実は結構いる!? 夫から「経済的暴力」を受ける隠れ妻の実態と...の画像はこちら >>

芸能人の離婚報道などにより、DV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラ(モラルハラスメント)という言葉はすっかり定着しています。しかし、DVの中でも経済的暴力については、日本では「夫が収入を得て妻は家庭に入る」や「妻は夫を立てるべき」という価値観が残っているからなのか、まだそれほど認知されていないかもしれません。

そこで、今回は、弁護士の筆者が経済的暴力とはなにかということと、いざ自分が経済的暴力を受けたときはどうしたらよいかについて解説したいと思います。



■「経済的暴力」とはどういうものか?

経済的暴力とは、妻(夫)の金銭的自由を奪い、相手を追い詰めることをいい、典型的な例としては、

(1)相手に生活費を渡さず、自分は自由に金銭を使う

(2)正当な理由なく相手の収入を持ち出す、または管理して相手に自由に使わせない

(3)自分の収入や借金等の金銭の流れを明らかにしないまま、相手に不自由な生活を強いる

(4)相手が働きに出ることを許さない、または仕事を辞めさせて相手に不自由な生活を強いる

(5)正当な理由なく、働かず相手の収入に依存する

などがあります。



■経済的暴力により「離婚」が認められる!?

相手による経済的暴力は離婚原因である「悪意の遺棄」または「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があるほか、慰謝料増額の要因にもなります。

夫婦は、法律上原則として互いに助け合って相手に自分と同じ水準の生活を送らせることが求められています(民法752条)から、相手の金銭的自由を奪って苦痛を与えてはなりません。

経済的暴力を行う相手の場合、精神的暴力や身体的暴力を伴うことがほとんどですので、これらと併せて離婚が認められる裁判例がほとんどですが、実際に前述した(1)から(5)に該当することを理由として離婚が認められているものもあります。



■経済的暴力への対処法

経済的暴力は、相手の収入に頼らざるを得ない人、つまり専業主婦や家庭の事情により親族に頼ることができない人に対して行われるのが大半です。

核家族化が進み、「夫が生活費をくれないけれども、子どもを抱えて働きながら満足な収入を得ることは難しい」などを理由として離婚に踏み切れず悩んでいる方も多いと思います。

自分は経済的暴力を受けているのではないか……?と思ったときは、まずは1人で悩まずに信頼できる第三者に相談することが大事です。

経済的暴力にかぎらず、DV事案では家庭が自分の世界の全てになってしまい、ひたすら我慢してしまう方が多いので、親族、ママ友、相談機関などに相談をしてみることがDVから抜け出すための第一歩になります。

無料の相談機関としては、各地域のウィメンズプラザ・男女共同参画センター、福祉事務所、日本司法支援センター(法テラス)などがあります。なお、相談機関では離婚後の生活費に関する相談も受け付けてもらえます。

いろいろな事情から離婚まですることは考えていないとしても、相手と話合いをする上でどのような金選的支援が受けられるかを知っているのと知らないのとでは大違いですので、もし経済的暴力を受けていると感じている方は、気軽に相談してみることをお勧めします。

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※ Monkey Business Images / Shutterstock

【著者略歴】

※ 木川 雅博・・・星野法律事務所(港区西新橋)パートナー弁護士。損害賠償・慰謝料請求、不動産の法律問題、子どもの事故、離婚・男女間のトラブル、墓地・お寺のトラブルその他、法人・個人を問わず様々な事件を扱っています。