6月の「ジャイアンフェア」で“キャラクター押し企画”を成功させた藤子・F・不二雄ミュージアム。7月からの夏休み期間はあの男が主役になります。
永遠の腰巾着、主役にはなれない男・骨川スネ夫フューチャー企画『ハワイフェア~スネ夫の夏休み~』が7月1日から開催中です。
(余談ですが、公式サイトに描かれているしずかちゃんのバニー姿がなんだかエロいです!)

「海といえはやっぱりワイキキビーチだよね」と常々自慢し、ハワイ好きを公言するスネ夫が盛り上げる南国リゾート気分。併設する「ショップ」や「カフェ」では、ハワイテイスト満載の新商品もゾクゾク登場しているので、忙しくてハワイになんか行けない大人にこそピッタリ!……って、思い切ったなぁ、藤子・F・不二雄ミュージアム。スネ夫が主役かぁ。のび太、ドラえもんは言わずもがな。映画で活躍するジャイアンやヒロイン・しずかちゃんが好きって声はよく聞きますが、スネ夫ファンって正直聞いたことありません。
そこで、今一度「スネ夫視点」でコミックスを見直すと、影が薄いどころか憎らしいほどのリア充っぷりがうかがえます。骨川スネ夫とは何者なのか? がわかる数々のリア充エピソードをおさらいしてみましょう。


【リア充エピソード(1)お金持ちの息子・スネ夫】
「(鯉にえさをやりながら)どう、よくなれているでしょう。ぼくがくんれんしたんだ。さかなもなれると、かわいいよ。きみたちもかってみな。
あっ! ごめんごめん。わるいこといって。このへんで、にわに池があるのは、うちだけだった。」(てんとう虫コミックス7巻「空とぶさかな」)
「とつぜんサッポロラーメンが、食べたいといいだして……。思い立ったらすぐ実行するのが、うちの家族なんだ。さっそくジャンボジェットで北海道へ……。金曜日の夕方だよ。
秋風は寒かったけど、あついあついバターラーメンのうまかったこと!!あのうまさはとても言葉ではあらわせないね。」(てんとう虫コミックス42巻「やりすぎ!のぞみ実現機」)

父は会社社長、生まれながらのボンボン……それが骨川スネ夫です。そのセレブ生活の程は説明するまでもなく皆さんご存知だとは思いますが、「衣・食・住」についての数々の台詞からも改めてうかがい知ることができます。「衣」についての自慢トークは実はあまりないのですが、将来の夢がファッションデザイナーであることから、服への興味・出費が高いことも間違いないでしょう。
また、実家だけでなく、親戚筋もみんな社長という家柄の良さもスネ夫のリア充には欠かせない要素です。マスコミ関係の親戚が多くて有名人のサインがもらい放題だったり、新製品を発売日に手に入れるなんて当たり前、下手をすれば発売前に入手して遊び尽くす姿。世が世ならばアルファブロガーになっていたかもしれません。



【リア充エピソード(2)ナルシスト・スネ夫】
「いつ見ても……いつまで見てもあきないなあ、ぼくの顔は。美しいということばは、ぼくのためにあるんだなあ(ウットリ)」(てんとう虫コミックス1巻「マル秘スパイ大作戦」)
「ぼくは頭もいいし、顔もきれいだし、あとはせがひくいことだけがなやみなんだよ。」(てんとう虫コミックス8巻「うちでの小づち」)

リア充がリア充たる由縁、それは自分が大好きなところですよね。意外に思われるかもしれませんが、スネ夫も自分のことが大好き! あの顔でこんな台詞を発していたのかと思うと、むしろちょっと愛着が湧いてきます。


【リア充エピソード(3)趣味に情熱を燃やす男・スネ夫】
「ぼくぐらいのマニアになると、いろいろ改造してたのしんでいるんだ。デコレーション・チョロQ、トレーラーの後ろに電池をつみこんで、豆電球を光らせる。夜走らせるときれいだよ。」(てんとう虫コミックス31巻「改造チョロQ」)
「プラモの道は広く奥深い。
そのプラモ道にどれだけ真剣にとりくむかという心がまえが、二枚の写真のちがいとなってあらわれているのだ!!」(てんとう虫コミックス32巻「超リアル・ジオラマ大作戦」)

金持ちらしく数々のコレクション収集に精を出すスネ夫ですが、ちょっと好感が持てるのは、金にモノを言わせるだけでなく、自ら積極的に改造したりカスタマイズをするところ。なんだかとっても趣味人っぽいです。特に親戚の大学生・スネ吉に師事したプラモデルは、物置を特設ジオラマスタジオに改築して日々研究を重ねるほどの本格派で、そこまで打ち込めるものがあるスネ夫が羨ましくもなります。

【リア充エピソード(4)アイドルとお近づきになれる男・スネ夫】
「伊藤つばさファンクラブ全国大会にいってきたんだけどさ。熱狂的もりあがりで、すごいというかなんというか…。このクールなぼくさえつりこまれてのどがかれるほどさけんじゃって。」(てんとう虫コミックス33巻「フィーバー!!ジャイアン ファンクラブ」)
「(サイン入りバネルを見せびらかしながら)「つばさちゃんへのホットなレター」コンクールで、優勝してもらったんだぞ。
つまり、ほんとに熱心なファンだけがもらえるパネルだよ。今度、ぼくクラブの幹部になったんだ。つばさちゃんをかこむ会など、いろんな企画や会誌の編集にもタッチしたり、いやもういそがしいのなんのって……。」(てんとう虫コミックス35巻「ジャイアンへのホットなレター」)

