ラスト1枠となる10番目に創価大の名前が読み上げられると、会場中から大きなどよめきが起こった。

お正月の風物詩、箱根駅伝東京箱根間往復大学駅伝競走)。
10月18日開催の予選会(東京都立川市)での最大のサプライズは、東京農業大、法政大といった常連校を差し置いて10位に滑り込み、初の本戦切符をつかんだ創価大だった。

常連校が幅を利かす大学駅伝界にあっては耳慣れない名前だが、どんなチームなのか?

1991年から箱根予選会に挑戦し始めた創価大は、2009年に本格強化に着手し、元東洋大コーチの植村和弘氏をヘッドコーチに招聘(しょうへい)している。

その縁から、昨年まで育成コーチとしてチームにアドバイスをしていた元東洋大監督の川嶋伸次氏(現旭化成陸上部コーチ、2000年シドニー五輪・マラソン代表)が語る。

「まずは僕らが東洋大でやったような生活面の改善や、走り込み練習などを導入。2年目からは、以前に野球部が使っていた寮に選手が入るようになりました。大学のある八王子市(東京都)は坂道が多く、平坦なロードコースが少ないという難しさもありましたが、箱根常連校と同様に夏合宿を行ない、他大学との合同合宿もやりました」

とはいえ、新興チームならではの苦労もあった。


「強豪校のように推薦(入学)枠がたくさんあるわけではありませんし、スカウトでは苦戦していました。選手たちも、箱根を目標にはしていても、(持ちタイム的に)現実味を持っていなかったと思います」(川嶋氏)


それが変わり始めたのが、10年、11年と、2年連続で2名の選手が関東学連選抜(当時)の一員として本戦を走ってからだ。彼らが中心となり、「今度はチームで本戦に行きたい」という気持ちが徐々にチーム内に広がっていったのだ。

また、強い大学から誘われながらも、「自分たちが歴史をつくる」と、創価大を“逆指名”して入部してくる有望選手も、1学年に2、3名程度現れるようになったという。

今回の予選会で全体6位となってタイムを稼いだ山口修平(3年)、また、1年生ながらチーム内4位、5位になった蟹澤淳平、大山憲明らの主力は、いずれも高校時代に全国大会で実績を残している選手だ。

「今年からは元旭化成陸上部の久保田満がヘッドコーチになったのですが、彼が旭化成流のスピード強化練習を取り入れるだけではなく、食事や体のケアなどのリカバリー面にも気を使うようになったのも大きいと思います。
9月末の記録会ではほとんどの選手が自己記録を出し、1万mの上位10人の平均記録も予選会出場校中12番目になっていたので、久保田も『もしかしたら』と手応えを感じていました」(川嶋氏)

予選会終了後、瀬上雄然監督はテレビのインタビューで「ウチには世界一の応援団がいますから」と、本戦に向けての意気込みを熱く語ったが、シード校も加わる本戦では厳しい戦いが待つ。現時点では最下位の有力候補だ。

「厳しいレースになるのは間違いない。でも、とりあえず一歩進んだのは大きい。このところ常連校の壁を崩すのが難しくなっていたなかで、新興チームの創価大が箱根の本戦を走ることは、ほかの新興校にとっても励みになる」(川嶋氏)

来年の本戦は、優勝争い、シード争いとともに、創価大の走りも注目ポイントになりそうだ。

(取材・文/折山淑美)

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