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星野源は“癒し系”どころか、下ネタでも必死な超努力家

2016年12月19日 09時01分 (2016年12月19日 18時12分 更新)

エッセイ集『働く男』(文春文庫)。こちらも売れている ※画像をクリックすると、Amazonのページにジャンプします。

 今年ブレイクした芸能人といえば、なんといっても星野源でしょう。大ヒット中のドラマ「逃げ恥」はもちろん、歌にCMに大活躍。テレビだけでなく、ネットニュースでも名前を見ない日はないのでは?

 その人気ぶりはすさまじく、一昨年発売のエッセイ集『蘇る変態』がアマゾンで上位にランキングされるほど。ここまでくると一過性のブームでは片づけられない何かがありそうな気がしてきます。

 というわけで『蘇る変態』を読んでみると、色々と考えさせられました。パッと見、草食系とか自然体とか思われがちな星野源ですが、それとは真逆でギラついた向上心を隠さない面がうかがえたからです。

◆下ネタも全力投球! あまりにも努力家な星野源

 タイトルに“変態”とある通り、下ネタはお手のもの。おっぱい、AV女優、パソコンのエロゲームを饒舌に語ったかと思えば、本業の音楽や演技のことも熱く語るギャップ。さらに、くも膜下出血の闘病生活から見えた人生観などを詳細に語っています。

 このようにトピックはバラバラなのに、本書のトーンは一貫している。その理由は、エロい妄想をするときも、生死の瀬戸際に立たされた経験を思い返すのも、常に全力投球だからではないでしょうか。

 たとえば人の趣味嗜好について語ったこの文章を見てください。

<その日、『パソコンパラダイス』で自慰行為をし、泣いた。実際本当に泣いたかどうかは憶えていないが、涙目になり、心の中で泣いたのだけは確かだ。もう人が好きだというものを馬鹿にすることは決してするまいと心に誓った。>

(マンガとアニメ p23)

 この真摯な態度のまま、職業としてのAV女優を肯定する熱さへとつながっていくのです。

<セックスが好きでそれを職業にしたとして、それのどこが悪い。俺は音楽が好きで、芝居が好きで、文章が好きで、それを仕事にしている。それとセックスが好きで仕事にしていることになんの違いがあるのか。>

(AV 女優 p121)

 こうした意見に同意できない人もいるかと思います。でも、その中に誰も侵すことのできない領域があることだけは分かるのです。それは気の毒になるほどの生真面目さ。

 どうでもいいくだらないことをダベっていたはずなのに、気付けば彼の必死さだけが印象に残ってしまう。本来は笑えるはずの話が、笑えなくなってしまうのです。

◆「負けるな。頑張れ俺。」

 トイレで大をするときに、“どれだけ出ればいいのですか”と「万里の河」(チャゲ&飛鳥)の替え歌を熱唱するのもいいだろうと語る一文から読み取れるのは、くだらなさそのものではなく、そんな戯言を考え出すいちいちにも労を惜しまない職人気質なのですね。

 もちろんそれは一般的には好ましい性質なのでしょう。ただし、過度に懸命な姿勢がはっきりと読者に伝わってしまう危うさにも触れておきたいと思います。

<負けるな。頑張れ俺。限界を超えろ。必ずいい詞が書ける。>

(頑張れ p108)

 昨日の自分より、今日の自分。今日の自分より、明日の自分。こうした成長幻想の行き着くところは燃え尽き症候群でしかないので、これは少し心配な傾向だと言えそうです。

 ともあれ、星野源みたいな“全身努力家”が売れっ子になったエンタメはまだまだ捨てたもんじゃないと思う反面、もっとチャランポランな部分もないと見てる方が疲れちゃうかも。『蘇る変態』はそんな一冊でした。余計なお世話ですかね。

<TEXT/比嘉静六

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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