パキスタン系イングランド人の父を持つゼイン・マリクは、その容姿と文化・宗教的背景ゆえにこれまで何度も苦い思いを味わってきた。「ワン・ダイレクション」時代、バンド脱退時、そして今もそれは変わらず、今後も変わらない可能性があるのかもしれない。
しかし過激派によるテロ事件で大勢の罪なき人々が殺害されている今、ゼインは「イスラム教徒への警戒は仕方ないと考えている」と冷静に語った。

このほどゼイン・マリクが『Evening Standard』の取材に応じ、初めて渡米した17歳の頃を回顧。ある“衝撃的な出来事”をこのように明かした。

「飛行機に乗る前に、空港で3度もセキュリティチェックを受けたんだ。最初はランダムに検査対象を選んだと言われたのに、それから『君の名前を確認してチェック対象にした』と告げられて。」

その後、無事にアメリカに到着するも空港を出る前に3時間も様々な質問を受けたとのこと。2度目の渡米でも同じ経験をしたというが、最近では英国でテロが頻発していることもあり、各国の懸命な対応を理解しているという。


「英国でも色々起きているからね。腹を立てても良いことなどない。」

ちなみにゼインはパキスタン系のイスラム教徒ゆえに、これまでにも様々な差別を受けてきた。その例をいくつかご紹介したい。

■「ボーイバンド・ジハード」
2012年のこと、アメリカのブロガーはゼインを「boyband jihad」と表現。「若いファンをイスラム教徒にしようとしている」「ワン・ダイレクションのメンバーに選ばれたのもパキスタン系のイスラム教徒だから」「英国ではイスラム系が売れる」などという悪質な内容を書かれた。

■Twitterを一時停止
差別的な書き込みがゼインのTwitterに多数書き込まれ、ゼインはアカウントを一時停止せざるを得ない状況になった。
またその中には「ワン・ダイレクション脱退はイスラム国の兵士になるため」「ゼインはテロリスト」という大変悪質なものもあったという。

■テロリストにソックリ?
2015年にはコメディアンがゼインについて「ボストンマラソン爆弾テロ事件を起こしたテロ犯に似ている」という趣旨の発言をし、世間から「あまりにも酷い」と猛反発された。

■イスラム教徒からの批判
ゼインがイスラム教関連の楽曲を作らぬことを「よろしくない」と批判するイスラム教徒も少なくはないという。

それでも本人は宗教について「語りたくない」「誰も怒らせたくない」と述べ、騒動やトラブルを回避する道を選んできた。ちなみにほとんどのイスラム教徒は非常に善良と言われ、テロ行為に走る過激派の蛮行を決して認めてはいない。イスラム教徒全体に憎しみをむき出しにする“ヘイトクライム”が問題になっている欧米だが、ヘイトクライムがもたらすのは憎悪の拡大だけであろう。

(TechinsightJapan編集部 ケイ小原)