2013年3月を迎え、「清商」の名前が消滅する。

  20年近くサッカーを取材してきて、学校名変更や高校合併の話には何度か直面した。
しかし、今回の清商の合併話ほど複雑な心境になるのは初めてである。

 江尻篤彦キャプテン率いる清商が85年度の選手権で初制覇を果たした時、同じ高校3年生として彼らの華麗なサッカーをリアルタイムで見たことを鮮明に覚えている。その分、余計に切なさがこみあげてくるのかもしれない。

清商は、私のサッカーへの興味関心を深めてくれた重要な存在の1つだった(『全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え』のあとがきより抜粋)

 名門校の名が消えるのは、今回が初めてではない。

 同じ静岡で、澤登正朗、森島寛晃や服部年宏らを輩出した東海大一(現東海大翔洋)も校名を変更している。同校の前校名時代には、選手権で全国制覇、全国大会で2度の準優勝を果たしているが、校名変更後は、1度の全国大会出場にとどまる。


 時代背景などが異なるので、一概には言えないが、名称変更が与えた影響はゼロでない。

「清商」の名が消えることで、今後、同校に才能を持った生徒は集まりにくくなる。

 先の東海大一の例がそれを指し示している。

「今後、桜が丘高校で『清商魂』が引き継がれていくかは、俺たち卒業生の活躍次第。だから頑張らないといけない……」

 名波浩や川口能活ら名だたる卒業生たちにインタビューをした中で印象に残った、「俺たち次第」と口を揃えて話していたことだ。

「清商」という名前が消えることの何が問題なのかと疑問に思うフシもあるだろう。


 冒頭に引用したあとがきの中で、著者の元川氏が書いた「切なさ」という個人的な感情だろうか。あるいは、「清商」が「桜が丘」になってしまうことで、同校のサッカー部が弱くなってしまうことなのか。

 どちらも正解ではあるだろう。ただし、そこにはもっと大きな“本当の意味”があるのだと思う。


 そのヒントを、1989年度に清商を卒業した藤田俊哉が同書の中で語っている。

「僕らの原点を作ってくれた清商の名前がなくなってしまうのは、本当に寂しいの一言だよね。
時代が変わり、いつしか清商を知らない人が増えると思うと、なんだかやりきれない気持ちになる。

 サッカーって世界で一番人気があるスポーツなのに、日本では高校サッカーで名を残してきた清商の学校名があっさり変えられてしまうくらいの地位でしかない。そのことを痛感させられます。

 俺たちサッカー人はそういう文化や環境も変えていかないといけない。サッカー、スポーツの重みをもっと多くの人々に理解してもらいたいと強く思います。

 自分はこれから海外へ行くけど、僕らみたいな清商出身の元プロサッカー選手が活躍することで、少しでも現状を変えられるのかな。
そう考えて、努力していきたい」(第2章 藤田俊哉のコメントより一部抜粋)

 藤田の言うとおり、彼らが背負っているのは「清商魂」だけではない。本書で登場した清商OB13名は、サッカーやスポーツの地位向上をも担う存在なのだ。

 名門校の消滅というのは、広義では、サッカーというスポーツの社会全体に対する影響力の低さを示しているのである。
 つまり、少し大げさな言い方かもしれないが、清商魂が引き継がれていくことは、サッカー界の地位向上と同意義なのだ。

 清商というサッカーの名門校の名前が消える……それは、サッカー界全体に与えられた“宿題”のような気がしてならない。


【500円】4/8八丁堀サッカーナイト ゲストは元清商監督・大瀧雅良!!


清水商業サッカー部・大瀧雅良前監督とサッカージャーナリスト・元川悦子のトークセッション! -「成長」のために僕たちは体罰をすべきか-


育成において体罰は必要なのか。
今、この問題が各メディアで大きく取り扱われています。

サッカーの名門校“清商”で38年に渡り、高校生のサッカー選手を指導してきた大瀧先生が、サッカーに送る育成や体罰問題について語ります。

大瀧先生は、風間八宏、名波浩、小野伸二など多くの日本代表選手を育てた実績をお持ちですが、今回のトークセッションを、参加者の皆様と意見を交わして教育についてお互いに学べる場として考えております。

「こうすべきだ」というトークイベントではなく、「みんなで答えを見つけていこう」というトークセッションになればと思います。

【開催日時】
 4月8日(月) 開場18:30/開演19:00(20:40終了予定) その後、出演者との懇親会を予定しております。

■スケジュール:
18:30 開場
19:00 講演会一部
19:45 一部終了~休憩
19:55 二部開始
20:40 二部終了
20:45 懇親会
22:00 終了

【会場】
株式会社フロムワン 3階 Footbal★Plaza
URL: http://www.from1.com/map/index.html
住所: 東京都中央区八丁堀4-9-4
八丁堀駅A1出口徒歩1分

【参加費】
500円
※当日1ドリンク500円でご提供しております。

【20時45分からの懇親会参加費】
2,500円(ドリンク、フード付き)
※懇親会はトークイベントに参加された方のみ対象となります。

【申込期限】
2013年4月2日17時まで

【出演者】
大瀧雅良 (前清商監督)、元川悦子(サッカージャーナリスト)
【主催】 ぱる出版
【協力】 ㈱フロムワン


ぱる出版
「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」

1. 内容
名波浩、川口能活、小野伸二、平野孝、江尻篤彦、藤田俊哉、安永聡太郎、平川忠亮、小林大悟、水野晃樹、風間宏希、風間八宏、大瀧雅良が語る、清商サッカー部の教えをまとめた一冊。以下、もくじです。
 第1章 清商から世界の舞台へ 4人のワールドカップ戦士
 第2章 さまざまな舞台で 活躍する3人の個性派
第3章 熱い思いを胸に走り続ける才能豊かな4人の現役選手
第4章 清水のサッカーをもう一度全国へ 2人の指導者の決意
2. 体裁
 四・六判 256ページ 定価 1,575円 ISBN=9784827207729
3. 著者
元川悦子(モトカワエツコ)
1967年長野県生まれ。業界紙、夕刊紙記者を経て、1994年からフリーランスのサッカージャーナリストとして活躍する。現場での精緻な取材に定評があり、Jリーグから高校サッカー、ユース年代、日本代表、海外サッカーまで幅広く取材。世界を駆け回っている。著書に、『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン)、などがある。