昨日(9月27日)、『わにとかげぎす』(TBS系)がついに最終回を迎えた。
「わにとかげぎす」最終回、本田翼が深海魚だった有田哲平を救い出す、なんてハッピーな死体
原作

「わにとかげぎす」とは、深海に生息する「ワニトカゲギス目ワニトカゲギス属」という魚類のこと。
寝てばかりの人生を送ってきたがゆえ、友人も恋人もいないままに38歳になってしまった富岡ゆうじ(有田哲平)を深海魚に喩え、付けられたタイトルである。

羽田が、ワニトカゲギスだった富岡を地上へ浮上させる


自動車窃盗グループが追う訳あり外国人女性の逃走を手助けした富岡は、グループからの追跡を逃れるため、夜警の仕事を退職。しばらく放浪することになる。
「こんないい歳して、子どもらから逃げて、仕事まで失って……」(富岡)

その後、恋人・羽田梓(本田翼)と数日ぶりに再会すると、彼女が小説で大きな賞を獲ったことを伝えられる。
「自分の夢を叶えた人に、こんな無職のおっさんが『幸せにする』って、どの口が言える……!」(富岡)
羽田との立場の違いを実感し、尻込みする富岡。しかし、羽田はそれにすぐ気が付く。

羽田 どうせまた「自分じゃ幸せにできない」とか、そんなこと言おうとしたんじゃないですか?
富岡 あ……、いや……。

羽田 今なら胸を張って言えます。富岡さんを幸せにします!
富岡 いや、それは……。
羽田 ゴチャゴチャ言わずに、基本的にそれでいいですね?
富岡 じゃあ、基本的にその方向で……。

富岡、完璧に飼いならされてるな……。窃盗グループに自宅が知られている富岡は住み慣れた街を離れ、新たなマンションへ転居。今度は羽田とともに同居することとなった。
深海魚であった富岡が羽田に救われ、今まさに浮上しようとしている。

海に沈む羽田の元カレ


トイレやお風呂での盗撮動画を材料に、お金を要求してきた羽田の元カレ・灰野(森優作)の問題がまだ解決していなかった。しかも、羽田は小説家として本を出版する予定。借金取りにプレッシャーをかけられている灰野は、羽田の印税を目当てに携帯へ電話をかけてきた。
「すごいね、羽田ちゃん。本っていつ出るの? 印税とか、ガンガン入ってくるんでしょ? あの動画買うくらい、なんてことないよねえ? せっかく掴んだ夢、パァーになる前にさっさと金払えよ!」(灰野)

200万円を持ってくるよう羽田に要求してきた灰野であったが、羽田は行かないことを決断。しかし、どうしても心配な富岡が内緒で待ち合わせ場所へ行くと、そこには灰野の今カノ(emma)が。

「動画データは、私がムカついて全部消しました。だから、警察には言わないでください。これから彼と2人で沖縄でやり直すつもりなんで」(今カノ)

直後のシーンで映し出されるは、借金取りに海に沈められた灰野の姿であった。ワニトカゲギスであったものの羽田の助けによって浮上することとなった富岡とは対象的だ。

「君はもう孤独じゃないんだ」(羽田) 「俺はもう孤独じゃない」(富岡)


レンタルビデオ店でのアルバイトを開始した富岡は、仕事を終えると羽田の待つマンションへ帰宅する。
以下は、富岡の心の声。

「自分のことを誰よりもわかってくれる特別な人ができた。自分が生きている様を見ていてくれる証人だ。それがいるといないじゃ大違いだ」

帰宅途中のゴミ捨て場には、頭から血を流し息途絶える富岡の姿がある。そしてそれを感慨深げに一瞥し、通り過ぎる富岡。「週刊ヤングマガジン」連載時に物議をかもしたこのくだりには、読者による様々な解釈が飛び交った。
今回のドラマ版に関しては、このシーンがかなり分かりやすく描写されているという印象。
要するに、富岡は孤独だった過去の自分を捨て去ることができた。ゴミ捨て場にあった死体は、深海魚であった富岡が地上へと浮かび上がった証だ。

富岡が運動公園の夜警の仕事を始める際(第8話)、「大丈夫かな……」と不安がる富岡の肩にガシッと腕を回した羽田は「大丈夫です! なぜなら、富岡さんはもう1人じゃないから」と、力強い一言を放っている。
ここ、原作版での描写は少し異なる。富岡の肩に腕をガシッと腕を回し、「なぜなら君はもう孤独じゃないんだ」という言葉を羽田は口にしている。

そしてドラマ版では、富岡の「もう、大丈夫。
俺はもう、孤独じゃない」という言葉とともに、最終話が締められることとなった。頭から血を流し息絶える主人公の姿が最高のハッピーエンドを表現しているなんて、憎らしいほど余韻を残す作品じゃないか。

それにしても、今さらながら、同じマンションの隣人が本田翼だったらどうしよう。もし自分が富岡だったとしたら、浮上できるよう全力で頑張る。
(寺西ジャジューカ)