長時間労働やセクハラ、パワハラなど、労働環境が社会問題となる昨今だが、お隣の中国でもブラック企業の話題は絶えることがない。先日も、鴻海(ホンハイ)精密工業の山東省工場で、インターンの大学生を劣悪な環境で働かせていたことが発覚したばかりだが(参照記事)、今度はノルマ未達成の社員に、とんでもない罰を与えていた会社が話題となっている。



 7月末、紙コップを手に持った複数の男女がトイレの便器の水をすくい、それを飲み干すという衝撃の動画が中国版Twitter「微博」にアップされた。

 動画内では男女が「今日はきっとまだマシだと思わないとな。明日はもっとひどいことされるかもしれないから」と、励まし合っている様子も確認できる。

 ネット上では「人肉捜索」が行われ、結果、四川省成都市でフォトスタジオを運営する企業で撮影されたものだと判明した。

 大手ポータルサイト「新浪」によると、この企業は、ノルマ未達成だった社員に、罰として便器の中の水を無理やり飲ませていたという。

 地元メディアの取材に対し、企業側は「(流出した動画は)社員たちにノルマを達成してほしくて、鼓舞する意味で、ネットで見つけた動画を社内のグループチャットにアップしたもの」と、実際に飲ませたわけではないと否定。
しかし、この苦しい弁明を信じる者はおらず、ますます批判の声が大きくなっている。

 社員に対し、吐き気を催すような、ひどいペナルティを科している中国のブラック企業は珍しくない。2015年3月には、江蘇省常州市の食品会社でも、従業員に便器の水を飲ませていたことが明るみになり、世間から大きな非難を浴びた。また、今年6月には陝西省漢中市の建設会社の従業員が、ノルマ未達成だったことから、罰としてミミズを生のまま食べさせられたという事件も発生している。
 
 こうした常軌を逸したペナルティについて、中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏は話す。

「中国の労務管理は、アメとムチの世界。
しかし、アメはコストがかかるが、ムチはタダで振るえる。そこで、ムチばかりがエスカレートするブラック企業が増えてきている」

 それにしても、便所の水を飲んだ社員たちは、その後無事だったのだろうか……。
(文=青山大樹)