子どもたちのために活動するPTA。ところが、やはり人同士の集まりゆえ、人間関係に頭を抱える母親も少なくない。

委員の選出から日々の活動まで、いたる所で繰り広げられる母親同士のトラブルの実態を取材した。(取材・文:千葉こころ)


■生活苦を公言しても「大変なのはみんな一緒」



会社員として働く生島弘江さん(30代 仮名)は、小学校5年生の子を持つシングルマザー。今までPTAの委員をやったことはないが、新年度を控えて憂鬱になっているという。



「うちの小学校では、6年間のあいだに一度は委員をやらなければいけないという暗黙のルールがあるんです。なので、新年度はやらざるを得ないでしょう」


生島さんの小学校では、高学年になるほどPTAで責任ある立場を任されやすい。そのため、学年が上がるほど押し付け合いになるそうだ。



「上の子がいるお母さんはわかっているので、1、2年生のうちに率先して引き受けていました。だから、もうやらされることはないと余裕の様子でPTA委員選出の懇談会に参加されています」


一方、未だ委員経験のない生島さんのような母親はどんなに拒んでも集中砲火を浴び、いかなる理由も切り捨てられてしまう。



「正社員や、親の介護をしている人、シングルマザーだけでなく、PTAのために毎月休みをとったり、家を空けたりできない立場の母親でさえ、『まだやってないんだから』『大変なのはみんな一緒』などと半ば強制的に選出されます。懇談会を欠席すれば無条件で決定。出席しても首を縦に振るまで許してもらえません」


大勢の母親の前で、シングルマザーであることや生活の厳しさを公言しなければならない屈辱。それでも認められることはほとんどなく、「狙いをつけられたら終わり」と生島さんは言う。


ただ、クラスの構成や人数によっては、数人ながら、一度も委員をやらずに卒業するケースもあり得る。しかし、「逃げ切った」「ズルい」などとほかの母親たちから陰で文句を言われ、ひどい場合は中学校でPTAに推薦されるなどの嫌がらせを受けることもあるそうだ。



「仕事を休めば、当然収入は減ります。私ひとりの稼ぎで生活はギリギリ、中学校に向けてお金もかかるので、PTAどころではないのが本音です。でも、やるしかないですよね」


■欠席が多いと非難され、発言権も与えられず


では、実際にPTAを経験している母親はどうなのか。子どもが小学校3年生のときにPTAを務めた上田千代さん(30代 仮名)に話を聞いた。



「仕事をしているかたは多いので、"協力し合いながら"というのが前提です。そのため、参加できるときに参加して、できることをするという感じ。ただ、それで母親同士の関係が悪くなったことがあり、休みづらいというのは正直ありましたね」


時間の融通が利く働き方をしている母親や専業主婦など、参加率の高い母親は必然的にPTAへの関わりが増える。そのため、欠席の多い母親に対して不満を抱いたり、高圧的になったりすることもあるという。



「メンバーの中に、役職ある立場で休みが取りづらい、という方がいたんです。ベルマークの集計など、持ち帰ってできる仕事を率先して引き受けてくださったのですが、会合や行事への参加率は低かったので、毎回出席している一部の母親に非難されていました」


上田さんの小学校では、毎月1回の会合のほか、委員内容に即した活動を行う。

学校行事の手伝いやPTA主催イベントもあるという。その度に休みを取るのは難しい母親も多い。本来は持ち回りや助け合いで成立するはずだが、参加率で自然と序列ができ、休みがちな母親は輪に入りづらい環境が生まれていたそうだ。



「会合で発言権を得られなかったり、その日にやることを教えてもらえなかったり。軽いいじめですよね。そんな様子を目にすると、休むに休めないと感じるようになりました」


"休みが増えれば自分も同じ目に遭うかもしれない"その一心でなんとか仕事に都合をつけ、できる限り参加するようにしていたと上田さんは言う。



「子どものための集まりのはずが、母親同士の関係を維持するための活動になっていたように感じます」


PTAとしての活動以前に、人間関係で悩む母親も少なくないという。子どものための活動であるからこそ、それぞれが気持ちよく参加できる環境が望まれる。


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