前回のレビュー記事で「『わにとかげぎす』は成長物語の側面もある」と書いたが、第7話(9月6日放送)ほどそれが顕著だった回はない。
『わにとかげぎす』7話、本田翼の恋心と有田の成長が高みへと昇る
原作

富岡ゆうじ(有田哲平)が成長したならば、誰が喜ぶ? それは、富岡に恋する羽田梓(本田翼)しかいないだろう。
緊迫感溢れる状況に点在した、ドキッとさせるような富岡の行動は“緊迫”と“恋”の並行世界を誘発する。

富岡の成長が羽田の恋心を増幅させる


前々回の放送から、『わにとかげぎす』はバイオレンスな流れに突入。吉岡華(コムアイ/水曜日のカンパネラ)は上原洋介(淵上泰史)に銃殺され、雨川勇(吉村界人)と花林雄大(賀来賢人)は上原の囚われの身となってしまった。雨川に至っては「目つきが気に入らない」という理由だけで上原に猟銃で殴打され、ガムテープで手足を縛られる憂き目に遭っている。

そんな彼らの居場所を探すべく、富岡と羽田は山梨の人里離れたエリアを探索。すると、唐突に急ブレーキを踏む富岡。「どっ、どうしたんですか!?」と問う助手席の羽田に「今、民家があったような……」と答える富岡。
そして通り過ぎた道を確認すべく、ギアをバックに入れて後方を見据える体勢となった。多くの女子が“異性のキュンとする瞬間”に挙げる、アレだ。この富岡らしからぬこの機敏な対応に、驚きの表情を浮かべる羽田。
いざ確認すると、やはり民家は存在した。しかし、自動車ではたどり着けそうにない。「私、ちょっと聞いてきます」と自動車を降りようとする羽田であったが、そんな彼女の腕をグッと掴んで「車通れるんで、一緒に行きましょ?」と提案する富岡。
またも驚き、「あっ、……はい」とうっとりした顔で返事する羽田。見るからに、富岡への熱が増幅中じゃないですか!

極限状態で“抜き身”となった姿は、三者三様


富岡の判断はビンゴだった。民家をノックすると、出てきたのは上原だ。しかし、この男が雨川と花林を拘束していることを2人は知らない。うざそうに「ねえ、もういい? 俺、もう風呂入るんだけど」と話を打ち切ろうとする上原だが、彼の足元がうさぎのマークのワッペンを踏んづけていることに富岡は気付いてしまう(雨川と花林は「ラビッド引越社」なる架空の業者の作業員に扮してヤクザの東金宅へ潜入した)。奥の炊飯ジャーの蓋に反射するは、銃を隠し持つ上原の右手だ。

上原が戸を閉めた後、「ここはヤバい!」と羽田の腕を掴んで自動車に連れ戻す富岡。
今までの彼には見られなかった好判断である。
案の定、上原は銃を持って自動車の方へやって来た。そして、銃をぶっ放す上原! 「富岡さん、車出して!」の声に反応した富岡がアクセルペダルを踏んづけると、結果的に銃を構える上原を轢く形に。正当防衛だ。

上原の民家に入ると、ガムテープでぐるぐる巻きにされた雨川と花林がそこにはいた。
極限状態に陥ると、人間の理性は取っ払われる。
上原に奪われた1億円の札束を、正気を逸した表情で一心不乱にカバンへと詰め込む花林。愛する吉岡を殺された雨川は、笑みをたたえながら「殺るぞ」と斧を手に取り、制止しようとする富岡を振り切らんとそれを振り落としてしまう。そして、車に轢かれ満身創痍の上原を発見し、手に持った斧で復讐の一撃! その傍らで呆然とする羽田に衝撃の一瞬を見せまいと、羽田の顔をたぐり寄せて抱きかかえる富岡。
同じ時間、同じ場所、それぞれのシチュエーションにおける極限状態で、三者三様の抜き身が露わとなった瞬間だ。

こんなハードボイルドの最中、羽田の富岡への思いは図らずも増大してしまう。彼女が忘れられないのは、上原宅への聞き込みを一人で行おうとするもグッと腕を掴み止めてくれた富岡の判断だった。


羽田 私、あの時、富岡さんが止めてくれなかったら……。私、死んでたかもしれないです。
富岡 羽田さん。ずっと、言おうと思ってたんですけど。
羽田 ……。(富岡の方を向き、何かを期待しながら彼の顔を凝視する)
富岡 Tシャツ、裏返しです。

羽田 ……、はぁ。(ため息を付き、脱力した表情に)

富岡の“成長”と羽田の“恋心”が同時に高みへと昇る


この事件によって、警察に捕まってしまった雨川。東金の舎弟らに拉致され、行方不明になってしまった花林。
今までの人生において友だちがいなかった富岡だが、そんな自分が「友だちが欲しい」と流れ星に祈ったから雨川と花林は自分の職場にやって来た。そして、金庫を運び出す計画に乗ることになった。「2人がこんな目に遭ったのは自分のせいだ」と、富岡は己を責め続ける。

ふさぎ込む彼を、隣人・羽田が放っておくわけがない。「何度も警察に出頭して、何度も同じこと聞かれた仲じゃないですか」「友だちどころか、一緒に殺されかけた仲じゃないですか」と富岡に救いの手を伸ばすのだ。そして、遂に踏み越えに行く羽田。

羽田 富岡さん、私と付き合ってみませんか!?
富岡 はい。……いやいや、えっ、えっ、はっ、はっ!? えっ!?
羽田 私が思うに、富岡さんには友だちではなく……彼女が必要なんだと思います!

「友達が欲しい」と願った過去を後悔する富岡の“彼女”に、遂に羽田が立候補! 富岡からは成長の跡が窺えたが、それと並行して羽田の恋心も抑えが効かないレベルに至っていたのだ。いや、今までもそれなりに羽田はアピールしてきており、それを察しない富岡の鈍感さはどうかと思うのだけど……。

38歳童貞、今まであらゆることを経験して来ずじまいであった富岡は、羽田の恋心をちゃんと受け止めきれるのか? 気になる『わにとかげぎす』の第8話は、本日深夜に放送。
富岡の成長度を滞りなく窺いたいこの続き、彼の人生において重大な局面が展開されるでしょう。
(寺西ジャジューカ)