 年より前の時代だとわかる。カフェにやってきた女性客も和装だったし、このころまでは着物を普段着とする人は珍しくなかった。オリンピックで東京の景観は変貌し、住民の精神性も大きく変化した。その直前の、旧時代の匂いが濃く残っている頃の話なのだ。
お話の中では、洋装の似合う菊比古と着たきり雀でどこに行ってもどてら姿の助六というのが好対照を見せていた。本編の登場人物に特定のモデルはいないと思われるが、それでもこの構図はある2人の落語家を連想させる。六代目三遊亭圓生と五代目古今亭志ん生だ。今発売されている「文藝別冊 古今亭志ん生 落語の神様」に、洋装の圓生と和装の志ん生のツーショットが掲載されているので、関心ある方は見ていただきたい。この2人は大戦中に中国大陸へ慰問に出掛け(そこが菊比古とは違う)、死線をくぐり抜けたことで芸に開眼して帰国した。志ん生には親友の八代目桂文楽(先代、故人)というライバルが他にいたが、圓生は志ん生を終生意識し続けたのだ。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

注目の商品