連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第17週「常子、花山と断絶する。」第98話 7月26日(火)放送より。 
脚本:西田征史 演出: 藤並英樹
物置改造ビフォーアフター「とと姉ちゃん」98話
イラスト/小西りえこ

再会した東堂チヨ先生(片桐はいり)に招かれて、家(物置)を訪ねる小橋家三姉妹(高畑充希、相楽樹、杉咲花)。

歓迎ムードのチヨに対して、夫・泰文(利重剛)は不服そうで、外に出てしまった。
6畳しかない物置に、身ぎれいにした年頃の娘たち3人を招くことが憚られるのも無理はない。だが、チヨは今の生活を受け止め、ここにお客様を招こうと考える。前向きだー。

泰文も以前は社交的だった。だが戦争で右腕が動かせなくなって書道家としての仕事に支障をきたし、すっかり塞いでいた。

戦争で腕を、というケースは、鉄郎叔父さんを演じている向井理が「ゲゲゲの女房」(10年)で演じた水木しげるを思い出す。水木さんはそれでも漫画を描いたが、泰文はどう描かれるだろうか。

チヨ宅の話を聞いた花山(唐沢寿明)は、6畳の物置で暮す方法を次号のネタにしようと、さっそく常子たちを連れて出向く。狭い空間での生活を余儀なくされている人々にきっと役立つだろうという発想はさすが。
はっきりと考えを話す花山を、東堂先生は「言葉のひとつひとつに魂が宿っていて心からの叫びという感じが伝わって参りました」とまるで教師のような物言いをする。花山の言葉の発し方から精神性を読み取るとはさすが東堂先生。


花山演じる唐沢寿明の明るく強い演技が、戦後、出版社編を活気づかせているが、片桐はいりの演技も言葉の意味がはっきり伝わってくるし、東堂チヨの精神性の高さが伝わってくるうえ、落ち着いちゃった空気を動かす。買ってきたお茶請けの枇杷がコロコロと転がって、常子が受け取るアクションで画面がリズミカルになった。偶然の産物かなと思うが、そういうサプライズを呼べる逸材が名優になっていく。

こうして物置改造計画ビフォーアフターがはじまるのだが、家長たる泰文にまず挨拶及び許可をもらわなくていいのか。一応、部屋のなかで話を聞いてはいたが、チヨが判断してしまうのは、たとえ、この夫婦の関係性がいわゆる家父長制的ではないとしても、チヨは「とと奥さん」ではないだろうし、この物置は泰文の親戚の家のものだっていうし、余計なお世話ではあるが、ここは彼を立てて判断を委ねたほうが良かったのではないだろうか。

チヨの部屋改造計画の希望は難易度が高く、花山は悩むあまり、3日も編集部に来なかった。

東堂先生のお家改造計画は果たしてうまくいのか。
(木俣冬)