5月24日、特定の民族や人種に対するヘイトスピーチの解消に向けた対策法が、衆院本会議で可決・成立したが、その前夜に放送された番組の内容に「ヘイトだ」との批判が集まり、ネット上でBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に審議を要請するための活動が行われている。

 その番組とは、TBS系列で放送された『直撃!コロシアム!! ズバッと!TV』だ。



 番組公式サイトによると、MCの辛坊治郎と山里亮太が「あるひとつのくくりを持つ人(50人程度)」を迎えて「直接対峙することで、様々な問題を抱える現代ニッポンの実態を直撃!」する「アカデミック・バラエティ」なのだという。

「伊勢志摩サミット直前2時間SP」と銘打った5月23日の放送回では、日本在住の中国人50人がスタジオに集結。前半は「日本人が知らない中国人の本音を直撃」(番組公式サイト)するという内容であった。

 番組の流れとしては、中国人との隣人トラブルや中国人観光客のマナー問題、中国国内の食品や環境問題などを取り上げた再現VTRを放送、それらに対し、スタジオの中国人が発言するという形式である。

 VTRの一例を紹介すると、中国人が集団でマンションの通路にてBBQをしていたり、駐輪場に停めてある他人の自転車を勝手に使ったり、スーパーで支払いをする前の商品を食べたり、といったような内容だ。

 一方、スタジオの中国人らは、それぞれ「公共のもの(スペース)は自分のものと考える」「発想の柔軟性と臨機応変さ」「小さいことを気にするとストレスがたまる」などと、同胞の非常識な行為を正当化するようなコメントを行った。


 これに対し、「(日本に来て)これまで見た中で、最も劣悪で容認しがたい番組」だとして抗議の声を上げたのは、日本在住14年という中国人女性だ。

 女性は番組終了直後に、TBSへの抗議とBPOに審議を要請するための集団行動を、中国版Twitter「微博」に中国語で呼びかけた。

 女性は、「番組に出演していた各方面の50人の中国人は、みんな在日歴が長く、見ている人に日本で生活をしている中国人の考えを代表しているような印象を与えている。しかし(中略)討論の内容は本当にタチの悪いものだった」「(VTRで紹介された非常識な行為について)スタジオの中国人は少数による非常識な行為だということを主張せず、さまざまな言い訳や弁明、さらには(これを批判する日本人に対して)攻撃的な言葉を使っていた」と、番組を批判。

 見る者に「中国人のこれらの非常識な行為は彼らの本質によるもので、多くの中国人は問題であるとも認識していない」といった印象を与えてしまうとの危惧をあらわにした。 

 また、「番組は19時からのゴールデンタイムに放送されていて、子どもも見ることができる。
(中略)日本にいる中国人の子どもたちはみんな傷つく。同級生や同級生の親がこの番組を見たら、私たちの子どもがいじめられる」といった懸念も示す。

 さらに、TBSの「ご意見・お問い合せ」ページとBPOの放送人権委員会申し立てページのリンクを掲載し、行動を呼びかけている。

 これらの書き込みは、5月26日時点で2万回以上リツイートされ、4,400件以上のコメントと3,000件以上の「いいね」が寄せられている。こうした反応は、日本在住の中国人のみならず、日本人、さらに中国大陸からのものも含まれている。

 一方、同番組に出演していたジャーナリスト・周来友氏の元にも、抗議の声が寄せられたという。


「番組を見た中国人から、Twitter経由で『売国奴』っていうメッセージが来ました。番組に出ていたほかの中国人も批判に晒されていて、困っています。収録ではみんないろいろなことを発言し、VTRについて『こんなの、ごく一部の人間だけだよ』とも主張した。しかし、オンエアーを見てみると、マナー違反を正当化しているような部分だけ使われていた。バラエティ番組なので、しょうがないのでしょうが。ただ、日本のバラエティを知らない中国人が見たら、腹が立つ内容だったかもしれない。
今後は、テレビ各局とも気をつけるべきだと思う」

 ちなみに辛坊氏にとって、全国放送ゴールデンでの初MCとなる同番組は、4月に鳴り物入りでスタートしたばかりだが、視聴率が低迷していることから、早期打ち切りもささやかれている。そんな中、起死回生を図るべく、ヘイト的な内容に走ってしまったようだ。いずれにせよ、他人を傷つける内容で視聴率を稼ごうとする魂胆のままでは、同番組は長くは続かないだろう。