連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第26週「グッバイ、ナミダクン」第151回 9月25日(月)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出: 黒崎 博
「ひよっこ」151話。米屋の娘の恋が成就、おめでとう
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」151話はこんな話


すずふり亭では新メニューと新制服が始動。
安部米店では、三男(泉澤祐希)とさおり(伊藤沙莉)の関係が進展。


さおり粘り勝ち


桑田佳祐の主題歌「若い広場」の歌詞のおわりが「希望に燃える 恋の歌♪」だからか、「ひよっこ」の終盤は、恋だらけ。先週の、みね子(有村架純)とヒデ(磯村勇斗)、愛子(和久井映見)と省吾(佐々木蔵之介)に続き、今週は三男(泉澤祐希)とさおり(伊藤沙莉)のカップル成立と相成った。

おもしろいのは、これがそろいもそろって、ある種の妥協愛なのだ。
みね子は初恋からの妥協、愛子と省吾は亡くした最愛の人からの妥協、三男も長い片思いのからの妥協。
妥協という言葉が居心地悪ければ、一度諦めたところからの再出発と言い換えても良い。
要するに、幸せの形は、ひとつではないということだ。
年収800万以上の伴侶が欲しいとか、アイドルのように可愛い伴侶が欲しいとか、そこにこだわり過ぎるよりも、ちょっと角度を変えれば、幸せの可能性はそこそこに隠れていることを、「ひよっこ」は描いている。


みね子も、明らかに困難が予想される御曹司と結ばれることよりも、必要とされる場所(すずふり亭とそこで共に働くヒデという男)で満足し、三男も、農家の末っ子が生きていく場所(米屋の婿になる)を見つけた。
さおりがあまりにも自分を好きでいてくれることに、次第に自尊心が満たされる三男。年齢的にもお盛んであるはずの自然現象(性欲)だって満たされることが保障済みである。
「かわいいですよ。それに面白いです」「振り回されるの楽しくなってきました」と、三男はさおりにすっかり慣れてしまった。さおりの粘り勝ちである。

「ここまでかなりがんばってきたんだもの」と鼻息荒いさおりを見るにつけ、こんな毎日、働いているときに、プレッシャーを与えられていたらストレスだよなあと思うが、三男には帰る場所もないし、好意的に求められているわけだから、悪いことではない。
このまま結婚したら、嫁のこういう面倒臭さから逃げたくなって、浮気したりするかもしれないが、それはまた別の話。

三男のいいところは、さおりが、父・善三(斎藤暁)と仲悪いことと、名前(本名は米子)を偽っていることを直してほしいとちゃんと言うことだ。
「いいか米子」と呼び捨てたあと「〜〜考えましょう」と丁寧語になるところもいい。
パン屋になったら「パン子」と呼ぶという冗談も微笑ましい。

泉澤祐希と伊藤沙莉が、生真面目だからこその可笑しさを存分に表現していた。


イチコ色の制服


「パン子」と、すずふり亭の新メニューに使われている「パン粉」が繋がっていた。
ヒデと元治(やついいちろう)がトライする新メニュー・スコッチエッグは、試食のうえ、採用になった。
衣(パン粉)にアーモンドをまぶしたことが功を奏したのだ。
「スコッチエッグ」は「ごちそうさん」(13年)にも登場したが、「ひよっこ」だから卵料理で締めたことは美しい(第一話にはたまご焼きが登場した)。

みね子の考えた制服も、薬局のマスコット・イチコ色が大好評。じつにさわやかな、最終週のはじまりだ。

ただ、イチコ色を着ていると、今後、みね子が、いろんな人から愚痴をこぼされ、バンバン頭を叩かれそうな気もしないでない。
「木俣冬)