先日、採用担当者として高校教員との意見交換会に参加しました。高校生の就職をより良い形にするための方法を探ることがテーマでした。

最初は「企業はどんな人材が欲しいのか?」「面接で何を見ているのか?」といった話題でしたが、いつしか「離職率」の問題に移っていました。


新卒者の離職率は「七五三」と呼ばれ、中学、高校、大学を卒業した後、3年以内に離職する割合が、それぞれ約7割・5割・3割にのぼっています。そして高卒離職者の5割の中には、悲惨な経験をして会社を辞めていく若者も少なくないのです。(文:河合浩司)


■「真面目な子ほど、ギリギリまで続けてしまう」


高卒で就職をしたある若者は、地元を離れて都心の中小企業に就職しました。しかし、その会社は経営者も上司も厳しく、会社に慣れることができなかったようです。


何度も辞めようと思いましたが、そのたびに「先生や親のおかげで自分は就職できた。

そう簡単に辞めてはいけない」と思い直し、必死で耐え忍んでいました。しかしある日、限界が来てしまい、ついに会社に連絡せずに姿を消してしまったそうです。


連絡を受けた学校や家族による大掛かりな捜索の結果、若者は無事に見つかりました。このように追い詰められた高卒生が失踪してしまったり、心を病んで実家に帰ってしまったりすることは、そう珍しいことでもないようです。


「真面目な子ほど、ギリギリまで続けてしまう傾向にある」


ある教員は、そう話してくれました。私も高卒採用をしている企業関係者から、似たような話を何度か聞いたことがあります。

入社後の2人に1人は3年以内に辞めてしまう背景には、このような問題が起きているのです。


要因のひとつは、高卒を受け入れる企業の労務管理がブラックであることも関係しているでしょう。中小零細企業の中には「労働法令など守れなくて当然」という経営者もおり、こういう会社がなくならない限り、疲弊して退職する高卒生は減りません。


■ミスマッチに気づいたら、他の会社を前向きに探そう


もうひとつの要因は、企業と高卒者とのマッチングのしくみがうまく回っていないために、入社後のミスマッチが起きやすくなっていることが考えられます。


高卒採用の場合、地域によって例外はありますが、面接の回数は原則として一度だけに限られています。また学校は「企業の選び方」を生徒に十分教えているところは少なく、就職活動を考える期間も十分に取られていません。


そもそも高卒時に自分の適性をよく理解して就職した生徒など、非常に限られています。安易な転職を推奨するわけではありませんが、3年以内にミスマッチに気づいたら、他の会社を前向きに探すための就職指導の必要を感じざるを得ません。


「転職を視野に入れた就職指導」の第一歩は、何よりも「合わない会社だったら自分の意思で転職してもいい」と伝えておくことです。学校側としては入社させて生徒がすぐに辞めると、その企業から次年度以降の求人が減ることを怖がります。


そのせいで「やめてはいけない」というメッセージをついつい発しがちです。この姿勢が真面目な生徒を苦しめる一因になっていると、教員も言っていました。

しかし人手不足の昨今ですから、卒業生の人生を優先することができるはずです。


■若さは武器!「学歴不問」の求人も少なくない


また、ちょっとした労働相談であれば、「ハローワーク」に駆け込めることも入社前から伝えておくべきでしょう。違法行為やハラスメントがあれば、その対応の相談にも乗ってくれるはずです。


他にも、今は様々な転職サービスがあることも伝えておくべきです。「学歴不問」の求人もありますし、転職エージェントがその人に合った企業とつないでくれます。年齢の若さはそれだけで一つの強みにもなるので、思いもよらない企業と出会わせてくれることもあります。


最後に、社会人の知り合いに相談すると、コネでよい転職先が見つかることも珍しくないことも教えてあげましょう。社会人からすればあまりに当り前なことですが、知らないだけで追い詰められてしまう人たちもいるのです。「転職を前提とした教育」の必要性を強く感じるこのごろです。


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