新しいモノ好きで、結構飽きっぽいイメージのあるスネ夫ですが、アイドル・伊藤つばさへの情熱は変わることなく描かれています。世が世ならAKBにどっぷりはまって、投票権も200、300は当たり前なんだろうなぁ。そして、つばさトークをする度にジャイアンの怒りを買い、ジャイアンリサイタルを開催させられる……というのがお約束のコンボです。


【リア充エピソード(5)旅が似合う男・スネ夫】
「力強い汽笛! ピストンがゆっくりと動き出し、やがて巨大な鉄のかたまりが、大地をゆるがせてばく進するんだ。SLはよかったなあ……。」(てんとう虫コミックス20巻「天の川鉄道の夜」)
「すばらしかったよ。ブルートレインの旅。ベッドはゆったり。町のあかりが、矢のように窓の外をすぎていく。まるで、星の海をとんでいるみたい。終点が九州の鹿児島さ。指宿の海岸でたっぷり泳いで帰ってきたんだ。楽しかったなあ!!」(てんとう虫コミックス25巻「ブルートレインはぼくの家」)

旅行エピソードはそれこそ数えきれないほど登場するのですが、ここでは鉄道関連エピソードをピックアップ。スネ夫は実は鉄オタだった!? という点も興味深いですが、SLやブルートレインへの愛情、そして造詣の深さには驚かされます。また旅の様子を美しく語るスネ夫の詩人っぷりにも注目です。


【リア充エピソード(6)海が似合う男、それがスネ夫】
「エレベーターをおりると、そこはもう海の底だ。厚いガラスばりの展望室になっていて、窓の外を泳いでいく魚たちのゆめのような美しさ……。いや、この話はもうよそう。いくら口でいってもむだだ。海中公園のすばらしさは、いってみた者じゃないとわからないよ。」(てんとう虫コミックス23巻「おざしき水族館」)
「もうすぐ夏がくる。四丈半島の海辺は、まだほとんど人気がない。きこえるのは海と風の音ばかり……。波の立つ日には、サーフィンなんかできるんだよ。」(てんとう虫コミックス44巻「バランストレーナー」)

リア充には、やっぱり海が似合います。長期の休みになるたび、日本各地、そして世界中の海に出かけて、サーフィンだけでなくスキューバーダイビング、ボート遊びに興じます。そういえば、トヨタ自動車のCMで山Pこと山下智久演じる大人スネ夫が、老人ホームのかわい娘ちゃんを連れて向かった先も海でした。カッコええわぁ。


【リア充エピソード(7)そして、ハワイが好きな男・スネ夫】
「ハワイの空気のかんづめなんか、こうやって目をとじると、波の音やハワイアンが聞こえてくるような。」(てんとう虫コミックス26巻「空気中継衛星」)
「ぼくみたいに海外旅行のベテランになると、ハワイなんて今さらと思うけど、きてみるとけっこう気軽で楽しいよ。この楽しさを、きみにもわけてあげたくて写真を送る。たぶん、どこへもいけなくてみじめな夏休みをすごしているだろうから……。」(てんとう虫コミックス44巻「ハワイがやってくる」)

そして、今回の『ハワイフェア~スネ夫の夏休み~』に通じるリア充エピソードが「ハワイを愛するスネ夫」です。フェア期間中はサングラスをかけたスネ夫のイラストが楽しめる「スネ夫ヘアーチョコクレープ ALOHAバージョン」や、夏をイメージしたココナッツクリームが特徴の「どらみみケーキ ココナッツクリームバージョン」、ノンアルコールのトロピカルカクテル「ココナッツドラえもんブルー」など、ハワイ気分が満喫できるドリンクやフードが目白押しです。 


以上、7つの項目からスネ夫のリア充人生を振り返ってみましたが、実はこれらのスネ夫エピソードの多くは、藤子・F・不二雄先生の趣味や興味と重なる部分でもあるのです。藤子・F・不二雄ミュージアムの「先生の部屋」には鉄道模型が展示してあったり、海外のお土産が並んでいたりとF先生の多趣味っぷりをうかがい知ることができるのですが、その趣味人なところや、コレクションの多さ、新しいものにも熱中する姿はまさにスネ夫に通じることに気づかされます。
「子供のころ、ぼくは「のび太」でした。」とは藤子・F・不二雄先生が常々語っていた名言ですが、じつはスネ夫でもあり、そしてたぶん、ドラえもんの要素やジャイアンの要素もたくさん持っていたんじゃないでしょうか。
『ドラえもん』に登場する様々なエピソードや台詞をそんな視点で眺めると、今までとはまた違った捉え方ができるし、藤子・F・不二雄ミュージアムの楽しみ方も広がっていくかもしれません。

川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム「ハワイフェア~スネ夫の夏休み~」は8月31日まで毎日開催中です。
(7月20日(金)から9月3日(月)までは開館時間も1時間延長。また、期間中は、火曜日の休館日も開館されます)

(オグマナオト)