“神童”那須川天心もホームリングのひとつにしているキックボクシング団体『KNOCK OUT vol.5』が4日、後楽園ホールで開催された。

 KNOCK OUT初進出となった後楽園ホール大会だが、天心や不可思、小笠原瑛作といったレギュラー陣が出場しなかったものの、発売されたチケットは全席完売、1,500人(札止め)の大観衆を集めた。



 試合は、第1試合から大いに盛り上がり、第4試合では能登龍也とタネヨシホが軽量級の試合とは思えぬど迫力な試合を展開。結果は、ドローに終わってしまったが、誰もが続きを見たくなるような試合になった。観戦に訪れていた天心も「ベストバウト」と称賛。小野寺力プロデューサーも「軽量級がここまでの盛り上がりを見せるとは正直思っていなかった。近いうちにフライ級のトーナメントを開催したい」と石井一成など強い軽量級の選手を集めての最強決定戦を行いたいと明らかにした。

 続く第5試合、怪我からの再起戦となる宮元啓介は、KNOCK OUT初出場の野呂裕貴と対戦。
「復帰戦に負けたらKNOCK OUTにもう出られないという気持ちから緊張してしまった」という宮元は、2Rまでは押されていたが、3Rに一瞬の隙をついた綺麗な右ハイキックが野呂を捕らえて逆転KO勝利を飾った。内容には、「全く満足していない」と反省していたが、この勝利が12.10両国国技館大会の出場に繋がり、また、初出場となる新日本キックボクシングの江幡塁を迎え撃つことも発表された。天心、瑛作に敗れている宮元のリベンジロードに期待したい。

 この日、一番の盛り上がりを見せたのはセミファイナルの水落洋祐と怪物くんの異名を持つ鈴木博昭の一戦だ。「森井選手や勝次選手、不可思選手の試合に大きな刺激を受けた」という水落は、2R、先に左フックでダウンを奪うも、3R、右ハイキックからのヒザ蹴りの連打を浴びてしまい逆にダウン。右ハイがかなり効いたのかこのラウンドは足がフラフラになりながら何とか持ちこたえた。
4Rからそれまでのダメージを感じさせないラッシュを見せ、鈴木も笑顔で殴り返すという大激闘に客席からは「これぞKNOCK OUT」といった声が飛んだ。最終5Rも開始から怒涛のラッシュを見せた水落は右ストレートを炸裂させ鈴木がダウン。同時にセコンドからタオルが投入され激闘に終止符が打たれた。試合後、水落は「KNOCK OUTで勝てたことか嬉しい」と喜びを爆発。敗れた鈴木にも大きな拍手が送られた。

 メインではライト級王座決定トーナメント準決勝の残る1試合、森井洋介対町田光が行われた。
今回のトーナメントにキックボクサーとして進退をかけていた町田が、1Rから森井に圧力をかける闘いで追いつめていく。これに対して「いつもと違う」と察した森井は、2Rになると作戦を変更。町田がローキックを嫌がっているのを見逃さず、ローを中心に攻めていく。町田も何とか凌いでいたが、1Rの試合終盤に森井のヒジでカットした右まぶたからの出血が止まらず、ドクターチェックが入りTKOとなった。トーナメント決勝のカードは12.10両国で森井対勝次に決定。森井は「決勝に進出できて良かった。
今日の分、決勝で爆発させます」と初の両国に向けて力強く話した。敗れた町田は、「試合結果は悔しい」と涙を浮かべながらコメント。進退に関しては少し休んでから結論を出すことになりそうだ。小野寺プロデューサーは、「まだまだKNOCK OUTに出てもらいたい選手」と現役続行を希望するコメントを出している。

 今回はカードが弱いという前評判をよそに、KNOCK OUTの趣旨を理解した選手たちが好勝負を繰り広げたことで、とても熱気のある大会となった。今大会でKNOCK OUT本戦では初となる女子の試合が組まれたのは、来年以降のKNOCK OUTを占う意味でも大きな一歩だったといえるだろう。
KNOCK OUTは、登竜門的な『ROAD TO KNOCK OUT』を渋谷TSUTAYA O-EASTで今年2回開催している。男子では、今回の大会で大ブレイクしたタネヨシホが本戦出場の切符を、宮元啓介も本戦再出場の切符をそれぞれこの大会で掴んでいる。『ROAD TO KNOCK OUT』では、女子の試合が2大会とも組まれていたが、21歳の小林愛三(まなぞう)が両大会で抜擢されている。『ROAD TO KNOCK OUT』では、引き分けが続き悔し涙を流していた小林だが、9戦5勝4分けとデビューから負け知らず。学生時代は、バレーボールに励んでいた小林だが、卒業後ボクササイズを始めたことでキックに興味を持ち、先輩にふくらはぎを褒められたことがキッカケで選手になろうと決意したという。ビジュアルも、カッコ可愛い系で、男性ファンだけではなく、女性ファンを獲得出来る可能性を秘めている女子ファイターだ。


 初の本戦では、今年の5月に『ROAD TO』で対戦した“元祖”ビジュアルファイターの田嶋はる(22戦18勝3敗1分け)との決着戦が組まれた。後楽園は初という小林は、「以前、見にきたときは迷子になったんですよ」と笑っていたが、再戦に関しては「前回の試合では自分の甘さが出たので、そこを改善して肘で勝ちたい」と強い気持ちをもって試合に臨んでいた。その言葉通り、小林は1Rからこれまで以上にアグレッシブに攻め続けて、肘、パンチ、ローキックを効果的に田嶋に当てながら、田嶋の反撃にも臆することなく前に出続けた。そして、試合の主導権を最後まで渡さず、小林は判定で価値ある勝利を収めた。KNOCK OUT本戦では初の女子の試合に、観客は男子の試合と同じように一喜一憂していた。今後に関して小野寺プロデューサーは、「他にも女子のあのクラスは良い選手がたくさんいるので、来年は女子の試合も柱のひとつになるでしょう。もちろん愛三選手がその中心になります」と語り、来年以降のKNOCK OUT女子部門の継続と、小林を中心にマッチメイクされることも明らかにした。小林がKNOCK OUT女子部門の若きエースとして引っ張っていくことになりそうだ。

 試合後、小林は“ふくらはぎ女子”について「ふくらはぎにまだ自信がない女の子も、ふくらはぎに自信がある女の子も、一緒に鍛えてふくらはぎ女子を広めていきましょう!」と最高の笑顔でふくらはぎ女子の普及を呼びかけた。スイカをこよなく愛し、美味しいものを食べることが大好きな21歳の“ふくらはぎ女子”小林愛三が、ジョシカクの世界だけではなく、KNOCK OUTのリングにも大きな風を吹かせてくれることを期待したい。

 KNOCK OUTの次回大会は、『KING OF KNOCK OUT 2017』両国国技館大会で12月10日(日)に開催される。記事内の2試合の他に、不可思対金原正徳の好カードが発表されている。