幾度となくルパンの前に立ちはだかったものの、イギリス諜報部MI6を辞めて一般人になっていたニクス。超人的な戦闘力を誇るニクスだが、一番のウィークポイントは愛する家族だった。家族を人質にとられたニクスは、MI6の密命を受けることになる。目的はMI6から盗み出された「ドラゴンズテイル」を奪回すること。
一方、ルパンも「ドラゴンズテイル」を狙っていた。
『ルパン三世』には、こうしたプロの傭兵がしばしば登場する。どこの国にも属さず、カネで雇われて殺しを行う傭兵は、ルパンの敵として格好の存在というわけだ。TVスペシャル『ルパン三世 ヘミングウェイ・ペーパーの謎』のクレイジー・マッシュなどが代表格。また、『ルパン三世 PARTIII』の「ルパンが戦車でやってきた」では、次元大介がかつて傭兵だったと明かされている。
さて、「ドラゴンズテイル」とは、MI6の諜報部員のリストだった。これを押さえてしまえば、MI6の動きは筒抜け。ルパンたちも大変暮らしやすくなるのだが、スパイ組織であるMI6にとっては死活問題だ。
しかし、リストをそのまま渡すほどMI6はヤワではない。ニクスが奪回に失敗したのを確認すると、いきなり傭兵たちのアジトを空爆! 爆撃で傭兵の親分はいきなり死亡! このあたりの手口は、なにかと空爆で証拠を隠滅しようとするアメリカ政府を描いた『ルパン三世 ルパンVS複製人間』を思わせる。
さらにMI6のエージェントたちが乗り込んできて、生き残った傭兵たちを次々と射殺。
「お前さんと俺。これで生存確率50%ってところか」
「買いかぶりすぎだ」
「いいや。生きるか死ぬか、人生いつだって五分五分だぜ」
またも神作画アクションが登場!
珍しくグーパンチなどを繰り出して、MI6のエージェントと戦うルパン。しかし、ニクスはかつての仲間であるMI6のエージェントに囲まれてしまう。銃を向けられ、家族のことを想うニクス……(銃声)。
翌朝、ミッションの完了とニクスの死亡を確認したMI6の上司、パーシバルはニクスの家族の抹殺を命令する。ところが、そこへ現れたのが死んだと思ったニクス! ニクスは窮地を次元と五エ門に助けられていたのだ。次元のマグナムと五エ門の斬鉄剣で、一瞬にしてエージェントたちは全滅。まさにジゲゴエ無双。だいたいアクションものの定番として、死に際が明らかじゃないヒーロー(とその仲間は)は死んでいない。そして、ルパンはニクスが死んだという偽の情報をMI6に流し、ニクスの復讐の手助けをしたというわけ。
家族の命を狙われ、怒りがマックスになったニクスは、パーシバルに襲いかかる! ここで作画が突然、超リアルタッチに変貌!
思い出すのが第11話「イタリアの夢 前編」だ。ニクスのアクションシーンが突然ザクザクした線のものすごい動きになり、ネットで「神作画!」と話題になった。このとき、原画を手がけたのはアニメーターの大平晋也。今回は大平の名前はクレジットされていないが、第11話を強く意識して作られたシーンだと思われる。
実際ネットでも、
「ぶち切れ作画すげぇ……」
「ルパン神作画スギワロタ」
「ルパン今回いつもより神作画」
などの声があがっていた。
ところがここで現れたのがレオナルド・ダ・ヴィンチ! 万能の天才は体術も強く、ニクスを一瞬で押さえ込んで戦闘不能状態に(耳の穴に指を突っ込んで、耳小骨をずらして歩けなくする荒技を披露)。
強すぎるルパン一味の相手は天才しかない
今回はゲストアニメーターとして、大友克洋原作・監督の『AKIRA』で原画を担当し、『老人Z』や『BLOOD THE LAST VAMPIRE』などの監督を務めた北久保弘之が参加している。北久保が原画を担当したのは、ルパンが傭兵たちのアジトに潜入してから捕まってしまうまで。ちなみに北久保は今回が『ルパン三世』シリーズ初参加とのこと。
イタリアまではるばるやってきて、さまざまな陰謀をめぐらせてきたイギリス諜報部MI6だが、事実上、ダ・ヴィンチが壊滅させたようなもの。今回の『ルパン三世』はイタリアで放送されているため、イタリア人好みの要素がちりばめられているが、自国の英雄が他国のスパイ組織を蹴散らすという構図となった。
また、『ルパン三世』という作品においては、ルパンに立ちはだかる敵の設定が重要になるが、明らかに強すぎるルパン一味に対抗できる相手は、MI6のニクスではなく、ダ・ヴィンチだったということになる。今後、シリーズのラストに向かって万能の天才がどのようにルパン一味と渡り合うのかが楽しみだ。
今夜放送の第20話は、年老いた歌手と貴重なクラシックカーをめぐるお話「もう一度、君の歌声」。ロマンチックな内容になりそうだが、はたして……? チャンネルは決まったぜ。
(大山くまお)