「会話のない」夫婦が距離を縮めるには 原因と対策を専門家に聞いてみた

よく、夫婦は長年寄り添うと、ほとんど会話をしなくなるという話を聞く。しかし、会話の大事さはわかっているものの、いざ話そうとすると、会話のネタに困ることもあるだろう。
そこで夫婦関係の専門家にどんな話題が盛り上がるのかを聞いてみた。


家庭における夫の存在意義の低下


夫婦カウンセラーの下木修一郎さんによれば、妻たちの気持ちは、会話に無関心な夫より、子どもへ向かっているという。

「今、20才になっても母親と買い物に行く息子(ママっ子男子)が急増しているといわれています。ママは、話に乗ってくれない夫を尻目に、優しい息子と話をするのが楽しくて仕方ない様子。『夫とは親戚の話程度です』というママさんもいらっしゃいました。
夫がいなくても、もうママは寂しくないのです。家庭における夫の存在意義がどんどん薄くなっています。
夫婦の心の距離も、これまで以上にないくらい、どんどん離れていっているように感じます」


会話の多い夫婦は何を話している?


夫婦の会話のあまりのなさに危機を感じる夫もいるかもしれない。では、どのような話題が好ましいのか。

下木さんが、よく会話をする夫婦に聞いてみたところ、お互いに興味があることについての話題が、最も盛り上がる傾向があったという。

◯共通の趣味
◯子育てについて
◯思い出話などの過去の記憶
◯食など関心のあること
◯ふたりの将来の夢、希望

「会話を盛り上げようとしなくとも、互いに関心を持っているため、話せば自然と盛り上がるようです。山登りが趣味の夫婦では『今度はどこの山に登ろうか?』というだけで、過去の登山の思い出話と、次回の山登りの計画でワイワイ盛り上がるわけです」


普段会話していない夫婦は何を話せば?


「ところが、普段から会話をしていない夫婦であればそうはいきません。お互いへの関心も減っていますから、相手の関心も不明。子育てのことを話題にしようとしても、情報共有がなされていないため、ヘタに話をすれば『そんなことも知らないの?』なんて切り捨てられかねません。
仮に芸能ネタを用意したとしても、盛り上がるのは一瞬。すぐにまた沈黙が訪れるでしょう。
相手との距離を感じている状態では、相手への向き合い方もわからない。ひとことかけるだけでも勇気がいるものです」

そんな迷える夫におすすめなのが、まずは相手との心の距離を縮めるための「ひとこと会話」だという。

「二人の心の距離を縮めるために信頼の再構築をしていきましょう。相手から関心を持たれていないと感じているわけですから、まずはそのネガティブな思い込みを溶かす必要があります。
『感謝』『好意』『将来』と3つのひとこと会話のステップで、距離を縮めていきましょう」

●距離を縮める3ステップひとこと会話術

ステップ1)感謝のひとこと会話
「いつも子育てがんばってくれてありがとう」
「いつも美味しいご飯、ありがとうね」

「会話のある夫婦と無い夫婦の圧倒的な差は、普段の生活での感謝不足に現れます。感謝の言葉は、怒りや不安などのネガティブな感情を和らげる作用があります。できれば、目を見て伝えてください。
突然言ったら不自然と思われるのでは?と不安になりますが、不自然でいいのです。突然のほうがギャップがあるので相手への影響も大きくなります。『どうしたのいきなり?』なんて言われたら、『思ってたけど言えてなかったから』と素直に伝えればいいのです」

「もし『感謝してるなら少しは手伝ってよ!』なんてザクッと切り捨てられたら、『その通りだよね。
僕にできることを教えてくれないかな」と素直に受け入れてください。相手から切り捨てられたということは、奥さんは傷ついている証拠です。その傷を癒せる、距離を縮めるチャンスがきたと考えることが大切です」

ステップ2)好意のひとこと会話
「見たい映画があるんだけど、一緒に行こうよ」
「うまいラーメン屋さんの話を聞いたんだけど、週末一緒にどう?」

「感謝を伝えられるようになったら、次は相手に好意を持っていることを伝えます。しかし、距離ある夫婦がいきなり『好きだよ」』や『キレイだよ』なんて言えるわけがありません。ですから、一緒に何かをしたいという自分発信型の提案をします。
相手が好きなものが分かれば、それを提案すればいいのですが、分からなければ自分の欲求で大丈夫です。
相手としたいことを具体的に伝えてください。『なんでもいいからしよう』なんて中途半端な提案はNGです」

「『え~?ラーメン?』なんて言われても簡単に引かないように。『ダメ?一緒に食べたいんだけどな』と君と一緒がいいんだ、という熱意を持って粘ってください。『しょうがないなぁ、いいよ』なんて言われたら最高ですね。『やった!』と嬉しさを素直に伝えられたら、もう100点満点です」

ステップ3)将来のひとこと会話
「面白かった。また観に行こうね。」
「美味しかったね。
今度は君が食べたいものにしようよ」

「無事行動ができたら、そのことについてのポジティブな感情を表現します。また近いうちに一緒に体験がしたいという欲求を伝えます。この人はこれからも私と一緒にいたいんだ、と思ってもらえれば、距離はグッと縮まります」

下木さんによれば、この3ステップをくり返すだけで、会話は自然と増えていくという。

「あとは、このひとことを『伝える勇気』を持つだけです。相手と関わり合おうとするあなたの積極的な気持ちこそが、相手との距離を縮め、信頼しあえる夫婦の関係を作っていくものです。あなたの勇気で夫婦関係はガラリと変わるはずです」

まずは目を見て「ありがとう」を伝える勇気と行動が、はじめの一歩と言えそうだ。
(石原亜香利)

取材協力
「会話のない」夫婦が距離を縮めるには 原因と対策を専門家に聞いてみた

夫婦カウンセラー 下木 修一郎(しもき しゅういちろう)さん
夫の気持ちを知る男性夫婦カウンセラー。1000人を超える夫との関係に苦しむ妻たちの悩みを聞き解決へと導く。女性必見の『動画でわかる夫のホンネ』も公開中。【夫婦の知識サイト http://fufuzukan.com