長瀬智也主演の日曜劇場『ごめん、愛してる』。余命わずかな男が、自分を捨てた母親の愛情を求めつつ、また別の愛を知る物語だ。
先週放送された第7話の視聴率は8.0%。うーん、ガクッと下がってしまった。
「めしを食うか、俺とキスするか選べ」長瀬智也の名ゼリフが炸裂! 『ごめん、愛してる』7話
サウンドトラック


大竹しのぶが無表情で棒読みな理由を推測してみた



7話では、命のダブルカウントダウンがスタートしていた。

一人は愛する塔子にフラれて交通事故を起こしてしまったサトル(坂口健太郎)。もともと心臓が弱かったこともあり、意識不明の予断を許さない状況が続く。

もう一人は脳に銃弾が残ったままの律(長瀬智也)だ。セカンドオピニオンにも余命わずかだとキッパリ言われてしまった。
ショックを受けた律は、若菜(池脇千鶴)と息子の魚(大智)のために大金を残すことを決意する。

律は魚に預金通帳を託すが、魚は律がどこかへ行ってしまうのではないかという恐れを感じ取って涙を流す。そのときの律のセリフがいい。

「男はな、自分の母ちゃんを守れなきゃダメなんだ。お前ならできる。だろ?」

律だって実の母親の麗子(大竹しのぶ)を守ろうとしていたが、麗子に振り向いてもらえるどころか、ひたすら疎まれ続けている。
俺だって母ちゃんを守りたいんだよ……という律の悲しみが伝わってくる。

一方、その母ちゃんはというと、サトルが心臓移植をしなければ命が持たないかもしれないと言われ、

「私の心臓をサトルにあげてください」

とノータイムで答える。これが母親の愛だ。サトルへの愛が深いほど、律の心の傷は深くなる。

ところで、続く「私なんて死んでもいいんです。先生、あの子を助けてください」という言葉の「なんて」の部分から麗子の抱える複雑さが垣間見える。
豪邸に住み、成功者のようにも見える麗子だが、ピアニストであることを断念した自分に何の価値も見出していない。ただ、サトルを愛し、サトルに愛される母親であることで、自分をつなぎとめようとしているのだ。だから、サトルが連れてきた塔子を追い払おうとしたし、サトルの意識が回復して最初に呼んだ名前が「凛華(吉岡里帆)」だったことに衝撃を受ける。

これまでサトルへの溺愛ぶり(と律への冷淡さ)ばかりが描かれてきた麗子だが、この言葉でようやく内面が出てきたように思う。麗子の無表情でちょっと棒読みな感じは、自尊感情の乏しさから生じているものなんじゃないだろうか。そしてこういう人は世の中に案外たくさんいる。


ドラマの名セリフはカツ丼とともに



サトルの意識は回復し、リハビリもできるようになった。一方、律の不調は頻繁に起こるようになり、余命を意識せざるを得なくなっていく。律は残された人生で何をするかを考えたとき、若菜親子と凜華のことは浮かんだが、麗子のことは浮かばなかったのが面白い。日本に来た動機は麗子だったはずなのに、さすがにもうイヤになったのだろう。

一方、凛華はサトルの助けに応えられなかった(携帯の電源を切って律と朝まで過ごしていた)自分を責め続けていた。

凛華は泣けない女だ。
しっかり者で、人前では弱気なところを見せず、いつも励ます立場にまわる。父子家庭に育ち、心の弱いサトルを励まし続けてきた生い立ちがそうさせたのかもしれない。悲しいことがあったとき、人目をはばからずオンオン泣ける人のほうが楽といえば楽だ。逆に泣けない人はいろいろなものを抱え込むことになる。サトルの手を握って涙ぐむ吉岡里帆が強烈に可愛い。

自責の念に駆られ、食事もできない凛華を連れ出して食事をさせようとする律。
食べ物はカツ丼だ。同じくカツ丼が登場した『カルテット』を思い出した視聴者も多かったはず。そして、カツ丼は名ゼリフを生む。

「めしを食うか、俺とキスするか、どちらか選べ」
「えっ……何?」
「じゃ、三択にしてやるよ。1.俺とキスをする。2.俺と寝る。3.俺と一緒に死ぬ。いや、四択だな。4.俺と一緒に今ここでめしを食う。さあ、どれだ。選べ。」

「全部でお願いします」とツイートする長瀬ファンが相次いでいたが、これは元の韓国版『ごめん、愛してる』にもあったセリフ。ウエーンと泣きながらカツ丼を頬張る凛華の姿を見て、「泣きながらごはんを食べたことがある人は、生きていけます」という『カルテット』のセリフを思い出した人も多いと思う。泣けない女である凜華にとって、律は安心して泣かせてくれる男なのだ。

意識が回復したサトルは、凛華への思慕を募らせていく。麗子も凛華にサトルの思い通りにするように命令した(ひどい)。だが、凛華の気持ちはすでに律に傾いていた。サトルたちを置いて律を追いかけてきた凛華は、律にキスして愛を告白する。長瀬の顔をホールドする吉岡里帆の指が長瀬の耳にかかっていてエッロい。

しかし、律はキッパリと拒絶! なんてわかりやすい展開! 余命わずかな俺に惚れるより、別の男にしなよ、ってことなんだろうか。

そして、本日放送の第8話では「最大の悲劇」が起こるらしい……! 正直なところ、ストーリーの重さと進まなさ(基本的に限られた人数の間で愛憎が繰り返されているだけなので)が“快適さ”とか“スカッとする展開”を求めがちな昨今のドラマ視聴者と合っていないところが視聴率の低迷につながっているような気がするのだが、どうせやるなら徹底的に重くなってほしい。それにしてもカツ丼食べたい……。
(大山くまお)